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第1部 本
IT
闇ネットの住人たち(バートレット)
『闇(ダーク)ネットの住人たち デジタル裏世界の内幕』2015/8/29
ジェイミー・バートレット (著), 星水裕 (翻訳)
(感想)
インターネット内の闇世界の危険なサブカルチャー、荒らし、麻薬売人、ハッカー、政治的過激派、コンピュータ科学者、ビットコインプログラマー、自傷行為者などに関して、バートレットさんが直接体験したり、独占インタビューしたりしたことを紹介した本です。
グーグル、フェイスブック、アマゾンなど私たちのよく知っているインターネットの中には、あまり表には現れてこない巨大な闇のネットワークも存在しています。できれば知らずに過ごしたい闇ネットの世界ですが(汗)、目を背けているだけでは、その危険を避けることすら出来ません。この本では、闇世界が意外に身近に存在していること、必ずしも危ない人々ばかりではないことなどの実態を知ることが出来ます。
さて、ネット掲示板などでは、たまに「炎上」を目撃することがあります。それを見ていつも思うことは、「人間には、絶対に分かり合えそうにない人がいるものだ……」ということ。罵り合っている人たちの一部(たまに全部)の人たちの精神状態が、まるで理解できないことがあります。
でもそういう人たちも、リアル世界で出会うと、意外にまともな人たちなのかもしれません。バートレットさんは次のように言っています。「私は同じ人間に二度インタビューをすることが多かった。まずオンラインで、次にリアルで、というふうに。そうすると、まるで別の人間と話しているかのように感じるのだ。」バートレットさんは現実の彼らの方に、より好感を抱いたそうです。でももしかしたら、ネットの方にこそ彼らのむき出しの本性がさらけ出されているのかも……そう思うと、やっぱりちょっと怖い気もします……(汗)。
ツイッターへの悪ふざけ写真の投稿や、匿名ネット掲示板での罵り合いを見ていると、(なんて無邪気で無防備な人たちなんだ)と感じることもあります。そして、たまにその行状に怒った人が、彼らの素性を探り出して「身バレ」させているのを見ると、やっぱりネットの匿名性なんて幻想に過ぎないのだと痛感させられてしまいます。
たとえ真面目にサイトを運営していたとしても、「荒らし」の攻撃を逃れることは出来ません(汗)。荒らしのグループは、「普通のマトモな人々が、襲われたニュースグループを放棄すること」を目標としていたり、「インターネット中に広がりつつあるように見えるマジメさを叩けたことで溜飲を下げ」たりすることもあるからです。
またネットでの薬物取引の事例では、意外にもアマゾンのマーケットプレイスで使われているような「ユーザーによるランキングシステム」の活用で、商品の品質や純度を判断するための安全でシステム化された信頼性の高い方法が実現されていたり、サイトと売り手・買い手の三者のうちの二者がPGPキーを使って署名をした時だけお金が支払われる「マルチシグネチャ・エスクロー」と呼ばれる決済方法が提案されたりしているようです。さらに、ビットコインの取引データから匿名性が暴かれるのをふせぐために、開発者が「タンブリング」サービス(複数の取引を混ぜ合わせてから決済するサービス)を生み出すなど、闇ネットの進化はとどまるところを知りません。
自殺フォーラムなどのサイトの事例では、「話を聞いてもらえ、理解してもらえることは、精神医学なんかよりよっぽど私を助けてくれました」と、このフォーラムのおかげで命を救われた人の言葉が紹介されていて、闇ネットが必ずしも有害なものばかりではないことも分かりました。
さらに「自分の脳、および、その固有のシナプス経路のすべてを、コンピュータにアップロードするつもり」というトランスヒューマニストの世界を垣間見ることもできて、インターネットのなかでは、本当にいろんな人々が活動しているのだなと感じさせられました(汗)。
毎日、便利に活用しているインターネットの世界には、すぐ近くに闇ネットの住人たちもいることを、いつも心に留めておきたいと思います。
最後に、バートレットさんの言葉を紹介させていだだきます。
「その用途こそ間違っていたり見当違いだったりするかもしれないが、闇ネットの人々がインターネットを驚くべき方法で利用しているのは確かだ。私たちは、このようなサイトを検閲したり規制したり閉鎖したりするためにエネルギーを費やすよりも、彼らから学び、彼らが見境なく濫用しているテクノロジーをよい目的に使う方法を考えたほうがよいだろう。」
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別の作家の本ですが、『インシデントレスポンス』、『闇経済の怪物たち グレービジネスでボロ儲けする人々』など、セキュリティや闇ネットに関する本は多数あります。
なお脳科学やIT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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