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第1部 本
地質・地理・気象・地球環境
日本列島の下では何が起きているのか(中島淳一)
『日本列島の下では何が起きているのか 列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで』2018/10/17
中島 淳一 (著)
(感想)
日本列島の下で起こっている現象を、ひとつずつ解説してくれる本です。内容(目次)は次の通りです。
プロローグ 沈み込み帯に生まれて――変動し続ける日本列島
第1章 プレートテクトニクス入門――地球を理解するための第一歩
第2章 地球内部を視る方法――地球の大構造とプレートの運動
第3章 日本列島ができるまで
第4章 日本列島の下には何があるか?
第5章 プレートの沈み込みと水
第6章 プレート収束境界で何が起こっているか?
第7章 沈み込むプレート内で何が起こっているか?
第8章 火山の下で何が起こっているか?
第9章 内陸地殻で何が起こっているか?
第10章 関東地方の地下で何が起こっているか?
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最初は、地学の基礎知識。プレートとは何かとか、地球の構造について概説してもらえます。次いで、日本列島の生い立ちの紹介があり、「第4章 日本列島の下には何があるか?」から、いよいよ「日本列島の下」に関する話に。日本列島周辺のプレート配置や、沈み込む太平洋プレートとフィリピン海プレートの歴史について学べます。
日本列島周辺のプレートというと、「ユーラシアプレート」「北米プレート」「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」の4つだと思っていましたが、これはちょっと古い知識なのだとか(汗)。GNSS(GPS)で得られた地殻変動データなどから、現在では、上記4つの他に、「オホーツクプレート」「アムールプレート」が追加され、日本列島は西日本が主に「アムールプレート」、東日本が主に「オホーツクプレート」に乗っているようです。
実は、大昔の日本列島あたり(まだ出来ていない)の下には、現在ではすでになくなっている「イザナギプレート」というものがあったそうです。このイザナギプレートがユーラシア大陸の下に沈み込んでいくときに、その上の堆積物が海溝周辺で変形・破壊され、はぎ取られながら大陸に付加されていったのですが、これが現在の日本列島(とくに西南日本)の主要な部分を占めているのだとか。
イザナギプレートは、過去に存在していたものの現在は存在していないのですが、なぜそんなことが分かるのかというと、「地磁気異常の縞模様」を読むことで、過去のプレートの動きを復元できるからだそうです。本書内では、次のように説明されていました。
「地磁気異常の縞模様は、その時々の海洋底の拡大方向と直交するように形成されます。したがって、地磁気異常の縞模様の向きから当時の海洋底の拡大方向を、縞模様の間隔から拡大速度を知ることができます。また、海洋底の拡大は海嶺を挟んでほぼ対称に進行し、すべての海洋底は海嶺を軸として両側に対をなすようにつくられたと考えられます。つまり、海洋底の対称性と拡大方向・拡大速度から、過去のプレートの動きを復元できるのです。」
そして「第5章 プレートの沈み込みと水」からは、プレート内の動きやその理由についての最新の研究の紹介や考察が語られていきます。
海洋プレートが沈み込む過程で水が巻き込まれ、水のある場所が動きやすくなるなど、水は火山活動や地震に大きな影響を及ぼしているようです。
ここでいう「水」は、必ずしも液体の水ではなく、岩石の中に結晶水として含まれる水分の形になっているものもあります。結晶水を含む含水鉱物と含まない無水鉱物では他の成分が同じでも性質が大きく異なり、温度・圧力の変化と成分の組み合わせによって含水化や脱水化が起り、それがプレートの沈み込みに伴う地震や火山に、大きな影響を及ぼしていると言うのです。
これらを踏まえて、「日本列島の下で何が起こっているか」、プレート境界地震、沈み込むプレート(スラブ)内の地震、マントルでのマグマ生成と上昇、地殻内へのマグマの貫入、内陸地震の発生などを紹介しながら、スラブから地表までにみられる一連の現象が説明されていきます。……地球科学は超複雑系である上に、「地面の下」を詳しく知ることは出来ないはずだと分かっていても、これだけ論理的にていねいに説明されると、「歴史的な事実」のようにすら感じられてしまうほどの説得力でした(汗)。
なお、地球内部を詳しくみるために、現在利用されているのは「地震波トモグラフィ」ですが、地球内部を伝播する地震波の波長は数百メートルから数百キロなので、地震波で解像できるのは1~100kmスケールの不均質構造だけだそうです。その上、もちろんノイズも含まれているので、地球内部を見るのは、さまざまな困難がつきまといます。それでも「日本列島の下では何が起きているのか」について、こんなにも研究が進んでいるのだなーと感心させられました。
日本は地震国なので、地震による被害を最小限にするためにも、今後もGNSS やIoT、AIなどの最新の科学技術をどんどん活用して、研究を進めていって欲しいなと思います。
『日本列島の下では何が起きているのか 列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで』を知ることができて、すごく興味深い本でした。プレートテクトニクスや地震波トモグラフィなど、地学に関する基礎知識の解説(および索引)も充実しているので、地学の参考書としても役に立つと思います。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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