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第1部 本

地質・地理・気象・地球環境

雲の中では何が起こっているのか(荒木健太郎)

『雲の中では何が起こっているのか 』2014/6/23
荒木 健太郎 (著)


(感想)
 雲ができる仕組みから、ゲリラ豪雨などの災害をもたらす雲、雲と気候変動との関わりまで、雲を形づくる雲粒の研究者が、分かりやすく教えてくれる本です。
 空や雲を眺めるのが好きで、面白い形の雲や、雲の隙間からまっすぐ降りてくる幾筋かの光、美しい夕日などに出会うと、思わず見とれてしまいます。この本は、「気象のことはよく知らないけど、雲は好き!」という一般人のために書かれたそうなので、まさに私向きの本でした(笑)。
 最初に数ページ、カラーで雲の写真が載っています。雲に詳しい研究者の方の写真らしく、矢印付で雲の名前が書いてあって、すごく分かりやすいです。それも頭巾雲とか、夜光雲とか、さらには竜巻が発生する直前の雲(気象衛星写真)とか、局地豪雨の雲とか、興味深い写真ばかり。
 そして本章に入る前には、「本書の登場人物」として、丸顔のパーセルくんとか、波打つ四角形のクラウドン、その他のキャラクター・イラストが……ん? この変な子たちは何?
 なんと、気象を説明する本文中に、これらのキャラクターがイラストで登場してきて、難しい気象現象を楽しく教えてくれるのです(笑)。なかでも笑わされたのがお相撲さんの顔をした「力士」。「(1時間に100ミリの雨が降る場合には、)畳半分ぐらいの領域に1時間に1回、それも数十キロメートルにわたる水平スケールで、小ぶりな力士が降ってくると思えば、どれだけ危険か簡単に想像がつくと思います。」という文章に添えられたイラストとして登場していました(笑)。こんな感じに、面白いイラストで分かりやすく説明してくれるのです。だから、実際に書かれている本文の内容は、かなり難しい科学知識なのに、なんだか分かったような気にさせてくれます。
 ちなみに「ゲリラ豪雨」という言い方は、気象予報士にとっては屈辱的な言葉なのだそうです。というのも、「ゲリラ」は突然発生する、予測困難、局地的という意味合いがあるからだそうで……え? どこが屈辱的なの? と思ってしまいましたが、「予測できている豪雨は、(たとえ局地的に突然発生するものでも)ゲリラ豪雨ではありません!」なのだそうです。うーん、それは考え過ぎでは? と感じてしまいました。予測されている、されていないに関わらず「突然局地的に発生する」豪雨は、他に適切な言葉がないので「ゲリラ豪雨」でいいんじゃないでしょうか……。
 さて、「気象情報の使い方」というコラムでは、よく勘違いされがちなのが、「降水確率」だという指摘がありました。「降水確率が高いと大雨が降る」わけではなく、降水確率の定義は「予報の対象地域内で、一定の時間内に降水量1ミリメートル以上の雨か雪が降る確率の平均値」なので、降水確率が30%程度でも、局地的に大雨が降ることがあるそうです(すなわち、たとえどんな豪雨になっても、対象地域の30%以内の局地なら予報は外れていない)。……天気予報の数値だけでなく、予報を説明している人の言葉もよく聞くべきというということですね……。
 雲が出来る仕組みから、天気予報、さらには雲研究の最前線まで、写真やイラストで詳しく紹介してくれる本でした。面白くて勉強にもなるので、ぜひ読んでみてください。空や雲を眺めるのは好きなんだけど、天気図を見るのは難しいと思っている方には特にお勧めします。
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 荒木さんは、他にも『雲を愛する技術』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『雨はどのような一生を送るのか』など、雲や雨を学ぶ上で参考になる本は多数あります。

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