ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
ユーモア
悪いことをして罰があたった子どもたちの話(ゴーリー、ベロック)
『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』2010/12/14
エドワード・ゴーリー (著), ヒレア・ベロック (著), & 1 その他
(感想)
悪いことをした子どもには残酷な運命が待つという訓話を、ゴーリー風味で味つけした哀しくも素晴らしい短編集の絵本です。
「悪いことをした子どもには残酷な運命が待つ」というのは、いかにもゴーリーさんらしいですが、この本の物語の方は、ヒレア・ベロックさんという方が書いています。19世紀後半のイギリス、ヴィクトリア朝の人びとは教訓が好きだったそうで、子どもの教育ツールとして教訓話がしばしば用いられたそうです。この本の著者のベロックさんは、そうした風潮をからかって、教訓詩・物語のパロディをたくさん書いたようで、ここに収録されているのは、その一部なのです。
でも、読んでみると、書き方はかなりユーモラスですが、教訓はしっかり伝わると思います。例えば最初のお話では、甘やかされて育った少年が乳母から逃げたら、動物園のライオンに食べられてしまった(!)という悲惨なお話ですが、教訓としては「外を出歩くときには、乳母の手を離さないようにしましょう」が脳細胞にしみこむことでしょう。(なお、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』と違って、この本では全員が死ぬわけではありません。)
悲惨な話ばかりなのですが、「はじめに」には、次の文章があり、ベロックさんがそうとう面白い人だったことが分かると思います。
*
さる読者に ここに書かれたるは真なりやと問われて詠める歌。
これってほんと? いえいえそんな。
ほんとうだったら たいへんだ
あなたもわたしも だれだって
あさからばんまで ほぼずっと
なにかしてます わるいこと。
もしほんとうに こうならば
あなたはとっくに しんでます
わたしにしても これらの詩
いきてつづれは しなかった。
(ゴーリー)さんの 挿絵にしても
あなたがみぬまま おわってた。
*
ゴーリーさんはこれらの話に、ユーモラスなイラストをつけています。昔のイギリスの教訓話らしく、上流階級のお屋敷育ちの子どもたちが、白黒の線画で描かれています。そして悲惨な目にあっている時も、いつもの淡々とした表情を見せています。ほぼ全ページにイラストがある絵本です。
それにしても……内容がけっこう悲惨な教訓話なのに、表紙の子供たちの能天気さは、どうなんでしょう?(笑)。むしろそれに救われる感じですけど。
* * *
ゴーリーさんの他の本、『まったき動物園』、『ウエスト・ウイング(The West Wing)』、他に関する記事もごらんください。
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ゴーリーさんが他の作家のために挿絵を描いた本には、『ジャンブリーズ』、『輝ける鼻のどんぐ』、『ぼくたちが越してきた日から、そいつはそこにいた』などいろいろあります。
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