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第１部 本
ビジネス・管理＆人事
生産性――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの（伊賀泰代）
『生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』2016/11/26
伊賀 泰代 (著)
（感想）
マッキンゼーの元人材育成マネージャーの伊賀さんが、いかに組織と人材の生産性を上げるかを紹介してくれる本です。
トヨタのカイゼンが世界的に有名になったことでも分かるように、かつて日本企業は生産現場での高い生産性を誇っていました。が、残念なことに現在では、ホワイトカラーの生産性が圧倒的に低くて世界から取り残された原因となっているのだとか（汗）。それはいけない、生産性を上げなければ……（汗、汗）。
ところで私たちは、「生産性の向上」というと、まっさきに「コスト削減」を考えがちですが（汗）、それだけではなく、「付加価値額の向上」もあるそうです。
生産性の向上には「改善（インプルーブメント）」と「革新（イノベーション）」の二つの方法があり、「組織全体が生産性の向上に意識的になることこそが、イノベーションを生みやすい組織風土をつくる」ことに繋がるのだそうです。生産性はイノベーションの源泉でもあり、画期的なビジネスモデルを生み出すカギなのだとか。
この本は、前半で「生産性を高める努力をすることがいかに重要か」を強調した上で、中盤で、「トップパフォーマーの潜在能力の引き出し方」や「一般社員、選抜漏れ中堅社員の教育方法」について解説し、後半で、生産性向上のための管理職の使命や研修のあり方、さらに、マッキンゼー流資料の作り方・会議の進め方を紹介してもらえます。文章がとても読みやすく、論旨が明確で、さらに改善のための方法も具体的に紹介されるので、とても参考になりました。この本自体が、「マッキンゼー流の一流コンサルタントの仕事の仕方」をまさに具体的に表していると感じさせられました。生産性を上げるために、この本で紹介される「米国流」の方法すべてを試してみる必要はないと思いますが、自社に合っていると思う方法をいくつか選んで試してみる価値はあるのではないでしょうか。
どの章も参考になる情報満載でしたが、個人的に特に参考になったのは、「第7章 業務の生産性向上に直結する研修」で紹介されている、伊賀さん自身がマッキンゼーで受講したマネージャーへの昇格準備研修に関するもの。これは、コンピュータを使ったRPG仕立てのプログラムを利用して、マネージャーとして必要なスキルを学ぶというロールプレイング形式の研修なのですが、この研修を通して、マネージャーの役割は、「どれも正解でどれも不正解である複数の選択肢からどれかを選ぶこと」「選んだ選択肢に伴う問題をあらかじめ想定し備えておくこと」だということを学んだそうです。
座学による研修ではなく、このようなロールプレイング式の研修は、「知識習得だけでなく具体的な話し方の練習ができる」、「相手側の立場を体験できる」、「多彩な業務遂行スタイルを学べる」などの多くの利点があり、受講することで実践的な知識・経験を身に着けることができる本当に良い方法だなと感じました。防災に備えて防災訓練をするように、ロールプレイングによって「緊急時対応も事前に練習できる」のです。座学よりも研修時間や費用はかかりますが、さまざまな効果が期待できる「生産性が上がる」研修のようでした。なおこれに関しては、参考資料で「ロールプレイング研修の実際」が具体的に紹介されているので、実際に研修を企画する時にも、参考になると思います。
さて、ビジネスイノベーションを起こすためには、社員に「問題認識力＝課題設定力」と「その問題を一気に解決したいという強い動機づけ」を持たせることが不可欠なのだそうです。
そして「３割と３％の両方を意識する」ことも大切で、「現場のスタッフが単独で実現できる３％の改善（インプルーブメント）とは異なり、３割もの生産性改善を実現する（イノベーション）には、管理職の強い意志とリーダーシップが必要で、実施期間も１年を超え、長期的な視野や計画性、リスクをとっての判断も求められ」るのだそうです。
いろいろな面で、すごく参考になる本でした。特に管理職の方や社内研修を行っている方は、ぜひ読んでみて欲しいと思います。
また、終盤の「マッキンゼー流資料の作り方・会議の進め方」では、「最初にアウトプットを具体的にイメージ」して必要なことだけを効率よく行う（生産性を上げる）具体的な方法が紹介されているので、すべてのビジネスマンの方にとって参考になる本だと思います。
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伊賀さんは、他にも『採用基準』などの本を出しています。
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別の作家の本ですが、『全社員生産性10倍計画 1人500円かければ、会社は儲かる!』、『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント』、『定時退社でも業績は上げられる! 生産性が高い「残業ゼロ職場」のつくり方』、『デービッド・アトキンソン 日本再生は、生産性向上しかない!』など、生産性向上の参考になる本は多数あります。
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