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第1部 本
脳&心理&人工知能
図解入門 最新人工知能がよ~くわかる本(神崎洋治)
『図解入門 最新人工知能がよ~くわかる本 (How-nual図解入門Visual Guide Book)』2016/7/5
神崎 洋治 (著)
(感想)
人工知能の最新動向について、総合的・網羅的に分かりやすく解説してくれる本です。人工知能について知りたいという方への入門書として最適だと思います。
逆に言うと、人工知能関連情報がとても広範囲に網羅されているので、一つ一つの詳しい情報を知りたい方にはあまり向きませんが(汗)、そういう方にとっても、自分の関心のある分野について全体の中で眺めることが出来るので、読んで無駄になるということはないと思います。
「第1章 AI関連技術の最前線~過去から未来までの系譜」、「第2章 AI技術のビジネス活用」、「第3章 超入門かんたん解説AI関連技術と専門用語」では、人工知能の関連技術、特に機械学習やニューラルネットワークのしくみや専門用語、ビジネス活用事例などの最前線の情報が、分かりやすく紹介されています。
そして「第4章 AIを牽引する主要プレイヤー」では、IBMやMicrosoft、Google、Facebook、Amazonなど、AI技術の研究を進める有名企業の状況が、簡単にまとめられています。最近、人工知能に注力している先進企業の名前をニュースでよく耳にしますが、このように記事としてまとめている本はあまり多くないので、とても参考になると思います。日本の企業についても、トヨタ自動車、NTTグループ、ソフトバンクグループ、日本勢の動向(ホンダ、FRONTNEO(UBIC)、全脳アーキテクチャ・イニシアティブ、他)などの記事があります。
さて、この本の中でも紹介されているMicrosoftの人工知能「Tay(テイ)」。2016年3月23日に人工知能型チャットボットとしてTwitter等の短文SNS(メッセージ系)で運用が開始されたものの、公開からわずか16時間で運営中止になったというニュースを聞いたことがある方も多いと思います。中止された理由は、TwitterでTayが他のユーザーとの会話を通じて、人種差別や、陰謀論、更には「ヒットラーは正しかったし、私はユダヤ人が嫌い」「フェミニストは地獄で焼かれろ」等と不適切な発言を連発するようになったためです。
このニュースを知った時、あまりにも短命に終わった運営を悲しく思いましたが、この本の記事を読んで、実はMicrosoftのこの実験的運用は、結果的には「大成功」だったのでは?と思い直しました。なぜなら神崎さんも指摘しているように、悪意あるユーザーによってTayが悪い子に育ってしまったという事実は、Tayの高い学習能力を如実に示しているからです。しかもニュースとして取り上げられたことで、MicrosoftのTayの広告にもなりました(笑)。
さらにネットには「悪意あるユーザーが大勢いる」ことも知れ渡ったので、今後のAI技術を推進する側の人々にとっての素晴らしい教訓にもなりましたし、16時間という短時間で運営中止に追い込まれたということは、無駄な学習時間を費やさずに済んだという幸運をもたらしたとも言えます。Tayが実際にどのように学習しているのか詳しくは知りませんが、もしもTayがディープラーニングという技術を利用して学習しているなら、正しい学習と悪い学習との両方を修得してしまった場合、「悪い学習部分だけを削除する」ことはすごく困難だからです。
考えてみると、人間の大人なら、「常識」や「良識」をすでに持っているので「悪い学習」だけを排除することが出来ますが、人間の子どもだったら、Tayと同じことが起こってしまいそうです。そう思うと、やはり様々な人が存在するネットに、無垢な人工知能の教育を委ねるって、怖いことですね……。
とても参考になる本でした。人工知能に興味がある方への入門書として、特にお勧めします☆
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神崎さんの他の本、『ロボット解体新書 ゼロからわかるAI時代のロボットのしくみと活用』に関する記事もごらんください。
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別の作家の本ですが、『絵でわかる人工知能 明日使いたくなるキーワード68』、『まるわかり! 人工知能 最前線(日経BPムック)』、『この1冊でまるごとわかる人工知能&IoTビジネス(日経BPムック)』、『AI 人工知能の軌跡と未来 (別冊日経サイエンス)』など分かりやすい人工知能の入門書は多数あります。
なお脳科学やIT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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