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第1部 本
ユーモア
定年入門(高橋秀実)
『定年入門』2018/3/14
高橋秀実 (著)
(感想)
定年とは無縁なノンフィクション作家の高橋さんが、定年後の人生を歩んでいる人々に取材して「定年のナゾ」に迫っていく本です。
タイトルが『定年入門』なので、定年後の生活に不安を覚えている人のためのノウハウ集なのかもしれませんが……内容がとても面白かったので、あえて「生活」ではなく、「ユーモア」ジャンルで紹介させていただきました。
「定年」というと、背中がちょっと曲がりかけの、くたびれた灰色背広の白髪交じりおじさんをイメージしてしまっていたのですが(汗)、この本を読んでだいぶイメージが変わりました。彼らの話は、「健康不安」や「老後の生活不安」的な「しめった」ものが多いのかと思いきや……意外にも「いかに時間をつぶすか」に苦労している方が多かったからです(笑)。考えてみれば、「定年入門」したばかりの定年新入生は、みんなだいたい60代。最近の60代はまだまだ「若い」といってもいいぐらいですからね(社会全体を見ても、70代以上の比率がすごく高くなっている感じだから)。
しかも高橋さんのインタビューに答えてくれている方々は、いい人ばかりのようで、話もすごく率直。聞き方がうまいせいなのか、「そこまで教えてくれるの?」とびっくりするほどの、いわゆる「ぶっちゃけた」リアルな生活話がどんどん出てきます。それでも、ほとんど全員がきちんと会社勤めをしてきた真面目な方々ばかりのせいか、トホホ話でも羽目を外しすぎることもなく、パワーを持てあましている感じの「暇つぶし」への工夫のさまざまが、面白くて笑えるだけでなく、参考にすらなってしまうのでした。
例えば、定年後にスポーツジムに通ったという男性(68)は、「何をするにも体が大事ですから、とりあえずスポーツジムに通いました。でも半年も持たなかった。毎日変化はないし、義務的で面白くもなんともない。それでジムをやめて(電車の)定期を買ったんです」と言います。同じ運動をするなら、駅の階段をのぼればよいと気がついたそうですが、「定期は使わないと損するので毎日出かけるようになる。定期がないと出不精になっちゃいますからね」
……なるほど。「ジムをやめて定期を買う」って、なかなかいい発想かも、と感心してしまいました(笑)。
また、定年後は「引っ越せばいいんです」というご夫婦の話。夫が定年を迎えると、妻が家の中のことやゴミだしなど地域のルールを、何でもすべて夫に教えなければならなくて面倒だという問題の解決法は、「引っ越せばいい」のだそうです。
「(前略)要するに、家のことに関しては私ばっかり知っていて、彼は知らない。(中略)知識のバランスが悪いわけで、だったら引っ越しすればいいと思ったんです。引っ越しして新しい場所でスタートすれば、お互いゼロですから、一緒にゼロからスタートできるじゃないですか」
……なるほど。これもすごく賢い方法だなーと感心してしまいました。
この本は、実際に定年を迎えた方々のリアルな生活話が満載なので、中高年以上の年齢の方にとっては、面白くてためになる情報が満載です。
また若い人にとっても、参考になるのではないかと思います。というのも最近は近所づきあいが減っているので、若者が家族以外の高齢者の人と話す機会も減っているのではないかと思うからです。この本の「高齢者になりたて」の人々が語ってくれる率直な生活話・人生観は、若い人にとっても「これからの自分の人生」を考える上で、参考になるのではないでしょうか。
『定年入門 イキイキしなくちゃダメですか』……何歳になっても、自分らしく楽しく生きればいいんだなーと、なんだかホッとさせられる本でした。面白いので、読んでみてください☆
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高橋さんの他の本『「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー』に関する記事もごらんください。
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