ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

文学(絵本・児童文学・小説)

絵本・児童書(海外)

ダレン・シャン

『ダレン・シャン』2006/7/15
ダレン・シャン (著), 田口 智子 (イラスト), 橋本 恵 (翻訳)


(感想)
 親友の命を救うために半バンパイア(吸血鬼)になった少年の大長編物語(全12巻)です。
 正直に言うと、この本を「お気に入り」紹介記事で紹介するべきかどうかについて少し迷いました。実は、これらの児童文学の紹介記事を書き始めるまで、この本の存在自体知らなかったのです(汗)が、外国の人気児童文学ということで一応読んでみることにしました。すると……のっけから主人公の少年がペットとして飼っていたのが「クモ!」 そして彼と仲間たちが行きたくてたまらない場所が「シルク・ド・フリーク!」。シルク・ド・フリークというのは「異形の見世物」のことで、要するに「めったにない障害を持った動人間や物に不気味な芸をさせてお金を取る」という、偏見と虐待の塊のような奇怪なサーカスのことです(涙)。 
 こんな児童文学、ダメ!絶対!
 すぐに頭に浮かんだのは、この文句でした。
 でも……読み進むうちに、だんだん考えが変わってきました。
ごんぎつね』のことを思い出したからです。
 読んだことを後悔したほど悲しいあの話が、本当にくれたものは何だったか……。
 児童文学は、愛・勇気・努力などの「ポジティブ」だけで良いのでしょうか? むしろ自分ではできないような「悪」や「ネガティブ」を仮想体験させてくれるという話は、すごく貴重なのではないでしょうか?
 ……人間の心の中には、「善」だけでなく、「悪」も必ずいます。なぜなら「善」だけで生きていけるほど、世の中は甘くないのです。それは、人間の歴史のなかで、いつまでたっても犯罪や戦争がなくならないというという事実に現れているだけではありません。もっと根源的な理由なのだと思います。人間が生きていくためには、何かを食べなければならないのですから。つまり、生存競争のためにも、善・悪の両方が必要なのだと思います(比率は「善」の方が圧倒的に多いと信じていますが……)。
 そういう意味で、子供にとっては、「善」だけでなく、「悪」との付き合い方(他人の「悪」だけでなく、自分の中の「悪」との付き合い方も含めて)を学んでいくことも大切ではないでしょうか。
 そしてそれを学ぶためには、この『ダレン・シャン』は一級品です。
 主人公の「どこにでもいるような」少年ダレン・シャンは、冒頭から「よせ、やめておけ!」と言いたくなる行動を連発します。そして、どんどん絶体絶命な状況へと陥っていきます。
 しかもすべて自業自得なのです。
 そして絶望的な状況の中、ついに彼は親友を救うために、ある決意をするのですが……。
 ……とても複雑な思いです。
 すべて彼自身の行動が導いた結果なので、彼が破滅の道を行くのは当然だ(というより児童文学として、むしろそれ以外の道を行って欲しくありません)と思いながらも、彼の悩みや決断の理由を知っている者としては、彼にも救いがあって欲しいような気がします。
 自業自得とはいえ、彼は、絶望的な状況をもたらした原因を他人のせいにしたり、言い訳したりしません。自分がやったことを「いけないこと」ときちんと認識でき、自分のやったことの責任を取ろうとすることが出来る少年なのです。
 そして彼が自分の人生をかけて救ったはずの親友(バンパイアに「悪魔」と呼ばれるような少年です!)が、今後の最大の敵として立ちはだかってくる予感で終わる、この『ダレン・シャン』、続きを読みたくないはずがありません。ダレン・シャンの生き方を見届けたくなる小説です。
   *   *   *
 シャンさんの他の本、『ダレン・シャン イン ジャパン』に関する記事もごらんください。
   *   *   *
『ダレン・シャン』は、ここで紹介した1巻から、最終巻の12まで出ています(下の商品リンクは文庫版ですが、単行本の形でも出ています)。また外伝もあります。単行本の13冊セットには外伝が含まれていますが、文庫本の12冊セットには外伝が含まれていませんのでご注意ください。とても読み応えのあるシリーズですので、ぜひ全巻読んでください。(『ダレン・シャン I-奇怪なサーカス-』『ダレン・シャン II-若きバンパイア-』『ダレン・シャン III-バンパイア・クリスマス-』『ダレン・シャン IV-バンパイア・マウンテン-』『ダレン・シャン V-バンパイアの試練-』『ダレン・シャン VI-バンパイアの運命-』『ダレン・シャン VII-黄昏のハンター-』『ダレン・シャン VIII-真夜中の同志-』『ダレン・シャン IX-夜明けの覇者-』『ダレン・シャン X-精霊の湖-』『ダレン・シャン XI-闇の帝王-』『ダレン・シャン XII-運命の息子-』、『ダレン・シャン 外伝』)
 またダレン・シャン前史として、『ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説 1 殺人者の誕生』『ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説 2 死への航海』『ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説 3 呪われた宮殿』『ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説〈4〉運命の兄弟』の4冊もあります。
 さらに映画化もされていて、『ダレン・シャン~若きバンパイアと奇怪なサーカス~』のようなDVDも発売されています。

Amazon商品リンク

興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが新しいウィンドウで開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)