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第1部 本
ユーモア
ビロウな話で恐縮です日記(三浦しをん)
『ビロウな話で恐縮です日記』2018/5/27
三浦 しをん (著)
(感想)
日記。それは自意識との戦いであり、記録に対する人間の執念であり、己の欲望の表明である……作家の三浦しをんさんが綴る爆笑日記エッセイです。
この本は、インターネット上で三浦さんが二年間続けた日記を、取捨選択したものだそうです。
恥ずかしながら子どもの頃から、夏休みの宿題などで強制されるものを除いては、「日記」というものをあまり書いたことがありません。実は夏休みの宿題で強制されたものでさえ、本物の「日記」は全体の三割未満で、残りの空白は、夏休み終了直前に、なんとか記憶でひねりだしたもの(一部捏造を含む)で埋めてありました(汗)。「毎日書く」と思うだけで、精神的な負担になるんですよねー。それでも大人になってからは、仕事上の都合で「業務日誌」的な備忘録を書くようになって、「日記」を書けるようになりましたが、これは本当にただの仕事のメモだから……日記ではないか……(汗)。
ということで、「日記」を書ける人は、それだけで尊敬してしまいますが……この日記エッセイが尊敬に値するかどうかは(ごにょごにょ)……えーと、とにかく笑えます。
家族との仲の良さ(弟に罵られ、母とケンカ、父の独り言を聞き流し、祖母とテレビ談議などなど)、よき友人たちとの楽しい談話、奇妙奇天烈な夢の話……事実やら妄想やらのトホホな話(日記)が、素晴らしい文章力でどんどん綴られていき……しまいには腹筋が崩壊します(三浦さんの腹筋(?)の方はどんどん太くなっていくようで、それはそれで心配ですが……)。
例えばこんな感じ(三浦さんの家に、ケーブル保守点検人が訪れたときの日記)。
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ケーブル保守点検の二人は、爽やかかつハキハキと点検実施目的を説明し、次いで即座に点検作業に取りかかった。一人は実務作業にあたり、もう一人は顧客(私だ)への解説を請け負っているらしい。
「電柱にケーブルが通っていて、それが……(中略)」
「はあはあ、なるほど」と、一応は謹聴の姿勢を見せておく。しかしその実、私の視線は解説係の男子の手に注がれていた。彼の手は妙な日焼けの仕方をしていたのである。人差し指から小指までの、第一関節と第二関節のあいだだけが、真っ白に焼け残っていたのである。
「……というわけなのです。なにか疑問な点や不都合な点はございますか」と、解説男子は言った。
「はい、あなたの手、不思議な具合に日焼けしていますよね?」(←疑問な点)と、私は尋ねた。(後略)
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えええええ? そんなこと、疑問に思っても、「疑問な点」としてストレートに質問しちゃうか? と思いつつも、その状況が目に浮かぶようで思わず爆笑してしまいました。ちなみに彼の手の不思議な日焼けの理由は、バイクでの「運転焼け」だそうです。なるほど……文章力に優れた作家の人の状況描写力が本当にリアルで、その状況が目に浮かぶようなのは、常日頃からこういうところに着眼しているからなのか……。
また、このエッセイ集でも、いろんな漫画や小説の「独自な視点からの紹介」があり、あまりにも面白そうなので、いくつか読んでみようと思わされました。
いやー、これだけ毎日「日記」を書き、部屋が埋まるほど漫画や小説を読みふけっているなんて……さすが直木賞など多くの賞に輝く作家の日常は一味違うな……と頭が下がりますが、その間にも、お腹の方はくすくす笑いで、どうしようもなく小刻みに動いてしまいます。
たまに面白い話でも読んで、頭を休めたいなと思うほど疲れている方に、特にお勧めしたい爆笑日記エッセイ集です。読んでみてください☆
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三浦さんの他の本、『妄想炸裂』、『しをんのしおり』、『人生激場』、『夢のような幸福』、『乙女なげやり』、『桃色トワイライト』、『悶絶スパイラル』、『お友だちからお願いします』に関する記事もごらんください。
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