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第1部 本

歴史

7つの人類化石の物語(パイン)

『7つの人類化石の物語ー古人類界のスターが生まれるまで』2019/5/18
リディア・パイン (著), 藤原多伽夫 (翻訳)


(感想)
 国家の英雄になった化石、カルチャーアイコンになった化石、悪名高い捏造化石……有名な7つの人類化石に秘められたストーリーを解説してくれる本です。内容(7つの人類化石)は、次の通りです。
第1章 ラ・シャペルの老人――先史時代の長老
第2章 ピルトダウン人――化石なき名前
第3章 タウング・チャイルド――国民のヒーロー誕生
第4章 北京原人――闇に包まれた化石
第5章 ルーシー――偶像の誕生
第6章 フロー――古人類界のホビット
第7章 セディバ――オープンアクセスの化石
   *
「ラ・シャペルの老人」は、1908年にフランスで発見されたネアンデルタール人の骨格化石。この化石が発見されたことで、現生人類のホモ・サピエンスとは明らかに異なるネアンデルターレンスという新しい種の分類ができました。またヨーロッパじゅうの博物館が収蔵品の再検証を始め、それまでホモ・サピエンスの異常な個体とみなされてきた他の標本の中にも、ネアンデルタール人に分類されるものが出てきたそうです。
「ピルトダウン人」は、20世紀初頭にイギリスで発見され、いったん「初期人類の化石」と認定された後、1950年代前半の科学的鑑定で捏造と判明した有名な偽化石。かなり新しい人間の頭骨と、オラウータンの骨、チンパンジーの歯を組み合わせ、かつ実際よりはるかに古く見せかける細工がなされていたそうです。専門家でも騙される……科学的鑑定の重要性を再確認させられましたが、騙した人は、そこまでして何を得たのでしょうか?(偽化石を作った人と推定される人はいますが、立証できる明確な証拠はないようです。)
「北京原人」は、20世紀前半に北京郊外の周口店遺跡で出土した古人類の化石群ですが、第二次世界大戦の混乱のなかで、その大量の化石が忽然と姿を消したことで有名なもの(日本軍が侵攻してくる前に国外へ輸送しようとしているうち、混乱のなかで失われてしまったそうです)。2011年にスウェーデンの博物館で、そのうちの犬歯数本だけが発見されたそうですが、本来ならば40体の化石があったはずなのだとか(写真や精巧な模型は残っています)。今後、沈没船などから、ぜひ無傷の状態で見つかって欲しいと願わずにいられません。
 そして「ルーシー」。1974年にエチオピアで発見されたアウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)の全身骨格化石で、「人類の起源」として超有名な化石です。「全身骨格化石」というので、当然、頭からつま先まで全部そろっているのかと勘違いしていましたが、実は全体の四割しか見つかっていないそうです。いや、「四割も」発見されたというべきなのかもしれません。ばらばらでも、全身の骨格の一部が発見されているので、全身の復元には十分な形態の情報が、比較的容易に得られたのだとか。
 その他、「タウング・チャイルド(論争の末に人類の祖先として認められた)」、「フロー(身長90センチ、体重15から30キロという小柄な成人女性)」、「セディバ(化石の情報を広く公開して研究を促すという新しい手法で研究されている)」などの有名な人類化石についても、その発見や研究の経緯、重要性、有名になった理由などを知ることが出来ました。また全体を通して、20世紀初めから現在までの古人類学の変遷も概観出来ました。
 人類の化石は、その周辺の遺物も含めた文化的な理解が必要だと思うので、これからはビデオ録画や科学的分析というIT技術も、どんどん活用して、研究を進めて欲しいと思います。またDNA鑑定などで、その姿を再構築できたなら、研究をさらに深めることが出来るでしょうし、捏造にも対応できるのではないでしょうか。
 それぞれが、とても興味深い「7つの人類化石の物語」でした。考古学が好きな方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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