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第1部 本
生物・進化
外来種は本当に悪者か?(ピアス)
『外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD』2016/7/14
フレッド・ピアス (著), 藤井留美 (翻訳)
(感想)
これまで敵視されることが多かった外来種のイメージを根底から覆す科学ノンフィクションです。
よそ者、嫌われ者の生き物たちは、実は失われた生態系を元気にしていることもある……ヨーロッパ、南北アメリカ大陸、アフリカ、オーストラリアの事例を中心に、世界の様々な事例を文献調査、現地取材した上で、ピアスさんはそう言っています。
生態系を破壊すると言われてきた外来種ですが、実際には、環境になじめず死滅するケースが多いそうです。定着したものも、受粉や種子の伝播を手助けするなどの有用な働きをして、イタドリやホテイアオイなど、人間が破壊した生態系を再生した例すら多いのです。もっともホテイアオイなどの場合は、あまりにも繁殖力が強いので、生態系を再生する以上に厄介者扱いされることも多いのですが(汗)、ヴィクトリア湖などを浄化してきたことも確かなようです。
驚きだったのは、「外来種は有害」とされてきた事実には、あまり根拠のないことも多かったことで、例えば、「イギリスの政府機関で外来種問題に取り組んでいる非在来種事務局のウェブサイトを見ると(2013年現在)、「過去400年の絶滅動物の40パーセントは侵入種が関わっていた」ことを事実として大々的に記している。(中略)私はその根拠をしらべてみることにした。」ところ、実は根拠は希薄だったことが判明したのです。
そして「長い時間軸でとらえると在来種などいない」とか、「手つかずの自然と言われてきた深い密林にも、数千年前から人間の手が入っていた」ことを、数々の証拠とともに明らかにしていきます。「自然はたえず流動しており、不変の生態系などほとんど存在しない」、「変遷と偶発性とダイナミズムこそが、ほんとうの自然の特徴」なのです。
この本は「外来種とは何か」ということまで、深く考え直させてくれる本でした。そもそも「在来種」と言われるものも、生命誕生とともに「その場所」にずっといたはずもないのですから……。そして何故か人間はめったに「外来種」扱いされませんが(汗)、たとえば「ハワイ諸島に人間の影がちらつきはじめたのは、1500年前ごろからと考えられる。ソシエテ諸島をカヌーで出発したポリネシア人が、ハワイの浜辺に上陸したのだ。」なら、ハワイ諸島の自然環境に、最大の打撃を与えてきた外来種は、もしかしたら人間なのかもしれません(汗)(ピアスさんはここまで過激なことを言ってはいませんが……汗、汗)。
最後に、この本の終りの文章を紹介させていただきます。
「自然はぜったいに後戻りしない。前進するのみ。たえず更新される自然に、外来種はいちはやく乗りこみ、定着する。彼らの侵入は私たちにとって不都合なこともあるが、自然はそうやって再野生化を進行させている。それがニュー・ワイルドということなのだ。」
「外来種」や「手つかずの自然」への考え方を改めさせられた本でした。自然や生物に興味のある方は、一度、読んでみてください。
なお、私が読んだのは単行本版ですが、以下の商品リンクでは、より新しくて安価な文庫本版を紹介しています。
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