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第1部 本
IT
超ロボット化社会(新山龍馬)
『超ロボット化社会-ロボットだらけの未来を賢く生きる』2019/4/27
新山 龍馬 (著)
(感想)
ロボット研究者の新山さんが、これまでのロボットの歴史を振り返りながら、これからのロボット技術の進化、私達の生活がどのように変化するかについて教えてくれる本です。
『超ロボット化社会-ロボットだらけの未来を賢く生きる』というタイトルと、面白い形のロボットが大勢働いている表紙イラストから、「数十年先の未来の」ロボット社会への予測を語ってくれる本なのかと思ってしまいましたが、残念ながら「現実の」ロボットの話がほとんどで、数十年先の未来のロボットの予測は、ほとんどなかったように感じました。それだけロボットが現実化しているのかもしれませんが、ロボット研究者が語るSFのような未来の話を読みたい人にとっては、期待はずれかもしれません。
工作が好きな私にとって、ロボットはすでに身近な存在でもあるので、特に新奇な話はなかったのですが、いろいろ参考になる話もありました。例えば、「第一章 ロボットに乗る」のドローンについての次の記述。
「ドローンのプロペラは高速回転するペーパーナイフみたいなものです。その回転速度は、風を送るだけの扇風機の比ではありません。スズメバチには怖がって近づかないような人が、平気でドローンに近づきます。危険性を知らないからです。(中略)2018年、国土交通省が定めるルールに、落下と接触によるけがを防ぐ条件が追加されました。イベントでドローンを飛ばす時には、その真下を立ち入り禁止にするとともに、プロペラガードの装備が必須になりました。新しい技術が出ると、新しい遊びが出現します。Youtubeを探せば、ドローンのプロペラでニンジンやソーセージ、トマトを切り刻む画像が見つかります。そろそろ、ゾンビ映画に、ドローンが武器として登場する頃合いです。」
……うわっ(汗)……実は最近、山の中の駐車場でドローンを飛ばしている人を見たことがあり、興味津々で空飛ぶドローンを眺めていたら、操作している人の方も面白く思ったのか、私の数メートル先の頭上に静止するように飛ばしてきたことがあったのです……でも、まじまじと下から見ている場合じゃなかった! ドローンのプロペラって、そんなに危険なものだったんですか! これからは逃げることにしようっと(汗、汗)。みなさんも、気をつけてください。
また「第三章 ロボットと遊ぶ」のペットロボットの話(ソニーの「アイボ」のようなロボット)。
「ペットロボットは、家電としては可動部がやたら多い特殊な製品です。つまり故障しやすい部品が多いということです。歳をとらないロボットですが、新陳代謝もありませんから、だんだん消耗して物質的な死を迎える運命にあります。寿命を考えると、アイボはその人格(犬格)を宿す部品をもつべきだったかもしれません。クラウドにデータがあるといっても、目に見えるものではないからです。例えばそれはメモリースティックよりも美しく象徴的な、魂の核、あるいはハートです。体が老化したら、新しい身体に核を移す。そうすると身体は若返るけれど、仕草や記憶からは、前のままのアイボが感じられるのです。」
……確かに。ペットロボットの「アイボ」は「永遠にそばにいてくれる」ペットなのかと思っていたのですが、「サポート終了」の発表があったときの「お葬式」状態には、とても考えさせられました。考えてみれば、パソコン内蔵ロボットなのだから、パソコンや産業機械と同じように、機械消耗、部品在庫保管期間終了などの「現実的な寿命(限界)」があって当然なのでしょう。それでも「生物的な死亡」を迎える生体の犬と違って、どうしても「治療(修理)可能なのに人間の都合で死亡させられる」残念感は拭いようがありません。そういう意味で、「人格(犬格)を宿す」象徴的な部品があって、次世代犬として身体が若返るという、この提案は、素晴らしいなと感じました。魔法少女のスティックやホログラムカードみたいな魔術的イメージのある美しいものがいいと思います(笑)。ただし、このような方法を取る場合、「長期に渡って発売し続ける」体力が、製造・販売会社には求められるわけですが……。
さて、ロボットは今後、車や飛行物体、家事や介護代行、娯楽の提供、産業やサービス用の機械など、いろんな場面で私たちの生活に入りこんでくることになるでしょう。数十年後の未来には、AI搭載の万能型ロボットが活躍するかもしれませんが、現状(数年後の未来)では、いろいろな場面に合わせて単能型の安価なロボットを利用するという方法が、最も現実的なのだと思います。この本の「解説」には、次のような記述がありました。
「サービス分野ではロボットに全てを任せるよりも、ロボットが8割、残り2割程度を人がやるといったような役割分担の考え方も必要だ。」
……確かにそうですね。特殊なケースにも対応できるようにロボットを設計すると、無駄に高価なものになってしまいます。最初に自動応答につながるコールセンターのように、ごく普通のケースだけをロボットに対応させ、それ以上の場合は、人間を呼ぶことが出来るような使い方(役割分担)をするのが現実的なのでしょう。
すでに現実になりつつあるロボットについて、総合的に紹介してくれる本でした。ロボットにはあまり詳しくないけれど、ロボットとともに生きることになる今後の社会について知りたいという方は、ぜひ読んでみてください。
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