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第1部 本

社会

日本経済論講義(小峰隆夫)

『日本経済論講義』2017/3/9
小峰 隆夫 (著)


(感想)
 日本経済の基本について、シンプルな理論で分かりやすく紹介してくれる本。日本経済の現状と課題を5つの講義で明らかにしたもので、元になったのは、2016年9月に日本経済研究センターで行った早朝連続セミナー「5日で学ぶ日本経済」だそうです。主な内容は以下の通りです。
・第一講:景気の読み方(GDPで見る景気、景気動向指数で見る景気の姿、ESPフォーキャスト調査、米国経済と欧州・中国経済、他)
・第二講:アベノミクスの成果と限界(当初のアベノミクスの目標と実績、現れてきた金融政策の限界、「新三本の矢」をどう評価するか、他)
・第三講:構造改革のカギを握る働き方の改革(生産年齢人口と労働力人口の展望、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用、働き方革命の動き、他)
・第四講:財政再建と社会保障(日本の財政は再建できるのか、財政・社会保障に大きく影響する「2025年問題」、甘える民意と民意に媚びる政治、他)
・第五講:人口と地域を考える(人口と経済成長の関係を考える、東京一極集中という診断は正しいか、少子化対策の王道とは、これから求められているのはスマート・シュリンク、他)
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 アベノミクスの評価や日本経済の現在などの解説だけでなく、今後どうするべきかに関しても、いくつかの提言をしてくれていて参考になりました。
 例えば、今後は「エビデンスに基づく政策」を行っていくべきだということ。エビデンスには「現状把握のためのエビデンス」と「政策効果把握のためのエビデンス」があるのですが、日本の政策づくりには、これらのエビデンスが不足しているそうです。IT技術の進展によりビックデータの分析が容易になってきているので、これからはエビデンスに基づく政策を進めていって欲しいと思いました。
 また今後は、メンバーシップ型(同一企業での長期雇用)ではなく、ジョブ型(専門能力に応じて企業を移る)の働き方にシフトしていくべきだという意見も、経済社会情勢が激変しつつある現状に合ったものではないかと感じます。
 さらに、東京だけでなく札幌や福岡などの地方中核都市への人口集中が進んでいる現状は、むしろ効率性を上げているのではないかとも指摘しています。こからの地域に求められるのは、「スマートシュリンクリンク(スマートに規模を縮減していくこと)」で、過疎地からより利便性の高い地域に人々を移動させること……これには賛否両論あるのではないかと思いますが、高齢化が進んでいくのが避けられないことを考えると、確かにその方が合理的なのかもしれません。
「国は少子化対策を講じて、各地域は自らの創意を活かして雇用機会の充実を図るというのが適切な役割分担ではないかと考えられる」という意見にも頷かされました。
 日本経済の現状と課題を分かりやすく解説してくれる本です。日本経済に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 小峰さんは、他にも『最新|日本経済入門』、『日本経済に明日はあるのか』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『日本経済入門』、『浜矩子の歴史に学ぶ経済集中講義』など、経済学を学ぶ上で参考になる本は多数あります。
 なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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