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第1部 本

生物・進化

恐竜探偵 足跡を追う(マーティン)

『恐竜探偵 足跡を追う 糞、嘔吐物、巣穴、卵の化石から』2017/8/10
アンソニー・J. マーティン (著)、Anthony J. Martin (原著)、野中 香方子 (翻訳)


(感想)
 生痕学者のマーティンさんが、糞、嘔吐物、巣穴、卵の化石から、恐竜の足跡を追う「恐竜探偵物語」です。
 この本の原題を直訳すると、『骨のない恐竜たち』という隠喩的なものになるそうですが、研究者のなかには、「骨がなくてもそこに恐竜の気配を見つけて、一億年前に地上を支配した生き物の生態を探り当てる人々」がいて、それが生痕学者だそうです。
 生痕学とは、「生痕化石(足跡、這い跡、巣穴、糞といった行動の痕跡が残された化石)など、「骨ではない化石」を研究する学問分野で、なるほど、まさに古代の事件現場を探る「恐竜探偵」そのもの。日本語のタイトルの方が、本書の内容をダイレクトに表現しているようです。
 著者のマーティンさんは言います。
「恐竜の足跡こそが、『本物の』化石記録だとわたしは主張したい。それに比べれば、恐竜の骨は、魅力的ではあるが、あまりにも『死んで』いるのだ」
 ……なるほど、そうかもしれないな、と思わされました(汗……単純)。博物館に行くと、恐竜の骨の大きさに圧倒され、骨ばかりに注目して、足跡や糞石がそばに展示してあっても、つい見過ごしてしまいがちでしたが、「彼らがどんなふうに生きていたのか」その生態を知るためには、骨だけでなく、むしろ「生痕化石」の方をじっくり見るべきだったのでしょう。
 でも糞石の実物、博物館で見たことがありますが、本当にただのごつごつと丸まった石みたいな感じで、これが草むらに転がっていても絶対に糞の化石だなんて思わないよなーと確信できるようなものでした(汗)。糞はそれを排出した生き物の食生活を雄弁に語ってくれるものですが、恐竜の化石とともに(死んだときに体内にあったものとして)出てこない限り、どの生物のものか分からないような気がしますが……生痕学者は、巣穴とかサイズとか中身とかで「推理(綿密に考証)」するようです。
 また、南極大陸を除くすべての大陸で見つかっている「恐竜の足跡」は、二足歩行か四足歩行か、指の数や向きなどで、どんな恐竜だったかを教えてくれるだけでなく、さらに俯瞰して見ると、群れで移動していたのかどうか、歩く速さや健康状態などまで分かってくるのだそうです。
「生痕化石」は、古代の状況をリアルに想像させてくれる素敵なものだったのですね! この本を読むまでは、「糞石」にあまりいいイメージはなかったのですが、「恐竜のいた時代」を雄弁に語ってくれる貴重な証拠品だということがよく分かりました。
 また「噛み跡のある骨」もまた、その傷跡が、どの恐竜に噛まれたのか「犯人」を教えてくれたり、犯人の生活ぶり(食生活など)を教えてくれたりするものだそうです。
 さて、恐竜については、新しい知見が続々発見され、爬虫類よりも鳥類に近かったとか、巣穴を作って子育てをするものもあったとか、以前のイメージとは異なる実態が次々と明らかになってきています。この本は、著者自身が足跡などの「生痕化石」を調べたときの状況(ドキュメンタリー)や、それから何が分かるか、さらに恐竜に関する新発見や基礎知識など、さまざまな情報を分かりやすく教えてもくれます。面白くて勉強にもなる本でした。ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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