ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

教育(学習)読書

「社会を変える」を仕事にする: 社会起業家という生き方(駒崎弘樹)

『「社会を変える」を仕事にする: 社会起業家という生き方』2011/11/9
駒崎 弘樹 (著)


(感想)
「日本の役に立ちたい!」と思い立った学生ITベンチャー経営者の駒崎さんが、NPOの「病児保育サービス」を立ち上げ、挫折を経験しながら事業を全国に拡大していった汗と涙と笑いの軌跡です。
 学生とITベンチャー経営者の二足のわらじを履きながら、それなりに成功をおさめていた駒崎さんでしたが、自分の事業の意味(社会的意義)が分からなくなり、経営者を辞してNPOを立ち上げることにしました。「社会の役に立ちたい」ことが、自分の真の望みだと気づいたからです。そしてアメリカには「事業によって社会問題を変える」NPOがあることを知り、日本でも同じようなNPOを立ち上げようと思い立ち、社会的ニーズが多いのに受け皿が少ない「病児保育サービス」を手掛けることにしました。
 ……これらの経緯が、すごくリアルに丁寧に描かれていきます。素晴らしく行動力があって、失敗を恐れずにどんどん突き進んでいく姿に圧倒されました。えー、そんなことも知らなかったのに始めちゃったの?と思わないでもない部分もありましたが(汗)、知識なんてものは、必要になった時に教えてもらえばいいのだし、とにかく「始める」「続ける」ことが大事なんですね。
 さて駒崎さんは、大学時代の人脈を活用したり知人に紹介してもらったりして、保育や病院関係者の協力を得たり、企画書を書いて補助金をもらったり、小児科で病児保育体験をしたり……さまざまな努力の果てに、ようやく「商店街の空き店舗で病児保育」をする準備をほぼ整えることが出来ました。ところが、突然、区長が補助金を出してくれないことになって、結局、この事業は挫折することになってしまいました(涙)。……「病児保育サービス」のような、本当に必要とされるサービスを始めようと頑張っている若者たちを支援しないなんて、どんな区長だよ!とすごく残念に思ってしまいましたが……この時、駒崎さんは大いなる挫折を感じて、NPO立ち上げの支援をしてくれた方に謝罪に行ったそうです。そして「もうやめることにしました」と告げようとした時、その方に「君さ、本当は何がしたかったんだっけ?」と問われたのです。
 ……そうか、施設がなくても病児保育は出来る……駒崎さんは、もう一度、方向を見直して「病児保育サービス」を立ち上げ直すことにしました。
 こうして少しずつ賛同者も増え、新しい形でのサービスが立ち上がり始めたころ、今度は厚生労働省から連絡が来て、求められるまま「研修マニュアル」などを送ったら……国にアイデアをパクられてしまったそうです(涙)。これじゃ、ビジネスモデルの横取りじゃないかと怒った駒崎さんが、アドバイザーをしてくれている介護サービスNPOの方に相談したら、なんと「そんなことは当然だ」と一喝されてしまいました。実は、介護サービスも同じようにパクられたそうです。そして「病児問題を解決するんだったら、国にパクられたほうがいいじゃないか。そのほうが全国で取り組みが始まるんだもの」と言われたそうです……NPOをやっている方って、本当に志が高いですね(汗)。
 そして駒崎さんもまた「確かにそうだ」と気持ちを切り替えて、「病児保育サービス」にさらに打ち込んでいったのです。
 この本は、「病児保育サービス」のNPOの立ち上げについて、その経緯を丁寧に描きだしています。企画書を書いて助成金を申請する、シンポジウムを開催して広く考え方を知ってもらう、事業を起こすときはプレスリリースを打つなど、駒崎さんが実際に行った施策を具体的に知ることが出来るだけでなく、心無い言葉や残念な結果に心がくじけそうになったり、支援してくれる人々に励まされたりした時の駒崎さんの精神的な紆余曲折もユーモアをまじえてリアルに語ってくれるので、いろいろな意味ですごく参考になり、励みにもなると思います。これから「社会を変える」仕事をしたいと思っている方は、ぜひ読んでみてください☆
   *    *    *
 駒崎さんは、他にも『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』、『働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法』などの本を出しています。
   *    *    *
 別の作家の本ですが、『社会起業家スタートブック――自分と社会を活かす仕事』、『ゼロからはじめる社会起業』、『NPOで働く』、『ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営』、『はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術』、『プランB 破壊的イノベーションの戦略』など社会起業、ソーシャルベンチャーの参考になる本は多数あります。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)