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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
絵本・児童書(海外)
たのしいムーミン一家
『新装版 たのしいムーミン一家』2011/4/15
トーベ・ヤンソン (著), 山室 静 (翻訳)
(感想)
TVアニメなどでも人気のムーミン☆ 国際アンデルセン大賞受賞のヤンソンが描く、白夜のムーミン谷のファンタジー童話ですが、この本はそのシリーズの3作目の本です。シリーズ中で最も人気が高く、はじめて読む人にもお勧めです。というのも、1作目の『小さなトロールと大きな洪水(1945)』と、2作目の『ムーミン谷の彗星(1946)』は、書かれた時期が第二次世界大戦ごろという悲惨な時代背景のせいか、不安な暗い影が物語世界を覆っているのですが、この『たのしいムーミン一家(1948)』になると、作者の気持ちが大きく変化したのか、物語全体が暖かいユーモアに包まれてくるからです。
この物語は、長い冬眠からさめたムーミントロールと仲よしのスナフキンとスニフが、海べりの山の頂上で黒い帽子を発見するところから始まります。ムーミンは何気なくそれを家に持ち帰ってしまうのですが、実はそれは、ものの形をかえてしまう魔法の帽子だったのでした……。
こうして次々と、不思議な事件が起こっていきます。
全七章からなる連作形式の長編小説で、一章ごとに短い物語があり、ムーミンと楽しい家族や仲間たちが、さまざまな冒険や騒動を起こしていきます。これらの話は、一章ごとに一応まとまるのですが、物語の随所であの不思議な帽子が関わってくるので、黒いぼうしの正体は何なのか? ムーミンたちはこれからどうなっていくのか? と興味を駆り立てられて先を読まずにはいられなくなります。
スナフキン、スニフ、スノークのお嬢さん、ヘムレンさん、ニョロニョロなど、おなじみのキャラクターも活躍します。シリーズの3作目のせいか、これらの登場人物への詳細説明は意外に少ないのですが、ユーモラスな挿絵の助けもあり、会話や動作で各登場人物の性格が把握できるので、むしろテンポよく話が進んでいくような感じがします☆
子供向けの作品のわりには、単純な好人物だけが登場してくるわけではなく、軽率な行動や、我儘な発言や皮肉なども多いので、笑えるだけでなく、架空生物(?)たちのヘンテコなファンタジー世界なのに、すごく現実的な感じがして、物語が身近に感じられます。このキャラクターと読者の絶妙な距離感も、作品の人気の秘密の一つかもしれません。
そして物語の最後に、あの不思議な帽子は……。
楽しくて暖かく、ちょっぴり不条理で、ユーモアに溢れている、とても素敵な作品です☆
* * *
『たのしいムーミン一家』の他、このシリーズは、講談社文庫で、『小さなトロールと大きな洪水』、『ムーミン谷の彗星』、『ムーミンパパの思い出』、『ムーミン谷の夏まつり』、『ムーミン谷の冬』、『ムーミン谷の仲間たち』、『ムーミンパパ海へ行く』、『ムーミン谷の十一月』の8作品が出ています。
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