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第1部 本
IT
データ・ドリブン・エコノミー(森川博之)
『データ・ドリブン・エコノミー デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する』2019/4/4
森川 博之 (著)
(感想)
IoT、ビッグデータ、AIによる真のデジタル革命がビジネスの常識を塗り替える……あらゆるモノがデータ化される時代に何が起こるのか、企業と個人はどう対処すればよいのかについて、IoTの第一人者の森川さんが事例をまじえながら教えてくれる本です。
流行りの「IoT」「ビッグデータ」「AI」という言葉を聞くと、デジタル化社会への移行が急速に進んで、いつの間にか取り残されてしまうかも……と不安になってしまいがちですが、森川さんは、真のデジタル社会はすぐには訪れないと思っているようです。
「デジタル化を進めるには、組織や働き方などの変革が必要になる」ので、「デジタルの浸透には長い時間がかかり」、「真の意味でデジタル社会が到来するのは、いまから約20年後の2040年以降になるのではないかと考えられる。」のだとか。
そして、これからのデジタル化の主役となるのは、「リアルデータ」だそうです。
「これからはリアルデータが主役になる。センサや無線通信技術を使って、いままで取れなかった現場のデータが取れるようになったためである。リアルな世界、私たちが実際に生活したり働いたりするフィジカル(物理的)な世界から上がってくるデータだ。」
そして次のような事例が紹介されていました。(もちろん、この他にも多数の事例が紹介されています。)
「アメリカンフットボールの事例である。試合で選手が身にまとうウェアにタグを付けることで、選手の位置、動き、運動量といったすべてのプレーをデジタル化している。(中略)ここにデジタルが入ったことによって、新たな価値が生まれ始めている。監督やコーチは、選手の動きがデジタルデータで把握できるようになったことで、戦略の構築に役立てられる。選手の運動量も分かるので、選手それぞれの怪我のリスクが把握でき、怪我をしないためのトレーニングを取り入れるタイミングを客観的かつ効率的に指示することもできる。」
監督やコーチの側だけでなく、データを提供する選手の側にもメリットがあるのが素晴らしいと感じました。
「人の経験と勘に頼って行われてきた企業のアナログプロセスをデジタル化し、それによって得られたデジタルデータを活用して生産性を高め、新たな付加価値を創出する。これがデジタル変革の本質である。人口減少がますます進んでいく日本で経済成長を続けていくには、生産性の向上が絶対に欠かせない。デジタル化は、日本の成長戦略の起点といっても過言ではない。」
本書が予想しているように、今後の社会がデジタル化していくのは間違いないでしょう。
ただし、デジタル化は生産性向上などのメリットを与えてくれる一方、プライバシーやセキュリティの問題も含んでいるということも、本書の中では指摘されていました。
また自動運転などでは、制度設計にも積極的に関与すべきだそうです。
データ・ドリブン・エコノミーは、魔法の言葉ではなく、私たち自身が担っていかなければならないのですね。
「データ・ドリブン・エコノミーとは、データによって新しい価値を生み出すことだ。ツールとして使うAIやIoTだけでは、経済や産業は変わらない。IoTを使えば何かが起こるという誤解はいまでもある。AIを使えば何かが起こると勘違いしている人も多い。だが、そうではない。IoTはデータを集めるためのツールで、AIはデータを分析するためのツールだ。(中略)重要なのはデータである。手法に惑わされることなく、アナログプロセスをデジタルデータに変えられるかを、曇りのない目で見つめることだ。それができれば、新しいビジネスの芽に気づくことは、それほど難しくないのではないだろうか。」
すでにIT情勢に詳しい人にとっては、目新しい記述はほとんどないように感じましたが(汗)、今後のデジタル化社会を考えるための基礎的な情報が総合的に書いてあるので、総復習の意味でも参考になると思います。
IT情勢に詳しくないビジネスマンの方にとっては、今後のビジネスを考える上で、もちろん、とても参考になると思います。ぜひ読んでみてください。
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