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第1部 本

社会

21世紀の不平等(アトキンソン)

『21世紀の不平等』2015/12/11
アンソニー・B・アトキンソン (著), 山形 浩生 (翻訳), 森本 正史 (翻訳)


(感想)
 不平等研究の権威のアトキンソンさんが、現代社会の根本を問い直し、格差を是正するための15の方法を提言している本です。
『21世紀の不平等』というタイトルで、ピケティさんの『21世紀の資本』を思い出した方も多いと思いますが、アトキンソンさんはピケティさんの師匠格にあたるそうです(ピケティさんはこの本の序文を書いています)。
 この本は三部から構成されています。第一部では、不平等とは何を意味し、現在どの程度なのか?などの分析を扱い、第二部では、各国が不平等縮小のためにできる手段を示唆した15の提案を行い、第三部では、これらの提案に対するさまざまな反論についての考察と、「この先の方向性」として提案とそれらの実行のためにできることがまとめられています。
「不平等」についてただ考察するだけでなく、それを解消する方向へ導くための具体的な提案をしてくれているのが素晴らしいと思います。ただしアトキンソンさんはイギリスの方で、これらの具体的提案も、主にイギリスに向けられたもののようなので、日本にそのまま適用できるわけではないのだとは思いますが……。それでも「不平等」を是正する方向に導くための「たたき台」として、日本でも参考になりそうな気がします。
 以下に、アトキンソンさんによる15の提言の一部を紹介します。
・提案1:技術変化の方向を政策立案者たちは明示的に検討事項とすべきである。イノベーションは労働者の雇用性を増大するような方向へ奨励し、サービス提供における人間的な側面を強調すべきである。
・提案2:公的政策は、ステークホルダー間の適切な権力バランスを目指すべきであり、そのためには、(a)競争政策に明示的に分配的な側面を導入すべきであり、(b)労働組合が労働者を平等な立場で代表できるような法的枠組みを確保すべきであり、(c)社会パートナーや各種非政府団体を含む社会経済評議会が存在しない場合には、それを設立すべきである。
・提案3:政府は失業を防止・削減する明示的な目標を採用し、求める者に対して最低賃金での公的雇用保証を提供することで、この目標を具体化すべきである。
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 アトキンソンさんが、「平等性は、努力と報酬のあいだに目に見えるつながりを必要とする。人々は労働時間を増やしたり、職責が増大したり、副業に就いたりした結果として稼いだ金額のうち、少なくとも相当部分を手元に残せるべきだ。」と書いているように、「働いた分だけ豊かになる」ことを保証しつつ、「ワーキングプア」のような「働いているのに貧困にあえいでいる人」の状況を、一刻も早く改善させる方向に向かっていくべきなのでしょう。
 また貧しくても学びたいという意欲のある子どもたちには、充実した教育の機会と環境を与えるべきだとも思います。
 そして今後は、ロボット(人工知能)と人間の雇用をどうバランスさせていけばいいのかについても、真剣に考えていかなければならないのでしょう。
 日本から不平等を減らし、未来に向かって、より良い社会を作るために、どうすればいいのか、これからも考え続けていきたいと思います。
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 別の作家の本ですが、『21世紀日本の格差』、『不平等を考える: 政治理論入門』、『不平等との闘い ルソーからピケティまで』、『世界から格差がなくならない本当の理由』、『データブック 格差で読む日本経済』など、不平等を考える上で参考になる本は多数あります。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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