ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

教育(学習)読書

イーロン・マスク 未来を創る男(バンス)

『イーロン・マスク 未来を創る男』2015/9/16
アシュリー・バンス (著), 斎藤 栄一郎 (翻訳)


(感想)
 驚異的な頭脳と集中力、激しすぎる情熱とパワーで、宇宙ロケットから超高性能の電気自動車まで「不可能」を次々と実現させてきた男。「いま、世界が最も注目する経営者」と言われるイーロン・マスクさんの公認伝記です。
 実を言うと、民間の宇宙ロケット会社スペースXの話を初めて聞いた時には、そんなことをやろうとする人は、夢追い人(かなりの変人)か、お金持ちの道楽なのだろうと思っただけでした。小さいロケットを打ち上げることは出来るだろうけど、役に立つ会社になるのは当分先か、永遠に先になるのだろうと思っていたのです(汗)。
 ところが……2008年9月28日、4度目の打ち上げで、ついにスペースXは、ペイロードを軌道に投入するのに成功してしまいます。
 これだけでも凄いのに、マスクさんは電気自動車のテスラモーターズも同時に経営していたのです。さらにソーラーシティという会社まで……本当に物凄い人だなあと感心しました。
 さて、この本はそんなマスクさんの公認伝記です。「公認」なので良いことばかり書いてあるだろうと思いきや、二度の離婚や不当な扱いを受けた従業員についての話もきちんと書いてあり、マスクさんの半生について、関係者への取材や丁寧な調査を通して丹念に描き出しているという感じで、とても読み応えがありました。
 なかでも感動的だったのは、2008年8月2日、スペースXのファルコン1号の3度目の打ち上げ失敗の衝撃で、関係者全員が心身ともに疲れ果てていた時に、マスクさんがみんなを励ました言葉。
「もうすぐじゃないか。今度こそいける。こんなことでへこたれるな。すぐに冷静になって、何が起きたのか見極めて、原因を取り除けばいい。そうすれば失望は希望と集中に変わるんだ」
 それにしても……凄まじい半生です。
 マスクさんは南アフリカの裕福な白人家庭に生まれたのですが、型破りな祖父の自由奔放な生き方にまきこまれ、父親には厳格に育てられ、学校では不良にいじめられ……楽しい少年時代を送ったわけでは全然なかったようです。少年時代から天才的記憶力があり頭が良かったようですが、協調性に欠ける面も強く、あまり目立つ子ではなかったのだとか。
 それでもアメリカに移って大学に通うようになったころから、どんどん才能を発揮するようになりました。早くからインターネットの将来性に目をつけ、道順案内サービス会社を起こし、その売却益で次にネット銀行のX.com(のちにペイパルとなる)を立ち上げます。これも成功に導いたのですが、首脳陣の対立で追い出され、アフリカ旅行で熱帯熱マラリアに感染して死にかけてしまいます。
 幸運にも生き残ったマスクさんは、少年時代からの夢、「宇宙」に目を向けます。そして今度は、スペースX、テスラモーターズ、ソーラーシティに精力を注ぐようになるのです……読みながら、そのあまりの凄まじいパワーっぷりに恐れ入ってしまいました(汗)。スペースXもテスラモーターズも、決して順調だったわけではなく、倒産の危機と闘いながらの成長です。こんな綱渡り成長企業を同時に経営するなんて……私だったら絶対に胃腸を駄目にしそう……この伝記を読んで、「元気をもらえる」どころか、「元気を奪われて」しまいそうになりました(汗)。
 それでも……こんな人間が実在するんだなあと思うと、なんだか勇気もわいてきます。
 まさしく「誰にも真似ができない壮大な夢を追う天才」なのでしょう。
 最後に、マスクさんの支持者の一人、グーグルのCEOのペイジさんの言葉を紹介させていただきます。(専門家に「不可能」だと言われた全書籍スキャンを実際に始めてみて、)
「よく知らないことに対する人間の洞察力なんて、たいしたことがないんだなと悟りました。イーロン(・マスク)がよく言うことですが、何ごとも原点に立ち返って取り組まなければいけないんです。どういう仕組みなのか、時間はどのくらいかかるのか、コストはどうか。自分がやったら、どのくらい安くできるのか。何が可能で、どこが面白いのか判断するのには、工学や物理学の分野でそれなりの知識が必要ですが、イーロンはそこが傑出しています。しかも経営、リーダーシップ、統治についても詳しい。」
「スペースXもテスラもリスクの大きなビジネスだと思いますが、イーロンはそんなことを気にせずに実現します。身を削ることもいとわない。だからこそ成功の可能性も高いのだと思います。……」
 とても「熱い」伝記でした。大人のビジネスマン向けの本なのかもしれませんが、この本は特に、未来をつくる若者たちに読んで欲しいと思います。もちろん大人の方にもお勧めします☆
   *    *    *
 別の作家の本ですが、『イーロン・マスク 破壊者か創造神か』、『史上最強のCEO イーロン・マスクの戦い』、『イーロン・マスク』など、イーロン・マスクさんの生き方を知ることが出来る本は多数あります。また、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』、『クリエイターズ・コード 並外れた起業家たちに共通する6つのエッセンシャル・スキル』も、とても参考になると思います。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)