ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
しかけ絵本(海外の作家)
※日本語の本(翻訳版)もあります
その他の海外の作家
Raven: A Pop-up Book(Pelham)
『洋書:Raven: A Pop-up Book(英語)』2016/8/9
Edgar Allan Poe (著), Christopher Wormell (イラスト), David Pelham (寄稿)
(感想)
エドガー・アラン・ポーの物語詩『大鴉(おおがらす、The Raven)』を題材にした大人向けの大型しかけ絵本です。
『大鴉』は、愛する美少女レノアを失って心乱れる主人公の青年の元に、人間の言葉を話す大鴉が夜更けに謎めいた訪問をして、青年はしだいに狂気に陥っていく、という物語詩で、その音楽的、超自然的な雰囲気で名高いそうです。
ポーさんの推理小説などは、子どもの頃から読んでいましたが、実を言うと『大鴉』のことは全く知りませんでした(汗)。この洋書のしかけ絵本も、表紙がすごく黒くて……ひょっとしてホラーな絵本? くわばら、くわばら……と長い間、手を出さずにいたのです(しかけ絵本は高価なので、そんなに気軽には買えないのです……)。
買ってみて、はじめてこれが不思議な物語詩をテーマにしたものだと知ったのですが……とにかく色んな意味で驚きの絵本でした。
まず、完全に「大人向け」の絵本であること。……いや、あの、18禁とか、そういう意味では絶対になくてですね(汗)、内容が、夜更けの書斎に謎の訪問をする大ガラスと向かい合っているうちに、しだいに気持ちが乱れていく青年の暗い心情を描いているだけでなく、絵本全体も、黒っぽくてゴージャスな「ゴシック・ロマンス」系の色彩&イラストで構成されているんです。
さらに、この絵本の仕掛けを作っているのは、名手のDavid Pelhamさんなので、仕掛け技法もすごく凝っています。あまり大きな仕掛けではありませんが、扉を開く動く仕掛け、窓を押し開ける仕掛け、そして一番素敵だったのが、指をゆっくり開くと少女の肖像を描いたメダルが出てくる仕掛け……とにかく素晴らしい☆
しかもエドガー・アラン・ポーの物語詩『大鴉』の全文(すべて英語)を読むことも出来るのです(絵本のページの一部をめくると、その場面の詩が書いてあります)。なお、以下の内容紹介では、詩の和訳の一部だけを抜粋して表示してあります(実際には、もっと長文の詩です)。
この物語詩のキーワードは「Nevermore(二度とない)」。主人公の青年は、大鴉の影の下に魂を閉じこめられ、「Nevermore」と叫ぶ事しかできなかった……という物悲しい終わり方をする物語詩のしかけ絵本なので、贈り物にはあまり向かないかもしれませんが(汗)、文学が好きな方、仕掛け技法に興味のある方は、ぜひ読んで(眺めて)みて下さい。お勧めです☆
*
・1~2ページ目:ページを開くと、夜更けの書斎の机で、読書をする青年が立体的に飛び出してきます。青年の視線は、紫のカーテンの向こうを見ています。右下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の最初の部分が書いてあります。
……いったい何者なのだろう
我が部屋のドアを叩くのは……
……書物のページをくくっては
わたしは悲しみを忘れようと努めた
レノアを失った悲しみを
彼女は永遠に失われたのだ……
……誰かが部屋の扉をたたき 中へ入ろうとしている
そうだ それ以上ではない……
・3~4ページ目:ページを開くと、屋敷の扉が開いて、明かりを手にした青年が出てきます(動く仕掛け)。右下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の次の部分が書いてあります。
……あまりにかすかで聞き取れぬ音に
わたしは扉を開け放った
扉の外は闇で 他にはなにも見えなかった……
……ただひとつ言葉が発せられた
レノアとささやく言葉が
わたしが発したその言葉は 闇の中をこだまする
これだけで 後は何も起こらなかった……
・5~6ページ目:ページを開くと、青年が書斎の窓を押し開きます。窓の下に大ガラスが飛んできて留まります(動く仕掛け)。右下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の次の部分が書いてあります。
……たしかにこれは だれかが窓格子を叩く音だ……
……わたしが格子を押し開けるや
バタバタと羽をひらめかせて
大きな烏が飛び込んできた 往昔の聖なる大鴉
とまって座って それだけだった……
・7~8ページ目:ページを開くと、彫像の頭の上にとまった大カラスが、翼を広げます。右下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の次の部分が書いてあります。
……この漆黒の鳥を見て わたしの悲しみは和らいだ
冥界の浜辺に書かれているという
お前の名はなんと言うのか
大鴉は応えた ネバーモア……
……こんな鳥が自分の部屋の
扉の上にいるのは素敵だ……
……そこでわたしはつぶやいたのだ
以前にも同じようなことがあった
それは夜明けとともに去ってしまった
希望が去っていったように
すると大鴉はいったのだ ネバーモア……
・9~10ページ目:ページを開くと、安楽椅子の紫のクッションに深く座って思索をめぐらせる青年が、立体的に飛び出してきます。大ガラスの影が書斎の床に落ちています。左下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の次の部分が書いてあります。
……わたしはいった 疑いもなく これがこの鳥の
ただひとつの言葉
それは不運な飼い主から教わった言葉……
……わたしは大鴉の目の前に 安楽椅子を引いていっては
深々とクッションにうずまりながら
あれこれと想像を回らした……
……大鴉の目の炎が わたしの心の中にまで燃え広がる
そのランプの光に照らされた
椅子の背には彼女が
もう身をゆだねることはないのだ……
・11~12ページ目:ページを開くと、レノアの肖像が刻まれたメダルを握った青年の手が、ゆっくりと開きます(動く仕掛け)。左下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の次の部分が書いてあります。
……すると空気が密度を濃くし
どこからともなく匂いがただよい
この匂いはレノアへの思いを
和らげるための妙薬の匂いか
大鴉が答えた ネバーモア……
……この呪われた砂漠のような地に
幽霊たちの住処のような家に
果たしてギレアドの香木が
存在するかどうか言ってくれ
大鴉は答えた ネバーモア……
……この悲しみに打ち沈んだ魂にいってくれ
はるかなエデンの園のうちで
天使がレノアと呼んだ娘を
果たして見ることがあろうかと
大鴉は答えた ネバーモア……
・13~14ページ目:ページを開くと、夜の嵐の大波に翻弄される城が立ち上がります。右下をめくると、ポーの詩『大鴉(The Raven)』の最後の部分が書いてあります。
……去れ 嵐の中へ または暗黒の冥界の海辺へ
わたしのこころを静かなままにして
その場から消えていなくなれ
大鴉は答えた ネバーモア……
……すると大鴉は飛び回ることなく
じっと動かずにうずくまったまま
わたしはその影の中から 抜け出そうとするが
もはや抜け出すこともままならないのだ……
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