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第1部 本

生物・進化

海と陸をつなぐ進化論(須藤斎)

『海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化』2018/12/19
須藤 斎 (著)


(感想)
 約3390万年前、南極の環境が激変したことを契機に、生存に不利な時期を「休眠」戦略で生き延びた微生物が大繁栄しました。やがてクジラやアシカ、ペンギンなど、海洋生物の体構造や種数の進化を促したその生物は、陸上で暮らす馬や植物とも共進化を遂げていたのかもしれません……大陸と海洋の構造変化からみた進化のドラマを描き出す本です。
 表紙には、円や三角形の美しいガラス細工のようなものが描かれていますが、実はこれこそが著者の須藤さんが毎日観察している微化石(イラストではなく写真です)なのだそうです。0.1ミリにも満たないこれらの微化石が、悠久の時を耐えて現在まで残っている理由は、彼らの身体が「本当にガラスで出来ている」からなのだとか! 彼らの名前は「珪藻」。最大の特徴は、その細胞が水を含んだガラスでできた2枚の殻に包まれていることだそうです。殻がとても丈夫だから、堆積物中に化石として残ることが出来るんですね。
 珪藻類は食物連鎖の最初に位置する生物で、最古の化石は1億8千万年前のものとされていて、長い時間の中で地球環境の変動に対応しながら、一部は絶滅し、あるときには大繁栄してきたそうです。
 食物連鎖の最初に位置する、すなわち地球上で最も大量に存在している植物プランクトンは、地球上の全植物がつくっている酸素のおよそ半分を担っているのだとか! 酸素というと陸上の植物が作っているイメージが強かったのですが、実は海中で、その半分もの量が作られていたんですね! 驚きました。
 食物連鎖の最初に位置していて、太古から現在に至るまで生き延びてきている珪藻などの植物プランクトンは、他の生物たちの進化に影響を及ぼしていないはずがないと思います。須藤さんは次のように言っています。
「その小さな化石を日々、何年にもわたっていくつもいくつも観察し続けたことが、ある一つの「発見」につながりました。それは、ヒマラヤ山脈の形成など「陸を変える現象」が気候の変化を促し、その気候変動がこんどは「海の構造変化」を呼び込み、やがて私が毎日目にしてきた微生物の「持ち主」の変化を通じて、他の生物たちの大進化をもたらした、という事実です。
 そのなかには、地質学的にはきわめて短い期間である、わずか数百万年のあいだに劇的にその姿を変貌させたクジラ類の進化も含まれています。目に見えぬほど小さな生物が、地球上で最大級のサイズを誇る生物の進化に影響を与えていたのです。」
 この本では、珪藻の研究者の須藤さんが、「海洋環境の大きな変化はまず、珪藻の種類と数を増加させ、やがてクジラ類の種類も増やしただけでなく、彼らに特徴的な能力を獲得させるきっかけとなっていたのかもしれません。」というご自身の「クジラ類と珪藻類の共進化仮説」について分かりやすく解説してくれます。まだ定説にはなっていないようですが、個人的には、なかなか説得力があるように感じました。地球変動が食物連鎖の最底辺に位置する植物プランクトンに影響を与え、さらにその上位に位置する生物たちを変化(進化)させる……ありうることだと思いませんか?
「共進化」の観点から壮大な地球史を考えてみるという、新しい視点を与えてくれる本でした。あなたはどう思うでしょうか? 読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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