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第1部 本

ビジネス・経営

ムダな仕事が多い職場(太田肇)

『ムダな仕事が多い職場』2017/10/5
太田 肇 (著)


(感想)
 日本の会社はなぜ仕事にムダが多いのか、その原因を分析し、ホワイトカラーの働き方に大胆にメスを入れている本です。
「働き方改革」が叫ばれ、人手不足も深刻化している日本ですが、諸外国と比べて生産性が低いという現状はあまり変わっていません。それは日本の社会全体にも、病巣があるようです。
 たとえば「おもてなし」という言葉に象徴される日本の美徳、それは実は不要な過剰サービスではないのか? と太田さんは指摘しています。……確かに、海外では商品を買っても「包装」などしてくれませんが、日本のデパートではきれいに包装してくれますし、雨の日は二重の手提げ袋まで用意してくれます。正直言って、そうしてもらうと嬉しく感じてしまいますが、過剰なサービスにも思えます。
 お客様は神様という考え方(ゆがんだ上下関係)が浸透し過ぎてしまったのか、店員さんや駅員さんへの恫喝や暴力行為も多発しているようです。このような「一方的な上下関係は過剰なサービスを生み、大きなムダをもたらす。そして、そのツケは弱いところに回される。」のだそうです。
 また「日本企業にみられるマネジメントの「マイクロ化」」や「個人の権限と責任が不明確なこと」、「会議にムダが生じやすいこと」も問題です。これについて太田さんは、「ムダの根源は日本的経営、日本型雇用そのもののなかに内在しているといえよう。(中略)なかでも共同体型組織の柱ともいえる新卒一括採用と終身雇用、それに年功序列制は、量と質の両面においてムダと深く関わっている。」と鋭く指摘しています。
 さらに日本人の「完璧主義」も、ムダな仕事を生む原因の一つだそうです。
「日本企業では、トップから末端までが「攻め」より「守り」重視、すなわち自らの保身のためにリスクを最小化するよう動機づけられている。それが、たとえ組織にとって不合理だと思っても完璧主義にこだわる大きな理由だと考えられる。」
 ……うーん、耳が痛いです、私自身もどちらかというと完璧主義だったので……(汗)。もっとも日本人の器用さや勤勉さが「完璧主義」を実現させてきた、とも言えると思います。海外から輸入された製品のいい加減っぷりに幻滅する時、日本人だったらこんな製品は作らないのになーといつも思ってしまいますし、海外に比べて日本の社会が心地よいのは、過剰なほどのサービスが、当たり前のように提供されているからだとも感じます。
 それでも、これらの優雅なムダを許容していられる社会では、すでになくなりつつあることも事実なのでしょう。人手不足は今後も深刻さを増すでしょうし、グローバル化がさらに進むことが予想される以上、日本も海外並みの「ムダの排除(手抜き)」をしていかなければ、社会がうまく回らなくなるような気がします。
 そして、この本の後半では、ムダを根本から断つための方法を紹介しています。
 そのためには、今後は細かい「改善」ではなく、思い切った「革新」へとパラダイム転換すべきなのだそうです。ITや機械化、働き方の多様化、仕事の仕分け(本業以外を分業化・IT化・外注化)、組織のフラット化など、本気でムダを排除してきた会社の事例などが具体的にいろいろと紹介されていました。
 働く人々が、より働き甲斐を感じられるような社会にしていくために、これから何をしていくべきかのヒントを、たくさん見つけることが出来ました。特に目新しいほどのことはなく、今までも指摘されてきたことが多かったような気もしますが(汗)、実際に実行するためには、「完璧主義からの脱却」など、大胆な意識変革が必要だと感じます。変化が増していくこれからの社会に対応できるよう、私たち一人一人が、考え方を変えていかなければならないのでしょう。
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 太田さんは、他にも『最強のモチベーション術』などの本を出しています。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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