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第1部 本

ビジネス・問題解決&トラブル対応

なぜリーダーは「失敗」を認められないのか(テドロー)

『なぜリーダーは「失敗」を認められないのか (日経ビジネス人文庫)』2015/4/2
リチャード・S・テドロー (著), 土方 奈美 (翻訳)


(感想)
 リーダー(経営者)たちは、避けられる失敗をなぜ犯すのか? 失敗したことをなぜ認めないのか? 現実を認めない態度(否認)が、企業を破滅へと導くさまを、フォードなどの歴史的事例から解き明かし、それを避けるためにリーダーが取るべき行動を8の教訓として教えてくれる本です。
 まず「第1部 現実を見誤る」では、フォード、シアーズ、コカ・コーラなど、一度は大成功をおさめた経営者が、現実を直視できなくなったために失敗に陥る様を描きだします。
 そして「第2部 真実を見極める」では、デュポンやインテルなど、失敗しそうな状況をなんとか克服し、新たな成功のきっかけをつかんだ経営者たちを描いています。
 最後の「第12章 新たな視点」では、これらの失敗から学べる次の8つの教訓を紹介してくれます。
1)危機を待ってはいけない。それでは手遅れになる
2)事実がどれほど残酷でも、それを無視・否定・理屈こね・歪曲しても、その残酷さを和らげない
3)権力は人を狂わせる
4)最高意思決定者が、聞く耳を持つ必要がある
5)長期的な視野に立つ
6)バカにした言葉遣いを慎む。ごまかすために呼び名を変えてはいけない。
7)真実を語る
8)たいていの人間は、たとえ間違っていようと、過去の常識にしがみつこうとする
   *
 これらの教訓は文章で読むと当然回避すべきことのようにも見えますが(汗)、実際に経営者になった時に、8つの教訓を守れるかどうかを考えると……難しいかもしれません。未来は誰にも正確に予測することが出来ないので、どのように判断し行動すれば「正しい結果」になるかを、誰も教えてくれないからです。
 この8つの教訓のもととなった失敗事例は、読んでいて辛いものがありましたが、むしろ成功事例よりも、参考になることがたくさんあると感じました。「良薬は口に苦し」ですね……。
 とにかく、経営している会社で売上が下がるなどの問題が発生してきた時には、悪いデータから目をそむけず、他人の意見に耳を傾け、時には、「立て直しのために自分が外部から招かれてきたとしたら、どうするか?」という視点に立って、考えてみることが大事だと思いました。
 ところで、「失敗の事例」の筆頭にあげられたヘンリー・フォードさんですが、もしも私がフォードさんだったら、決して「失意の人生」ではなかったと思います。なぜなら彼の「モデルT」は、道路は劣悪、ガソリンスタンドもなく、自動車部品の流通網も修理工場のネットワークも自動車ローンも保険もない1900年頃のアメリカで、自動車市場そのものを創ったのです。そして「私は普通の人たちのための車をつくる。設計は技術の粋を極めたできるだけシンプルなものにし、最高の材料と人材を用いて製造する。そしてまともな収入を得ている人ならだれでも買えるような安い価格で販売し、家族とともに神の創りたもうた大自然の中で余暇を楽しめるようにする」という宣言通りのことをなしとげたのですから。しかも結果的に失敗の原因の一つとなってしまったのが、「モデルTの造りがあまりにもしっかりとして頑丈なため、いつまでも壊れないことだった」という事実には、感動すら覚えてしまいました。最終的には、世の中の変化に合わせられなかった(しかも自分が間違っていることを否認した)ことで、大失敗してしまいますが、その情熱的なほどの頑固さが、新しい市場を創り、アメリカ社会を大いに活性化させていったことは間違いないと思います。
 そこから私は9番目の教訓を教えてもらいました。
9)たとえ失敗することになっても、「社会のためになる」ビジョンを貫け
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 迷った時に、道を示してくれるような本だと思います。ぜひ読んでみてください。
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 テドローさんは、他にも『アンディ・グローブ[上]―修羅場がつくった経営の巨人』、『アンディ・グローブ[下]―シリコンバレーを征したパラノイア』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『名経営者が、なぜ失敗するのか?』、『「経営の定石」の失敗学 傾く企業の驚くべき共通点』など、ビジネスの参考になる本は多数あります。  

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