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第1部 本
健康&エクササイズ
健康
肉体マネジメント(朝原宣治)
『肉体マネジメント』 2009/1/1
朝原 宣治 (著)
(感想)
36歳の日本人・朝原さんが、究極のスプリント種目4×100mリレーで、世界の黒人選手を退け、銀メダルを獲得できたのはなぜなのか、その秘密を教えてくれる本です。(なお、この本の中では、「北京オリンピックで銅メダル」と書いてありますが、金メダルのジャマイカチーム選手にドーピングが発覚し、2017年に銅メダルから正式に銀メダルに繰り上げされています。)
この本は、年齢があがってきても、適切に肉体をマネジメントすれば結果を出すことが可能なことを教えてくれるだけでなく、大変なプレッシャーに打ち勝って結果を出す(精神のマネジメント)方法も教えてくれました。
読んでいても胸が苦しくなるほど、北京オリンピックでは精神的な重圧があったのだなーということを、まざまざと感じさせられたのが、「第1章 いかにして重圧に打ち勝ったか」。この章には、北京オリンピックの時の朝原さんの心象風景が、すごく丁寧に描かれています。朝原さんが出場したのは、4×100mリレー。高速でのバトンの受け渡しが必要で、オリンピックに出場するような世界最高のチームでも、受け渡しのほんの少しのミスで記録が大きく違ってしまうという、とても恐ろしい競技です。この章を読みながら、何度も、「うわー……私には無理。私には無理……」という思いが心をよぎりました(汗)。これに出場する選手たちって、走る実力だけでなく、本当に精神力も強くないとダメなんでしょうね……。
ちなみに朝原さんのメンタルコントロールは、「試合前には頭の中で入念にシミュレーションをする」ことだそうです。
「そうしておくことによって、本番で何が起きても動じないようにしているんです。スタンドがどんな雰囲気でも、どんなに歓声がすごくても、動揺してパニックになることがないように。」
でも朝原さんって、もともとあまりパニックにならない人なんじゃないかな、と思わされるエピソードもありました。それは、2002年のシドニー・オリンピックでのこと。4継が大会最終日だったので10日間も時間の余裕があったそうですが、普通だったらこんな時には集中力を保つのに苦労しそうなのに、なんと朝原さんは試合直前に、練習方法(自分の走り方)を変えてしまうのです。他国のトップスプリンターと呼ばれる選手たちが、体の中心部分から動きが始まっているように見えたことにヒントを得た朝原さん、その次の日から、体の中心に意識を置いて、彼らがどんなイメージで走っているのかを想像しながら練習するように変えたそうです。その結果は6位入賞。この大会をきっかけに「体の中心を意識する」ことが、自分の走りのコンセプトになったのだとか。……さすが超一流のベテラン選手は、一味違うなーと感心させられました。
そして参考になったのが、「第4章 衰えない体を作るトレーニング」の次の一文。
「(前略)人間の筋肉というものは、携帯のバッテリーのようなものなのです。携帯の電池は、買ったばかりのころは長持ちしますが、古くなると頻繁に充電しないといけなくなりますよね? 人間の筋肉もそれと同じで、若いときにはちょっと充電するだけで長く持つのですが、歳をとるとマメに充電しないと持たなくなる。充電するためのトレーニングをする期間も、長くとる必要が出てきます。」
自分の体の状態を確かめながら、その時に合ったトレーニング法を工夫していくことで、自分の肉体のマネジメントをする。それが「衰えない肉体を作り」のために、最も大事なことのようです。
ところで最近は、テニスの伊達さんやスケートの高橋さんなど、いったん「引退」を発表した一流選手が復帰するというケースが見られるようになってきました。個人的には、すごく素晴らしいことだと思います。もしかしたら本人たちには、「若手の育成のためには止めた方がいいのかも?」という悩みがあるのかもしれませんが、そんな遠慮をする必要はまったくないと思います。超一流選手は誰でも、「最高に強い選手」と切磋琢磨することで、より高みを目指せるのではないでしょうか。超一流選手でも自分の中で「燃え尽きた」感があるときには、いったん休養する必要があると思いますが、その後で、「やっぱりあの緊張感の中で、より高みを目指したい!」という思いが再び湧き上ってきた時には、若手を蹴散らす勢いで復帰して欲しいと思います(笑)。ベテランならではの考え方、練習の仕方は、若手にとっても参考になり励みになるだけでなく、その育成方法も洗練・改善させられるのではないでしょうか。「年齢が高くなったから」後進に道を譲ろうだなんていう考えは、むしろ後進を見下した考えだという気がします。なんでも「実力で勝ち取る」ことが大事だと思います。それに、休養も復活も、自分なりのタイミングで「何度も繰り返し出来る」社会の方が、誰にとっても生きやすいのではないでしょうか。アニメの宮崎監督を見習いたいと思います(笑)。
この本は、超一流のアスリート朝原さんが、自分なりに試行錯誤して掴みとってきた肉体・精神マネジメント方法を教えてくれて、いろんな意味で、すごく参考になり、また励みにもなりました。ぜひ読んでみてください。
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朝原さんは、他にも『知ってる?陸上競技 走る 跳ぶ 投げる』、『朝原宣治の最速メソッド (トップアスリート直伝スポーツの教科書)』などの本を出しています。
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