ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

ユーモア

華々しき鼻血(ゴーリー)

『華々しき鼻血』2001/11/1
エドワード ゴーリー (著), Edward Gorey (原著), 柴田 元幸 (翻訳)


(感想)
 AからZまでの頭文字の副詞が含まれる短い文章に、白黒の緻密な線画のイラストが添えられたアルファベット絵本。副詞というものに、ゴーリーさんらしい言語感覚とイラストのセンスが光る傑作絵本です。いつも通り、柴田さんの訳文も素晴らしくて、とても大好きな絵本の一つです☆
 が……『華々しき鼻血』なんてタイトルだけはやめて欲しかった……。どうしてこんなタイトルの本を売ろうと(売れると)思うんでしょうか? まあ、ゴーリーさんらしいですが……。
 しかもこの表紙のイラストも、どこも「華々しく」ない! 岩の上でのけぞって鼻を押さえている人も華々しくないし、しいていえば毛皮の襟付きロングコートがゴージャスかも。もっとも「華々しい」の英語は「Glorious」なので、毛皮の二人の眺めている先から太陽が昇ってきて、これから「Glorious」になるのかもしれませんが……。ちなみに本の中のGには、別の副詞「くらくらと」が使われ、別のイラストと文章「くらくらと すなちで おどる」が添えられています。
 絵本の内容としては、イラストの方は、いつもの貴族的で古典的な緻密なもので、ゴシック・ロマン風な感じ。副詞の方は、「あてどなくAimlessly」とか、「まがまがしくBalefully」なんていうものが選ばれています。
 例をあげると、「いたずらに ちかしつ さがす」なんていう短文に、薄暗い明かりの中で、棚やドアを探す三人の黒スーツの男のイラストが添えられているのです。……いつものゴーリーさんらしい世界観ですね。他の絵本で見たことがあるような登場人物も出てきます。
 個人的に気にいっているのは、「ふきつに よびりん なりひびく」で、うろたえる人間たちをよそ目に、のんびり幸せそうに椅子に乗っている白猫。「てばやく てばなす」で、無表情でミミズを手放している貴婦人。「ひみつりに かけら ほうむる」で、すれちがいざまに橋の上から何かの欠片を落とす紳士(この状況がスパイっぽい)。そして最後の「むがむちゅう なにもかも かきとめる」で、メモをとっている毛皮のロングコートにスニーカーのメガネの男性(ゴーリーさん?)。
 珍しい副詞のABC絵本なので、英単語の勉強になる……かどうかは分かりませんが、いつもほどの毒も不吉さもないので、安心して楽しめると思います。お勧めです☆(タイトル以外は)
   *   *   *
 ゴーリーさんの他の本、『まったき動物園』、『ウエスト・ウイング(The West Wing)』、他に関する記事もごらんください。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)