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第1部 本
IT
超監視社会: 私たちのデータはどこまで見られているのか?(シュナイアー)
『超監視社会: 私たちのデータはどこまで見られているのか?』2016/12/7
ブルース シュナイアー (著), Bruce Schneier (原著), 池村 千秋 (翻訳)
(感想)
スマホの履歴やオンラインでの購買履歴、グーグルでの検索、フェイスブックの利用だけで、あなたの性癖はバレている……何気ないネット、スマホ利用から想像を超える情報監視が進む実態を、赤裸々に描いた衝撃の一冊です。
この本の中でも紹介されていますが、アンドロイドOSのスマートフォンで使える無料懐中電灯アプリ「ブライテスト・フラッシュライト・フリー」が、ユーザーの知らないうちにユーザーの位置情報を収集し、データを広告業者に販売していたという事件は、一見無害そうなアプリに、どんな危険が潜んでいるか分からないという恐怖を感じさせられました。しかもこの事件では、このアプリをリリースした会社に是正勧告とデータの削除は命じられましたが、制裁金は科されなかったそうです。なぜなら、アプリが無料だったから……「無料」だと思うと、気軽にアプリをダウンロードしてしまいがちですが(汗)、ダウンロードするアプリは必要最小限にとどめた方が良さそうです。
この事件は、全体主義国家によって統治された近未来世界の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの小説『1984』を思わせる出来事のようにも思えますが、現実は、それよりさらに怖い世界になっているのかもしれません。巨大な「ビッグ・ブラザー」だけでなく、数知れない「リトル・ブラザー」たち、がスマホなどの身近なIT機器に潜んで、監視したデータを秘かに配信しているのですから……。
この本は「超監視社会」にどのように対応していくべきかを考えさせてくれます。
サン・マイクロシステムズのスコット・マクリーCEOは1999年にすでに、「どっちみち、プライバシーはゼロだ。それを前提に行動するしかない」と言い切っているそうですが、現実的には、やはりこう考えるべきではないかと感じています。なぜなら「監視されていないはず」と思い込んだところで、秘かに監視している何かを抑止することは出来ないので、むしろ「監視」を前提に行動した方が合理的だと思うからです。
もちろん可能な限りプライバシーを守りたい(尊重したい)と思ってもいますが、公的な場所でのプライバシーは、ある程度は制限されてもしかたないかな、とも思います。例えば、防犯カメラなどは、犯罪の抑止・実証にとても役に立っているので、公的な場所に設置されることを問題視するつもりはありません。私的な場所に関しては、設置場所をよく選ぶべきだと思いますが……。
この本の著者のシュナイアーさんも、「恩恵と監視のリスクを天秤にかけて考えなくてはならない」「重要なのは、バランスを取るプロセスに私たちが意識的に関わること」だと言っています。
単純に「監視=悪」という訳ではなく、「監視は必要最小限にとどめる」こと、「透明性を拡大させるよう努める」ことが重要なのです。そのために、私たちがやるべきことは、「1)監視に気づく」、「2)監視について語る」、「3)政治的に結束する」ことだそうです。
(なお、この本は、セキュリティの本ではありますが、「超監視社会」にどう対応していくべきかを考察するのが主眼で、「実践的なセキュリティ対策」についてはあまり詳しくはありません。ごく簡単に、「ウィルス対策ソフトウェアを使う」「怪しげなウェブサイトを避ける」「不審な電子メールの添付ファイルを開かない」「データをバックアップしておく」などの一般的なことが書いてあるだけでした。)
さて、今後、私たちの生活には、「監視」に利用されかねない便利家電が、どんどん入り込んでくると思います。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が進み、知らないうちにスマホや電話だけでなく、「テレビ」「冷蔵庫」「エアコン」「ポット」「自動車」……身の回りのあらゆるものがネットに繋がって……どんなデータを収集し、誰に送信(拡散)していくのでしょうか? なんだか怖くなってしまいました(汗)。それでも、便利家電のない不便な生活を、あえて選ぼうとまで考えるでしょうか?
そう思うと、やはり私たちが出来ることは、「1)監視に気づく」、「2)監視について語る」ことで、「監視は必要最小限にとどめる」「透明性を高める」ように働きかけていくことだと思います。
2017年の現在ですら、すでに必要以上に「簡単に監視に使える装置」が世の中に溢れているような気がします。たとえば私のパソコンには「カメラ」が標準で搭載されていますが、利用していないので、わざわざ「シール」を貼って覆っています(盗撮防止のため)。標準搭載などせずに価格を下げて欲しいと思います。また「無線」も標準搭載ですが、これも「スイッチ」で物理的に切ることができる機能を、標準搭載にして欲しいと思っています。さらにスマホのカメラ、これは便利なので標準搭載でも構わないと思いますが、使わないときには「スライド窓」などで物理的に覆えるような機能がついていて欲しいと感じています。このように、私たち自身が、「不必要な監視を必要最小限にする」ことを簡単にできるような環境を、整えていって欲しい(整えていきたい)と思います。
背筋が寒くなるような本でしたが、ぜひ読んでみてください。そしてより良い社会を作るために、どうすべきかについての意見を発信して欲しいと願っています。
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シュナイアーさんは、他にも『信頼と裏切りの社会』などの本を出しています。
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別の作家の本ですが、『ドラグネット 監視網社会――オンライン・プライバシーの守り方』、『スノーデン・ショック――民主主義にひそむ監視の脅威』、『スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録』など監視社会を考える上で参考になる本はいろいろあります。
またサイバーセキュリティ技術やIoTに関心のある方には、『サイバー攻撃の足跡を分析するハニーポット観察記録』などの本や、『IoT開発電子部品キット』も参考になると思います(『IoT開発電子部品キット』は本ではなくて家電です)。
なお社会や脳科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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