ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
ビジネス・経営
ビジョナリー・カンパニー3
『ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階』2010/7/22
ジム・コリンズ (著), 山岡 洋一 (翻訳)
(感想)
偉大な大企業も衰退する……この本は、『ビジョナリー・カンパニー』『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で、膨大な調査データから「時代を超える生存の法則」と「良好な企業から偉大な企業への飛躍の法則」を導き出した経営学者のコリンズさんが、企業の「衰退の法則」に着目、それを「衰退の5段階」としてまとめたものです。
今回取り上げられたのは、前記2冊で言及された60社の大企業のなかから、「衰退の五段階」を歩んだしまったヒューレット・パッカード(HP)、メルク、モトローラ、ラバーメイド、スコット・ペーパー、ゼニスなどの11社(涙)。この11社を、現時点(2006年頃)で衰退していない同業の比較対象企業と比較し、どこが岐路となったのかを分析したのです。ただし衰退企業11社を選んだのが2008年の金融危機以前であったため、『ビジョナリー・カンパニー2』では飛躍企業として取り上げられ、経済危機で国有化されたファニーメイ(連邦抵当金庫)は入っていないのですが、これについても、付録に「ファニーメイと2008年の金融危機」として言及されています。また卓越したリーダーによって衰退パターンを逃れたケースとして、ルイス・ガースナーによって再建されたIBMや、ニューコア、ノードストロームのケースも付録として収録されています。
さて、「ビジョナリー・カンパニー」であっても、永遠に繁栄できるわけではなく、たった十数年で衰退を迎えてしまうこともあります(涙)。
今回の分析で、コリンズさんは、トルストイの『アンナ・カレーニナ』の冒頭の文章「幸せな家庭はどれも似通っているが、不幸な家庭はそれぞれ違っている」を何度も思い浮かべたそうです。分析から浮かび上がってきたのは、偉大になる道筋よりも衰退への道筋の方が数が多いということで、衰退の過程への法則を見つけ出すのは、すごく難しかったとか。
それでも、衰退には次の5段階があることを見出したそうです。
第1段階:成功から生まれる傲慢
第2段階:規律なき拡大路線
第3段階:リスクと問題の否認
第4段階:一発逆転の追求
第5段階:屈服と凡庸な企業への転落か消滅
そして自分の会社が、これらのうちのどの段階にあるか、衰退への徴候にできるだけ早く気づくことが大事なようです。ほぼすべての企業が危機に見舞われるのですが、それでも企業のすべてが衰退するわけではなく、危機を乗り越え、偉大な企業であり続けることも出来るのですから。
コリンズさんは、「第八章 充分な根拠のある希望」で、「回復への道は何よりも、健全な経営慣行と厳格な戦略思考に戻ることにある」と語っています。
正直に言って、衰退企業とされた11社が、どんな手を打てば危機を乗り越えられたのかは分かりませんでした(汗)。彼らも決して無策だったわけではなく、自分たちに出来る努力をしたにも関わらず、危機を乗り越えられなかったのだと感じたからです。負けたから賊軍になったのだな……という印象を受けました。そういう意味で、この本は「戒め」にはなったのですが、「そんな時にはどうしたら?」を具体的に教えてくれる本ではなかったように思います(汗)。
それでも、これらの企業の調査に基づく「衰退への経緯」を知ることで、自分の会社にその兆候がないかを見つけるヒントを得られるのではないかと思います。
このような大規模な調査はなかなか出来ないと思いますので、企業経営に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
ビジョナリー・カンパニー4
『ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる』
2012/9/20
ジム・コリンズ (著), モートン・ハンセン共著 (その他), 牧野洋 (翻訳)
(感想)
これまで「偉大な企業」「偉大な指導者」の条件を追究してきたコリンズさんが、今回は初めて外部環境を変数に入れ、不確実でカオスのような時代に他を圧倒して成長している偉大な企業7社を調査分析した本です。
この本ではそれを「10X型企業」と名付けています。10X型企業とは、同業よりも最低10倍以上のパフォーマンスを上げている企業だそうで、この本でも、前回までと同じように、その特徴を同業の有力企業と比較する「一対比較法」で鮮明に描き出しています。
10X型企業は、次の通りです(カッコ内は比較対象企業)。
・アムジェン(ジェネンテック)
・バイオメット(キルシュナー)
・インテル(アドバンスト・マイクロ・デバイス=AMD)
・マイクロソフト(アップル)
・フログレッシブ保険(セーフコ保険)
・サウスウエスト航空(パシフィック・サウスウエスト航空=PSA)
・ストライカー(米国外科コーポレーション=USSC)
なお今回は、調査期間が創業時から2002年までであったために、ジョブズ復帰後急回復したアップルは、マイクロソフトの比較対象企業となっていますが、この本の中では「第4章 銃撃に続いて大砲発射」で「アップルの復活」を補足しているそうです。
さて、「10X型企業」の特徴は、「10X型リーダー」、「二〇マイル行進(どんな状況でも同じように進む)」、「銃撃に続いて大砲発射(小さく試してから集中する)」、「SMaCレシピ(具体的で整然とした一貫レシピ)」、「運の利益率(幸運を活用する)」などだそうですが、なかでも「10X型リーダー」として例示された「南極征服を争ったアムンゼンとスコットの物語」と「エベレスト登頂」の二つがすごく印象に残りました。彼ら「10X型リーダー」は、「不可抗力に必ず直面する」「正確に先行きを予測できない」現実を受け入れ、準備をかかさず、規律と情熱をもって対処していく力をもっているようです。このエピソードを読むと、アムンゼンが勝利した理由がよく分かりました(勝たないわけがなかった、とすら思ってしまいました)。
個人的には、この『ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる』も、すごく参考になりました。この本のおかげで、『ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階』を読んだ時には分からなかった「危機的状況への対処法」すら教えてもらえたような気がします。というのも、この本は「不確実でカオスのような時代」に成長している企業の調査分析だからです。
特に「銃撃に続いて大砲発射(小さく試してから集中する)」は、不確実な時代への最良の対処法だと思いました。不確実な時代には、どの銃弾が命中するのか事前には分かりません。だから「10X型企業」は、標的に命中しない銃弾(低コスト)を大量に打つのだそうです。そして命中精度を調整してから、大砲(高コスト)などで集中攻撃を行うのだとか。なるほど……。
そして意外なことに、10X型企業は、比較対象企業よりもイノベーション志向であるとは限らないそうです。ただし、どんな環境下でも、脱落せずに競争し続けるために最低限達成しなければならない「イノベーションの閾値」はあるようですが……。
2016年の現在も、不確実な時代だと感じています。この本は、そんな時代でも成長を続けるための指針を与えてくれそうです。企業経営に興味のある方は、ぜひご一読ください。
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コリンズさんの他の本、『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』、『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』に関する記事もごらんください。
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コリンズさんは、他にも、「営利」「非営利」という範疇を超えて真に「偉大な組織」となる条件に関する『ビジョナリーカンパニー【特別編】』などの本を出しています。
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別の作家の本ですが、『その仕事は利益につながっていますか?―経営数字の「見える化」が社員を変える』、『ハーバード流ボス養成講座―優れたリーダーの3要素』、『逆転!
強敵や逆境に勝てる秘密』など、企業を経営する上で参考になる本は多数あります。
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