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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
絵本・児童書(海外)
百まいのドレス
『百まいのドレス』2006/3/1
エレナ エスティス (著), ルイス スロボドキン (イラスト), & 3 その他
(感想)
「百枚のドレス」を持っていると言い張る、貧しいポーランド移民の女の子ワンダ。人気者で活発なペギーが先頭に立って、みんなでワンダをからかいます。ペギーの親友マデラインは、よくないことだと感じながら、だまって見ていました…。
いじめ問題を描いたアメリカの児童文学です。広告に「ロングセラー『百まいのきもの』が50年ぶりに生まれかわりました」と書いてあったので、かなり古い作品のようですが、この本に登場する女の子たちの気持ちは、今の私たちにも通じるものが確かにあります。心にじんわり残るほど、とても素晴らしい作品なので、ぜひ読んでみてください。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
セシルが新しい赤いドレスを着てきた天気のよい日、誰もがよい気持ちでいるところで、貧しいポーランド移民の少女ワンダが「百まいのドレス」を持っていると言い出します。その話を信じられず、人気者で活発なペギーが先頭に立って、みんなでワンダをからかい始めるようになります。そんな中、ペギーの親友マデラインは、自分もあまり裕福な家庭で育ってはいないせいか、ワンダの気持ちが分かるような気がして、からかいたくないと内心では思っていました。でも、他の子たちに注意する勇気もなくて、そのうち、そんな気持ちも忘れてしまうのでした……。
物語の主要な登場人物は、人気者のペギー、その親友のマデライン、貧しい少女ワンダです。ペギーは裕福な家庭で育っている人気者。先頭にたってワンダをからかっていますが、彼女にはそれほどの悪気はないようです。いじめていると思ってすらいないのかもしれません。色々な意味で恵まれている彼女には、ワンダの苦しみが、実感として理解できないのでしょう。
そしてマデライン。ほとんどの読者は、彼女に共感を抱くのではないでしょうか(私もです)。ワンダが教室からいなくなったことに、彼女がうしろめたさを感じるのは、ワンダの気持ちが想像できたのに、いじめを止めることが出来なかったから。ワンダがいなくなって、彼女は「ああすれば良かった」「こうしていれば……」と苦しみ始めますが、自分たちの教室に、他の「ワンダ」が来て同じようなことが起こり始めたら、本当に今思っていることを実行できるのでしょうか?
……少しでもいいから、実行して欲しい(実行したい)と思わずにいられません。
物語の中では、急に転校していったワンダに、ペギーとマデラインが手紙を書きます。謝罪の言葉を書きたかったマデラインですが、書いているうちに、ふつうの仲の良い友達同士のような手紙になってしまいました。二人はワンダの引っ越し先がどうしても分からなかったので、転送してもらえるよう前の住所に送ったのです。
そして、クリスマスに、教室宛てにワンダの手紙が届きます。その手紙には……。
手紙を読んで、思わず涙がこぼれました。
とても感動的な物語です。ぜひ読んでみてください。そして、読んだ時に感じた気持ちを忘れないで欲しいと思います。
* * *
エスティスさんは、他にも『元気なモファットきょうだい』、『モファット博物館』などの児童文学を出しています。
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