ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

ユーモア

蒼い時(ゴーリー)

『蒼い時』2001/10/1
エドワード ゴーリー (著), Edward Gorey (原著), 柴田 元幸 (翻訳)


(感想)
 旅嫌いのゴーリーさんが、唯一遠出したというスコットランド旅行での思い出を、二匹の犬に託して語る摩訶不思議な絵本です。
 スコットランド旅行? スコットランドっぽい風景はあまりないような……(笑)。まあ二匹の犬が着ているセーターがイギリスっぽいかも。ボートに乗っているのもイギリスっぽいかも。ラクロス?かテニス?をしているのもイギリスっぽいかも(もっともラクロス発祥の地は北米だそうですが)。
 ところで『蒼い時』の原題は、フランス語で「黄昏時」を意味する言葉だそうです。絵本全体が、表紙と同じ「蒼+白黒」で、夜の一歩手前の「蒼い夜」に、二匹の犬が旅の思い出を、なんとなく物憂げに語り合うって感じでしょうか。とぼけた表情の(無表情の?)セーターを着た二匹の犬が、いろんな場所でいろんなポーズをしている絵に、意味深な短い詩のような文章が添えられています。
 たとえば貴族的な大邸宅バルコニーの大窓の椅子に向かい合って座り、窓の外の蒼い夜を眺める二匹の犬の絵には、
「生きることじゃなくて、生きてもらうことが大事なんだ。
 そのひとこと、ほかのいくつかと一緒に 書き留めておかなくちゃ」
 と書いてあります。……旅に出て、なんか妙に哲学的になってる感じ?
 また、なぜか日本語(らしきもの)が書いてあるページも! このページでは二匹の犬が扇子らしきものを持っているので、たぶん日本の旅なのでしょう。
「カンパンヨー・イス ノ リョウキン ワ トクベツ ニ イクラ デス カ?
 キブン ガ ワルイ」
 と書いてあり、下に英訳が添えられています。たぶんガイドブックに書いてあったんでしょうね(笑)。ゴーリーさんは作家の紫式部や映画監督の成瀬巳喜男が好きで、旅行嫌いなのにも関わらす、行ってみたい場所として京都の竜安寺をあげていたそうで、日本文化にかなりの興味を抱いていたようです。それにしても……ゴーリーさんから見れば、日本もスコットランドも「遠い外国」なんでしょうね……。
 なんか意味がありそうで、なさそうな、そのあたりも含めて、ゆったりと「蒼い時」が流れていく……ちょっぴり癒されるような感じのする不思議な絵本でした。
   *   *   *
 ゴーリーさんの他の本、『まったき動物園』、『ウエスト・ウイング(The West Wing)』、他に関する記事もごらんください。

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