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第1部 本

ビジネス・仕事力向上

深く、速く、考える。 「本質」を瞬時に見抜く思考の技術(稲垣公夫)

『深く、速く、考える。 「本質」を瞬時に見抜く思考の技術』2016/5/30
稲垣 公夫 (著)


(感想)
「深く」かつ「速く」考える思考法(深速思考)のメソッドと、それを鍛えるトレーニング法を、一般のビジネスパーソン向けに解説した本です。
 この本で解説される「深く速く考える」ノウハウの中核の一つは、A4判の紙1枚程度の情報を読み、その中の因果関係を抽出して図にまとめる「因果関係マップ」。これを何度も描いていくと、本質をつかんだ深い思考をハイスピードで行えるようになるそうです。
「因果関係マップ」というのは、マインドマップと似たような形の図を、次の5ステップで描いていくものです。
1)塊を探す
2)塊から要素を取り出す
3)要素にラベルをつける
4)ラベルから塊と塊の関係を見つける
5)塊同士の関係(全体構造)を図にする
 この本では、「AKB48が成功した要因の因果関係マップ」や「家康が幕府を江戸につくった理由の因果関係マップ」などの実例を使って、その描き方が解説されます。「家康が幕府を江戸につくった理由の因果関係マップ」はとても分かりやすかったのですが、「AKB48」の例の方は、「構成メンバー全員が美少女」という最重要要因が抜けていたので、いまいちでした……(汗)。
 それはともかく、この因果関係マップは考えをまとめるのにすごく有効な方法だと感じました。何かを深く考えようと思った時、どこから始めたらいいのか迷ってしまったり、いつのまにか途中で違う方向に走ってしまったりすることがありますが(汗)、このようにきちんと可視化していくと、考えをまとめやすいだけでなく、間違いにも気付くことも出来ます。
 また、ただ因果関係をまとめるだけの図ではなく、要素をつなぐ矢印の途中に「+」などの記号を書き入れることで、それが与える影響の変数を表現したり、両方向の矢印を描いて、その二つの要素がトレードオフ関係にあることを表現したりも出来ます。この因果関係マップは、深い考えを整理するのに、とても良い方法だと思いました。
 また新しいアイデアを考え出す方法の「二種類のアナロジー思考」も、とても参考になりました。その一つ目は、因果関係マップを描いて、その「共通の特徴やユニークな特徴を取り出す」「特徴を抽象化する」ことで、自分の仕事に参考にできる点に気づくことがあるそうです。そして二つ目は、「遠くから借りる」こと。できる限り広範囲の部署・専門・年齢・趣味のメンバーを集めてブレーンストーミングしてみる、幅広い分野の本を読んでヒントを探す、タウンウォッチングするなどの方法だそうです。
 このように「深く速く考える」ための、とても実践的な方法をいろいろ教えてもらえます。その中核の方法の一つ、因果関係マップの描き方には、基本的な作り方の例として4例、ビジネスモデルの例として、鳥貴族などの飲食店4例とコンビニなどサービス業3例の儲かるしくみ分析のマップが事例として提示されるので、それを参考にして演習してみるといいと思います。また新しい事例が欲しいときには、「ガイアの夜明け」などテレビの経済番組を参考にすると良いとか(実際、この本の演習問題のネタの一部にも、これらの番組をヒントにしたものが使われているそうです)。
 人工知能などの技術発展によって、人間には、今まで以上に「新しい知識」をつくる「深く考える力」が求められるようになるでしょう。この本を読んで演習することで、その力をよりいっそう強化できるのではないかと思います。
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 稲垣さんは、他にも『今すぐ使えるビジネスの強化書 トヨタ式A3資料作成術』、『トヨタ式A3プロセスで製品開発 A3用紙1枚で手戻りなくヒット商品を生み出す』、『マンガでわかる! トヨタ式資料作成術』、『トヨタのカタ 驚異の業績を支える思考と行動のルーティン』などの本を出しています。

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