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第1部 本
IT
ニュースで読み解くネット社会の歩き方(塚越健司)
『ニュースで読み解くネット社会の歩き方』2019/3/15
塚越 健司 (著)
(感想)
未来への希望と不安が混在するネット社会。私たちは何を道しるべにしてネットと向き合えばいいのか……情報社会学の研究者の塚越さんが解説してくれる本です。
スマホを開くと、便利そうなアプリがどんどん紹介されてきて、だんだん疲れてくる今日この頃、みなさん、いかがお過ごしですか……ずっと昔から慣れ親しんでいるのでITには弱くないはずの私ですが、PCやスマホから流れてくる多くの情報、速すぎる技術革新、勝手に始まるソフト更新に、なんだか思考停止に陥りそうになってしまいます(汗)。
この本の情報によると、「フェイスブックの月間アクティブ・ユーザー数は22億」だそうで、「世界中のどの国家の国民数よりも多い」のだそうです。フェイスブックに、LINE、インスタグラム、Twitter、その他のSNSを活用している総ユーザー数は、すでに天文学的な数字なのでしょう。
インターネットやSNSは便利な一方で、私たちの時間を奪い、ストレスや危険を増やしてもいます。この本には次のような記述がありました。
「スマホやタブレットは勉強効率をアップさせる一方、それは同時に集中力を奪いやすく、またゲームやSNSの欲望を喚起し、勉強時間を奪ってしまうことにもなりかねない。」
「スマホ時代になってから(若者が危険に遭遇する)危険の度合いが、さらに色濃くなってきているのも事実である。」
「過激だったり法や道徳の面で微妙な動画や企画が、ユーチューブを中心に繰りひろげられている。そもそもユーチューブをはじめとするネットの動画配信は、テレビのように放送法の拘束を受けない。それゆえに自由な活動が可能になる一方、その倫理基準は配信会社である民間企業に委ねられるのみである。」
若者がよく利用しているLINEは、いじめなどの人間関係のストレスを生み出してもいます。それに対して、LINEは次のような対策を行っているのだとか。
「若者がもっともストレスを抱えやすいもののひとつが、LINEとの向き合い方だ。そんななか、2017年にはLINEが無料で小中学校に出張して授業を行っていることが話題となった。(中略)LINEの教師派遣型授業は、実際に起きた事例のケーススタディをとおして学ぶものが多く、生徒同士で話し合ってもらうことに焦点が当てられている。「リスクの見積もり編」という教材は、数人や大人数のグループ会話などの実例を見せたうえで、そのあとの展開について予想させる、といった具体的なものだという。」
LINEは、LINEに書いた言葉が人を傷つけることがあることを、子どもたちに、ケーススタディ形式で教えているそうです。私たちはすでに電話や手紙よりも、LINEやメールでコミュニケーションを取ることの方が増えているような気がするので、小中学校で、このような授業を受けることは、とても重要なことではないかと感じました。今後もぜひ続けて欲しいと思います。
またネットで情報を見ている時に、脇に表示される広告などは、気が付かないうちに内容がしだいに変わっていき、「自分好みのジャンル」のものが出やすくなっていきますが、これは、その人がどんな検索ワードを入れているか、どんなサイトのどんな情報を見ていることが多いか、などの情報を常に収集しているから出来ることなのです。個人的には、この機能には、便利さと同時に、薄気味悪さをも感じています。「広告視聴率」の調査方法として、アイトラッキング調査というものがあるそうですが、こういう調査は無断でやって欲しくないなと感じてしまいました。
「(この)調査は、カメラなどをとおして私たちの目線がどのように動いたかを測定するもの。調査用に取り付けたカメラで、ユーザーがパソコンやスマホの画面上のどの部分を見ているかを判別し、掲載された広告を実際に見たかどうかを判断するのだ。」
またGoogleやYahooなどが親切にも「好みの情報」を選んで教えてくれるために、気がつかないうちに、自分の視野が狭められているのではないかとも懸念してしまいます。そういう意味で、ニュースなどはネットで見るだけでなく、「自分用にカスタマイズされていない」普通のTVの番組でも見るように心がけています。
この本は、ネットと私たちの生活の関わりについて、最新の情報を取り込みつつ、中立的な立場に立って、とても幅広く総合的に考察してくれていると感じました。
技術革新で、動画であっても簡単に偽ニュースを作ることが出来るようになり、巧妙化する一方の「フェイクニュース問題」、「顔認証」と購入履歴の結びつきによる「プライバシー問題」、さらには「セキュリティ問題」、「著作権問題」、「ヘイトスピーチ」、「デマ・拡散・炎上問題」、「忘れられる権利」、「アカウントの相続問題」……ネットにあるさまざまな問題を、概観することが出来ました。
ネットは私たちにとって、もはや欠かすことの出来ないツールになっています。この本は、これからのネットとの関わり方を考える上で、とても参考になると思いますので、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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