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第1部 本

教育(学習)読書

センス・オブ・ワンダー(カーソン)

『センス・オブ・ワンダー』1996/7
レイチェル・L. カーソン (著), Rachel L. Carson (原著), 上遠 恵子 (翻訳)


(感想)
 化学薬品による環境汚染にいち早く警鐘を鳴らした名著『沈黙の春』の著者のカーソンさんの遺作で、彼女が毎年、夏の数か月を過ごしたメーン州で、姪の息子のロジャーと探索した森や海岸を、詩情豊かな筆致でつづった素敵なエッセイ集です。
 この本を「教育」のジャンルで紹介することにしたのは、カーソンさんがこの本で最も伝えたかったのが、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、つまり「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を、いつまでも失わないでほしいという願いだったからです。
 そのために必要なことは、「わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる」ことだとカーソンさんは教えてくれます。
 お子さんがいらっしゃる方は、ぜひ親子で自然の中を歩いてみてください。もちろん庭で遊ぶことでも構いません。子どもたちに、晴れた日や小雨の日の土の感触、草むらを跳ねる虫たち、ゆっくり進むカタツムリを、じっくり眺める機会を与えてあげてください。その体験は、私たちの「センス・オブ・ワンダー」を磨くとともに、人間性を育み、心を癒してくれると思います。
 この本の中で、美しい写真とともに綴られる海岸と森の美しい情景……雨を吸い込んだ地衣類の感触を楽しみ、星空を眺め、鳥の声や風の音に耳をすませる……美しい文章を読みすすめるうちに、私自身も幼い頃に自然に親しんだときの記憶が呼びさまされてきて、いくつになっても「センス・オブ・ワンダー」を呼び覚ますことができるのだな、という実感にすっかり浸ってしまいました(笑)。
 この「センス・オブ・ワンダー」は、すべての人が生きていく基本となるものであって欲しいと思います。
 なかでも心に残ったのは、93歳で亡くなった海洋学者のペテルソンさんが、晩年に息子さんに語ったという言葉。
「死に臨んだとき、わたしの最後の瞬間を支えてくれるものは、この先になにがあるのかというかぎりない好奇心だろうね」
 ……脳科学的に考えると、死に臨んだときに見るのは、死滅していく脳細胞が描きだす幻覚じゃないかな……現実主義者の私は一瞬そう考えてしまい、すっかり「センス・オブ・ワンダー」が萎んでしまっていることに絶望しました(汗)。
 でも考えてみれば、死に臨んだときには、今まで見たこともない死後の世界を見られると思ってわくわくした方がずっと素敵です☆ どんなに知識が増えても、自然を愛し、新しいことへの好奇心を抱いて、「センス・オブ・ワンダー」を磨き続けたいと、ひそかに心に誓いました(笑)。
 心の宝物のような本です。ぜひ読んでみてください。
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 カーソンさんの他の本、『沈黙の春』に関する記事もごらんください。

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