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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために(鎌田浩毅)

『地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために (ブルーバックス)』2017/2/15
鎌田 浩毅 (著)


(感想)
 地球の構造から巨大地震・巨大噴火の可能性まで、日本人にとって必須の教養「地学」の基礎知識や災害予測などを分かりやすく教えてくれる本です。
 地学の発展の歴史や、地球の歴史、プレートテクトニクスやプルーム・テクトニクスなどの理論が次々に出てきて、地学好きにはたまらない話題が満載☆
 なかでも面白いと思ったのが、「第6章 もうひとつの革命──対流していたマントル」。
 約40億年前から起きていたプレート・テクトニクスによって引き起こされた最初のコールドプルーム。それがマントルと核の境界に達した直後から、ホットプルームが発生。その結果、マントルの大循環が起こり、ひいては40億年の長期間にわたってプレート・テクトニクスを存続させてきたそうです。
 そして最初に磁場が誕生したのが、いまから27億年ほど前。この磁場により地球磁気圏が出来て、生物が増殖できるようになったそうです。太陽からの宇宙線は、細胞のDNAを破壊してしまうのですが、磁気バリアが出来たおかげで、地上に到達する有害な素粒子が減ったからなのだとか。
 こうして生命と地球の「共進化」が始まりました。27億年前からシアノバクテリアが活発に増殖→光合成→酸素の増大→オゾン層→地球環境の変化……。
「地球上の生命は、海やオゾンや磁場など何重もの貴重なバリアによって守られてきました。こうしたバリアは、いずれも地球深部の物理現象によって誕生したものですが、生物とも互いに影響し合いながら形成されてきました。よって、生物の生存環境を理解するには、同時に進行する地球システムも一緒に見なければなりません。大切なのは、地球を丸ごと把握する視点です。生命と地球は互いに「共進化」しているからです。」
 すごく納得のいく説明だと感じました。そして地球に比べると、はるかにちっぽけな存在の私たち生命体も、悠久の時を超えて少しずつ地球を変えてきたんだなーと思うと、なんだか不思議な気がします。
 そして恐ろしいと思ったのが、「第8章 日本列島の地学──西日本大震災は必ず来る」と「第9章 巨大噴火のリスク──脅威は地震だけではない」。
 実は、「3・11」(東日本大震災)は、東日本が乗っている北米プレートの上の地盤を大きく変えてしまったそうです。
「実際、地震後に日本列島はなんと五.三メートルも海側に移動したのです。さらに、太平洋岸では地盤が最大一.二メートルも沈降したことが観測されました。これによって東北地方から関東地方の太平洋側が、東西に少し広がり、また、一部の地域が沈降したことになります。結果として、日本の陸地面積は0.9平方キロメートルほど拡大した、と計算されています。東日本大震災はそれほど大きな影響を日本列島に与えたのです。」
 えええ……そんなことが!
 そして凄く怖いことに、近い将来、東日本大震災を超えるかもしれない大震災(西日本大震災)が必ず起こるそうです!
「西日本の太平洋岸に沿って大きな震源域が見つかっているのですが、これは東西方向で三つの区間に分かれています。それぞれ、「東海地震」「東南海地震」「南海地震」と呼ばれる大地震に対応し、首都圏から九州までの広域に被害を与えると予想されています。」
 もしかしたら、これらが連動して、「震源域の全長は七五0キロメートルに達し、これまでの想定を超えるマグニチュード9レベルの超巨大地震となる可能性があります。」なのだとか!
 そして江戸時代の記録などの分析から、「1946年のリバウンド隆起量一.一五メートルから次に南海地震が起きるのは二0三五年頃と予測されます。」なのだそうです。
 この「二0三五年頃」という数字は、他の分析でも、ほぼ同じ時期を予測したものがいくつかあるようで、かなり信頼できる数値のようなのです。あと十五年ほどで、西日本の広域に大地震が来る……だとしたら、現在、「東京」近郊に本社、「大阪」近郊にバックアップ拠点を設置しているなどの組織は、早急にその体制も見直す必要があるのかもしれません。
 でも、どこにバックアップ拠点を移すべきか? については、簡単には決められないようです。なぜなら、「第9章 巨大噴火のリスク──脅威は地震だけではない」では、巨大噴火の可能性が指摘されているからです。日本の火山は、北海道・東北・関東と九州に数多くあることを考えると……これらの地域も安全とは言えないようなのです。
「日本列島では最近一二万年の間に、タンボラ火山や鬼界カルデラの噴火に匹敵するような大量のマグマが出た巨大噴火が、約七〇〇〇年に一回の頻度で起きました。最後に起きた巨大噴火は七三〇〇年前ですので、単純計算すると次の巨大噴火はいつ起きても不思議はないことになります。」
 うーん……日本全国どこも危ないってことか……この本の終り近くには、次の文章がありました。
「繰り返しますが、巨大噴火は頻度の低い現象ではあるものの、日本でもいつか必ず起きます。一〇〇年に一度の巨大地震、七〇〇〇年に一度の巨大噴火といわれても、日常生活では想像もできませんが、そうした時間と規模で動く日本列島の地盤に、われわれは住んでいるのです。」
 私たち日本人は、プレートの動きに翻弄される危険地帯に住んでいるんだということを忘れずに、常に防災に気を配りながら生活したいと思います。
 地学の知識を学ぶ(再確認する)ことができるだけでなく、災害の予測も知ることが出来る本でした。とても参考になるので、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 鎌田さんの他の本、『やりなおし高校地学』に関する記事もごらんください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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