ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
社会
統計学が日本を救う - 少子高齢化、貧困、経済成長(西内啓)
『統計学が日本を救う - 少子高齢化、貧困、経済成長』2016/11/8
西内 啓 (著)
(感想)
「私たちは限られた「お金」と「時間」を何にかけるべきなのか?」について、統計家の西内さんが統計学を駆使して考察した本です。
いま日本が直面している、少子高齢化、貧困・格差、経済成長の鈍化といった深刻な問題に、私たちはどう対処していったらいいのか……この本では、西村さんが統計データをもとに学術的な根拠と意義のある対策をまとめて紹介してくれます。「教育に力を入れる」などの対策の効果について、根拠となるデータを示して説明してくれるので、すごく説得力を感じました。
さて「統計学(Statistics)」という言葉と、「国・州(State)」という言葉は、実は同じ語源を持っているそうです。「それぐらいに統計学が政治と切っても切り離せない関係にあるのは、「国のなかに何歳の人間が何人ずついるのか」という人口をきちんと把握しておくことこそ、国力を理解する根本になっているから」なのだとか。……確かに、国力の現状だけでなく、ある程度の未来予測が出来ないと、何にに重点を置くべきか判断できないですよね。政策の方向性を決める時には、やはり統計学を大いに活用すべきなのだと思います。
また「重要な問題について現在のデータだけでは相関か因果か分からないというときは、ランダム化比較実験を行って、因果関係を検証すればよいのだ。」そうです。(注:ランダム化比較実験とは、医薬品の承認などで行われる実験で、薬を投与される群と偽薬を投与される群の効果を比較する等の方法で行われます)。
「こうした検証と実証がなされない限り、私たちはいつまで経っても、どうすれば問題が解決するのか分からないままだ。(中略)これはランダムに選ばれた人と選ばれなかった人との間に横たわる「あやふやな不公平さ」などより、はるかに重大な問題である。」
なるほど。「重要だけど判断に迷う」問題に対処する必要がある時には、ランダム化比較実験を行ってみると、正しい判断のために必要な情報を得られそうな気がします。
さて、結論から言うと、日本の未来のためには、「教育(幼少期教育も含む)や研究開発にお金をかける」のが最も効果的で、「高齢化」対策としては、「60歳以上男女の就労率を上げる」ことなどを提言しています。「仕事をしている方が、要介護になるリスクが低減する上、介護が必要になるまでの期間を先延ばしすることで「コスト」ではなく「生産」が上がる」からです。実は、データ分析の結果から、高齢者でも働いている人の方が、幸福度も健康状態も高いことが判明しているそうです。……確かに。私自身のことを考えても、「毎日ぼんやりTVを見ている」よりは、何か「仕事をしている」方が充実した高齢化ライフを過ごせそうな気がします(汗)。
この本では、これらの提言が導き出される根拠が、データをもとに丁寧に説明されているので、とても納得でき、参考になりました。
「一章 統計学が導く少子高齢化の真実」、「二章 貧困との戦いとしての社会保障論」、「三章 医療を受ける患者とコストを負担する私たち」、「四章 経済成長を実現するために今できること」の全四章構成ですが、各章終りに数ページの「本章のまとめ」がついていて、その章の内容が本当によくまとめられているので、時間のない方は、この部分だけを読むだけでも参考になると思います。日本の現状を憂慮している方や、日本の未来を考えたい方は、ぜひ読んでみてください☆
* * *
西内さんは、他にも『サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている』、『統計学が最強の学問である』、『統計学が最強の学問である[実践編]』、『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』などの本を出しています。
* * *
別の作家の本ですが、『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』なども参考になると思います。
なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
Amazon商品リンク
興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)