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第1部 本
歴史
ここまで変わった日本史教科書(高橋秀樹)
『ここまで変わった日本史教科書』2016/8/25
高橋 秀樹 (著), 三谷 芳幸 (著), 村瀬 信一 (著)
(感想)
日本史教科書の、ここ数十年の記述の変化と、その根拠となる研究の進展を教科書の専門家の方たちが解説してくれる本です。
正直に言って、学生時代は「歴史」は不変なのだとばかり思っていました。なにしろ「すでに終わっている」事実を書いているはずなので、そうとう昔のことならともかく、「印刷技術」が確立した時代以降の歴史は変わるはずがないだろうと……。でも、そうではなかったんですね。「中学生・高校生が学ぶ日本史は不変のものではない」のだそうです。「相次ぐ発掘調査や新史料の発見で、人物や事件、時代のイメージは見直され、教科書の内容は書き改められていく」のだとか……。考えてみれば、ごく最近の「事実」だって、見る観点が違うと、まったく違って見えるものだし、それへの「評価」も千差万別ですよね……。
この本では、大人がかつて学校で教えられてきた日本史の内容が、すでに変えられていることを教えてくれます。
例えば、私は、「いい国つくろう鎌倉幕府(1192年 鎌倉幕府が開かれる)」と教えられましたが、現在は、「いい国作ろう源頼朝(1192年 源頼朝が征夷大将軍となる)」と教えられているそうです。ん? どこに違いが? と思うかもしれませんが、「鎌倉幕府」は「段階的に成立したので、(いつ成立したとは)断定できない」のだそうです。実は「鎌倉幕府」という用語自体、明治時代に作られた研究用語なのだとか……そうだったんですか。しかも有名な神護寺の「頼朝像(肖像画)」も、実は「頼朝」と断定できないそうで、現在では「伝 源頼朝像」となっているそうです。
また最近は、「元寇」と言わなくなっているのだとか。「元寇」ではなく、「蒙古襲来」「モンゴル襲来」のように言うそうです。
さらに「前九年の役・後三年の役」は「前九年戦争・後三年戦争」、「西南の役」は「西南戦争」のように表現されるようになってきているようです。
……より正確で、分かりやすい表現に変わってきているんですね。
個人的には、「元寇」とか「××の役」とか、歴史教科書でしか使わないような表現が変わっていく(消えていく)のは、良いことだと感じました。「日本語」の単語は多すぎますし、歴史用語でも、普段の生活でも使える一般的な単語に置き換えられるなら、その方が理解しやすいし暗記も楽になると思います。
また、教科書の内容がこんなに変わっているなら、大学受験などの問題も、きちんとそれを反映したものに変わって欲しいとも思いました。
それにしても……「歴史」は暗記科目で、いったん覚えれば一生それでOKだと考えていたのに、実は「科学」と同じように、どんどん変わっていくものだったんですね……(溜息)。小学校では次のような動きがあるそうです。
「現在の小学校における歴史教育は、いわゆる暗記物ではない。児童みずからが調べ、地図・年表・カードなど様々な形でまとめて発表し意見を出し合ったりする、調べ学習と表現活動を重視している。」
……こういう教育法の方が、いろんな意味で役に立ちそうに感じました。
この本によると、平城京内の長屋王邸宅跡から発見された木簡で、「公地公民制」への見直しを迫られることになったなど、遺跡の発掘で新しい歴史的事実が得られることもありましたし、従来は14万2000人あまりとされてきた関東大震災の犠牲者数が、見直しにより死者・行方不明者合計10万5000人あまりに変更されたこともあったようです。新たな事実で間違いが発見されたなら、「歴史の教科書」も、どんどん訂正していくべきなのでしょう。
「歴史というのは、アクションとリアクションの短絡的な連鎖で動いていくものではないからである。歴史は混沌としたもので、行きつ戻りつ、時には逸れつつ、流れてゆく。」
……学校で歴史を学んでいるお子さんをお持ちの方は、彼らの勉強を見てあげるときに、自分の記憶ではなく、彼らの「教科書」を読んで教えてあげるようにしましょう。記憶自体は間違っていなくても、「歴史」の方が見直されて変わっている可能性があります。
「歴史」や「歴史ドラマ」が好きな方は、ぜひ読んでみてください。
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