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第1部 本

描画参考資料

オオカミと野生のイヌ(近藤雄生)

『オオカミと野生のイヌ』2018/7/31
近藤雄生 (著), 澤井聖一 (著), 菊水健史 (監修)


(感想)
 オオカミと野生のイヌの、フルカラー美麗写真集です。解説もかなり充実しています。
 かつては、自然の恐ろしさを象徴する生きものとして、迫害されてきたオオカミや野生のイヌたちですが、最新の研究では、人間を含めた生物と自然との共生において、彼らが大きな役割を果たしていることが、明らかになってきているそうです。
 この本は、自然と共に生きるオオカミの生態から知られざる一面まで、美しい写真とともに紹介してくれます。主な内容は次の通りです。
WILD DOGSの肖像
1 ハイイロオオカミ
2 ホッキョクオオカミ
3 オオカミの仲間たち
4 南米の野生イヌ
5 アカギツネの仲間たち
6 ハイイロギツネの仲間たち

 人間を除くすべての哺乳類の中で、かつて最も広い地域に生息していたのはオオカミなのだそうです。彼らはあらゆる環境において、その土地に適した食性や能力、肉体を獲得して生きてきたそうで、現在でも北極などの寒帯から、なんと砂漠に至るまで広く生息しているのだとか。オオカミって、北の方の森林にいるような気がしていましたが、砂漠で生活しているものいるんですね。砂漠のオオカミは、アラビアオオカミという名前で、全オオカミの中で最も小さいのだとか。
 そして世界各地のオオカミは、ほとんどがハイイロオオカミの亜種だそうです。アフリカ・エチオピアの高地だけに暮らすエチオピアオオカミと、南米・ブラジル周辺のみに見られるタテガミオオカミ以外のオオカミは、みんなハイイロオオカミなのだとか! そうだったんですか……。
 この本では、大自然の中で逞しく生き抜いているオオカミのいろんな姿を堪能できます。オオカミって、とても美しい生き物だったんだなーとあらためて気づかされました。
 また野生の犬たち(キツネも含む)もたくさん紹介されています。
 なんとオオカミに一番近いイヌは柴犬なのだとか! 柴犬は日本ではとても人気があり、飼い犬全体の8割を占めるほどなのだそうですが……オオカミに一番近かったんですね! それでも柴犬は、すでに絶滅してしまった(と言われている)ニホンオオカミの子孫ではないようで、ニホンオオカミとの遺伝的なつながりは否定されているそうです。日本犬は、イヌとして日本列島に渡ってきたと考える方が妥当なのだとか。ちなみに秋田犬も、オオカミに近いDNAを持っているそうです。なお、ニホンオオカミが絶滅してしまったのは、18世紀に狂犬病が猛威をふるったときに、ニホンオオカミにも伝染してしまったため、一気に駆除されてしまったようです。それまでは恐れられるだけでなく、崇められる存在でもあったようなのですが……。
 さて、この本では、その他にも、群れで賢い狩りを行って、なんと象やライオンなどまで果敢に餌にしてしまうリカオンなど、いろいろなオオカミや野犬の生態を知ることも出来ます。
 神秘的な感じがするほど美しい白いタヌキの写真には驚かされました。こんな神々しいタヌキ、見たことない! タヌキは最も原始的な野生イヌなのだそうです。……でも、この綺麗な白いタヌキを、タヌキ代表みたいな感じで掲載するのは、どうなんでしょう? 記事の方には、白いのは変種で普通は茶色だと書いてはありますが、図鑑として利用する場合は、普通の茶色いタヌキの写真を大きく掲載すべきではないかと思ってしまいました。白いタヌキの写真の隣には、「アライグマに似ている」として茶色いタヌキ(?)の写真も掲載されてはいるようなのですが、この写真の方も、もしかしてタヌキではなく本当にアライグマなのでは? と疑わしい感じがするのです。この本はフルカラー写真が本当にとても見事で、解説もかなり詳しいのですが、タヌキの項目を見る限りは、「図鑑」として利用することが出来るかどうかは疑わしいなあ……と感じてしまいました。他の項目にも、同じようなことが起こっているのかも……。
 ということで残念ながら「図鑑」として使えるかどうかは不明ですが、とにかく写真が美しい上に、オオカミや野犬たちの自然の中での生態がよく分かる(様々なポーズをしている)ので、眺めるだけでもとても楽しめると思います。
 犬好きの方は、ぜひ一度眺めてみてください☆

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