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第1部 本

社会

フェルドマン博士の 日本経済最新講義

『フェルドマン博士の 日本経済最新講義』2015/11/21
ロバート・アラン フェルドマン (著), Robert Alan Feldman (原著)


(感想)
 モルガン・スタンレーMUFG証券のチーフエコノミストのフェルドマンさんが、アベノミクス、労働市場、エネルギー政策、少子高齢化社会、地方再生など、日本経済を考える上で主要な事項を分かりやすく解説してくれる本です。
 ただの経済用語の説明に終わらずに、日本経済や社会の現状(問題)へのご本人の提言もまじえて、とても具体的に分かりやすく語ってくれるので、すごく参考になりました。
 例えば「第1章 世界経済と日本」では、日本の第一の強みは「豊かな水と農地」で、日本の今後の成長産業は農業だと言っています。
 ええ? 農業? ……日本の強みは「ITとか製造業」や「おもてなし精神あふれるサービス業」じゃないかと考えていたので、いきなり驚かされました(笑)。
 でも考えてみると……確かに日本の強みは「美しい自然」や「豊かな水」でもあります。そしてフェルドマンさんは、現在の日本の農地の使い方は非効率的なので、むしろプラスになる余地が大いにあると言うのです。なるほど……農業、始めてみた方がいいかな……(笑)。
 そして、日本人として分かっていなければいけないはずの(汗)「アベノミクス」の効果。フェルドマンさんは、これに、「デフレ脱却、財政再建、成長加速という三つの目標に対し、金融政策、財政政策(税・歳出)、構造政策という三つの政策道具をかみあうように利用している」とかなり高い評価を与えています。例えば、最近の海外からの観光客の増加は、2013年から始まった円安の効果の現れだそうです。2015年上期に日本を訪れた外国人は、過去最高だった前年同期から46%も増えて914万人に達したとか。
 さらに、「第4章 働きやすい労働市場にするために」では、「「高齢者の健康寿命を伸ばそう」とよく言われますが、「労働寿命ももっと伸ばそう」ということも必要です。いわゆる「終身現役社会」は正しい概念です。」とか、「第5章 少子高齢化社会の煉獄」では、「喫煙に関しては、いくらタバコの値段を上げても吸う人はいますし、それは自己判断でかまいません。ただし、病気になるリスクが高いとわかっているのですから、みんなと同じ保険料では、吸わない人に対して不公平でしょう。」など、問題解決へのいくつものヒントを与えてくれます。
 でも「第6章 地方再生と教育改革の進め方」での、「もっともラディカルな改革案は、憲法を改正せずに参議院の定数を二人にすることです」という提言は、さすがにちょっと行き過ぎかなーと思わないでもありませんでした(汗)が、確かに「参議院の存在価値って、何だろう」と問い直す必要はありそうな気もします。ただ「参議院」は、衆議院が解散して不在の時に政治的安定を保つために、やはり必要なのではないかと思うので、二人というのは少なすぎだと思いますが……。
 日本人とはちょっと違う、外国人の視点から見た「日本経済」の解説として、すごく参考になる点、考えさせられることが色々ありました。ぜひ読んでみてください。
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 フェルドマンさんは、他にも『フェルドマン式知的生産術 ― 国境、業界を越えて働く人に』、『日本経済 起死回生のストーリー』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、日本の経済を学べる本には、他にも『新・日本経済入門』、『日経ビジネス 日本経済入門』、『池上彰が世界の知性に聞く どうなっている日本経済、世界の危機』など、多数あります。

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