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第1部 本

医学&薬学

「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで(国立がん研究センター研究所)

『「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで (ブルーバックス)』2018/6/20
国立がん研究センター研究所 (編集)


(感想)
 国立がん研究センター研究所のトップ研究者たちが、がんのメカニズムとゲノム医療の最前線を総合的に教えてくれる本です。
 いまや日本人の2人に1人が一生に一度はがんにかかり、年間100万人以上が新たにがんを発症する時代。高齢化に伴って今後も患者数は増加すると予測されますが、現時点ではがんを根治する治療法は見つかっていないのだとか……でも、この本を読んだら、希望が少しだけ見えてきました。
 本書のタイトルでもある『「がん」はなぜできるのか』については、「現在では「遺伝子変異が次第に積み重ねられた結果、がんが発生する」という「多段階発がん説」が広く受け入れられています。」とのことでした(ただし、がんのなかには、ひとつの遺伝子変異で起こるものもあるそうですが……)。そして、がんを引き起こす可能性のあるものとして指摘されているのは、タバコなどの化学物質の他、カビ毒、放射線、菌、ウイルス、寄生虫、遺伝的要因などもあるようです。
 この本を読むと、がんの増殖メカニズムを知ることが出来るだけでなく、老化との関係や予防法、最新の医療技術まで、総合的に知ることが出来ます。
 日本における「がんの要因」としては、男性の場合は、「1位:喫煙、2位:感染(肝炎ウイルス、ヘリコバクター・ピロリ菌など)、3位:飲酒」で、女性の場合は、「1位:感染、2位:喫煙、3位:飲酒」だそうです。
 そして予防法としては、次のようなものがあり、この5つの健康習慣を続けることで、なんと、がんのリスクが、ほぼ半減(!)するそうです
1)禁煙
2)節酒(1日あたり、日本酒で1合またはビール大瓶1本まで)
3)食生活(塩分を控えめにして野菜と果物を積極的にとり、熱いものは冷ましてからとる)
4)身体活動(歩行程度の運動を毎日60分+汗をかく程度の運動を週に1回60分)
5)適正体重の維持(太り過ぎもやせ過ぎもよくない)
 ……これらの健康習慣は、ごく一般的なものとほぼ同じなので、続けやすいように感じました。私自身はすでに実行中の習慣が多かったので、今後も続けていきたいと思います。
 そして最終章の「第8章 ゲノムが拓く新しいがん医療」では、次のような最新の医療技術の紹介がありました。
「分子標的薬は、がん化やがん細胞の増殖にかかわるたんぱく質や酵素の分子などに的を絞って狙い撃ちにし、その働きを抑えることによって、がんを攻撃します。」
「系統だった遺伝子検査の実施を前提に行うがんの診断や治療を、「がんゲノム治療」と呼んでいます。」
「核酸医薬とは、従来の抗がん剤や分子標的薬では狙えなかった、細胞内の遺伝子に直接働きかける核酸分子です。分子標的薬がターゲットにするようなタンパク質を、つくられる手前でブロックしようという狙いです。」
 がんへの新しい治療法がいろいろ進んでいるようです。今後、がんが克服できるようになることを期待したいと思います。
 ところで、「がん」という細胞、とりわけ「がん幹細胞」というのは、どえらいパワーを持っているようです。
「増殖を続けるがん細胞では、さかんにDNAの複製が行われています。このDNAの複製を阻害する物質が、がんの増殖を止める抗がん剤になります。増殖のさかんな細胞を標的にしている抗がん剤であれば、正常な体細胞への影響は少なく、患者の体へのダメージは抑えられます。ところが「がん幹細胞」は普通の幹細胞がそうであるように、必要でない環境では、分化することも増殖することもなく細胞分裂の静止期といわれる休眠状態にあります。そのため、抗がん剤が効きにくいのです。さらにがん幹細胞は、薬物を排出する能力を獲得していたり、細胞死を阻害するような分子を発現させたり、DNAに傷がついても死なないような性質を獲得しており、化学療法や放射線治療といった一般的な治療が効きにくくなっています。そもそも、がん病巣の奥まったところに潜んでいるのも、一般的な治療が効きにくい理由とされています。その結果、治療しても、がん幹細胞が生き残ってがんが再発することがあるのです。」
 ……がんの治療(攻撃)をくぐりぬけて、したたかに生き延びていく「がん幹細胞」、すごく恐ろしい存在ではありますが、こんなスーパー細胞が体内に出来るなら、このパワーを生物の「不老不死化」に活用できるのでは? とも妄想してしまいました。もしかしたら、今後も進展が期待できる「がん研究」を通して、病気の治療だけでなく、生物がより良く生きるための「何か」を掴みとれるかもしれません。いろいろな意味で、今後の研究の進展に、期待したいと思います☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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