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第1部 本

生物・進化

糸を出すすごい虫たち(大崎茂芳)

『糸を出すすごい虫たち (ちくまプリマー新書)』2019/6/6
大崎 茂芳 (著)


(感想)
 ミノムシやクモなど、身近にいる糸を出す虫たちのことを教えてくれる本です。
 昆虫はさほど苦手ではありませんが、基本的に「家に勝手に入ってくる」虫は嫌いです。玄関先などでクモを見かけると、うんざりしてしまいます(汗)が……クモの勤勉さにだけは、ほんとに頭が下がります。こまめに掃除して巣を撤去しているのに、次の朝にはまた……(怒)。どんだけ真面目なんだよ、と内心感心しつつも容赦なく撤去するのでした。
 この本では、クモや蚕、ミノムシなど糸を出す虫のことを色々知ることが出来ます。
 クモの巣は次のような構造をしているのだとか。
「代表的な円網では、巣の骨格となる丈夫な縦糸と、らせん状でよく伸びる粘着性の横糸から構成されている。(中略)横糸はよく伸びて、くっついた昆虫の運動エネルギーを吸収してしまう。横糸は昆虫がかなり暴れると縦糸との接触点で切れる場合があるが、縦糸は簡単には切れない仕組みになっている。」
 他の虫は巣に絡めとられるのに、クモ自身は巣にくっつかないのは、体の材質的に「くっつかない」のかと思っていましたが(笑)、実は単純に「粘着性のある横糸を避けて移動している」からなのだとか。へー、そうだったんだ。じゃ、間抜けなクモは自分の巣にからまることがあるのかな?
 驚いたのが、クモの糸はバイオリンの絃として使えるということ!
「クモの糸の弦をセットしたバイオリンでの音声スペクトルは、倍音が非常に多くて、柔らかく深みのある音色と評価され、世界の名器ストラスヴァリウスとも遜色ないことも分かってきた。」
 うーん、クモの糸の弦かあ、あまり弾きたくはないような……。
 蚕の繭の糸は、実際に三味線や琴に使われてきたそうです。
「繭から取り出したセリシン付きの未精錬の生糸は三味線、琴、琵琶の弦として使用されてきた。」
 虫の出す糸には、いろんな使い道があるんですね。
 さらに驚いたことに、ダニの中には糸で空を飛ぶものがいるようです。
「ダニの移動方法として、脚を使って歩くケースやバルーニングという空中飛行のケースがある。(中略)空中飛行によるダニのバルーニング距離は数百メートルにもなり、3キロも遠く飛んだ例も確認されている。このとき、浮力を得るために必ず絹糸を出している。」
 ダニが糸で空を飛ぶなんて……なんかイヤですね(汗)。
 ダニが糸を出すのも驚愕の事実でしたが、なんと、その他にもシャクトリムシやミツバチ、ノミも糸を出すそうです。さらに水中で糸を出す虫すら存在するようで、小川に棲むトビケラの幼虫はシルクの網で餌を捕まえるのだとか……驚きです。
 クモの糸には、強度が強いとか、柔軟性に優れているとか、熱に強いとか、優れた特性がたくさんあるそうです。ただし蚕とは違って、商業的な生産を行うには問題が多かったようですが。
 でも今は、「遺伝子組み換え技術」など新技術の応用が進んでいるそうで、なんとヤギのミルクからクモの糸を量産するとか、さらには、植物にクモの糸を作らせる試みにも成功しているのだとか。
「タバコという植物を使って、クモの糸の遺伝子組み換えが行われた。その結果、420~3600塩基対の合成遺伝子によって表現された組み換え絹糸タンパク質の収率が2%で得られた。」
 もちろん日本でも研究が進んでいるそうです。
「日本では2007年に信州大学においてクモの糸のカイコへの遺伝子組み換えによってクモの糸の成分が10%程度含まれる絹糸を作ったことが報告された。」
 なんだか怖いような気もしますが、生物が作る糸の研究を進めることで、私たちの生活がより便利に、安全になると嬉しいですね。生き物に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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