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第1部 本

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ピーター・パンとウェンディ

『ピーター・パンとウェンディ』2015/4/30
J.M. バリー (著), James Matthew Barrie (原著)


(感想)
 大人にならない少年ピーター・パンに誘われて、ウェンディたち三人の姉弟が、子供の理想郷「ネヴァーランド」へ飛び立ちます。そして妖精や海賊、インディアンが待ち受ける世界での楽しい冒険が始まるのです。
 この世界中で愛されるようになるピーター・パンが初めて登場するのは、著者のバリーさんが42歳の時に発表した幻想的な小説『小さな白い鳥』の中でした。この小説では、人間の子供は、みんな元は小鳥で、卵からかえってしばらくすると、飛んでいって子供になる(!)のですが、二、三週間もたつうちに飛ぶことを忘れてしまうそうです。でも、ピーター・パンは生まれて七日目に窓から飛び出して、小鳥や妖精たちの間で気ままに楽しく暮らし始めました……。
 そして、この小説の一部をもとにして戯曲『ピーター・パン――大人になりたがらなかった少年』が書かれ、クリスマス劇として大成功をおさめました。物語の中で、死にかけた妖精ティンカ・ベルが元気を取り戻す方法は反則技だと思ったけど、戯曲なら、すごく効果的な演出だと納得しました。
 バリーさんはその後、この戯曲を物語の形に書き直して1911年に発表したのですが、それがこの物語です。なんと100年以上も昔の物語ですが、今でも楽しく読むことが出来ます。
(ここからネタバレがありますので、知りたくない方は読み飛ばしてください。)
 今回この本を読み直してみて、むかし自分が読んだ『ピーター・パン』にはなかった話が、かなりありました(たぶん子供向けに短縮したのを読んだのでしょう。覚えていないだけかもしれませんが……)。
 例えば、お父さんのダーリング氏には、薬を飲むのをごまかそうとするなど、そうとう子供っぽい部分があること、最後に家に戻ってくるのは、三人の姉弟だけではなかったこと、話はウェンディが大人になるまで続いていたこと……。こういう意外だった点を含め、とても面白く読めました☆
 なかでも一番楽しかったのは、もちろん妖精と一緒に空を飛ぶこと! それ以外にも、森の中のツリーハウスで暮らすこと、海賊やインディアンとの死闘など、スリリングな冒険にもわくわくさせられました。とくに、眠っているピーター・パンのところに海賊フックが忍び寄ってくるところからのハラハラする展開は、結末を知っているのに、どきどきしながら一気に読んでしまいました。
 子供なら絶対に楽しめるお話です。
 そして大人の自分にとっても、意外な発見があって楽しめました。
 ネヴァーランドは、子供の心の中にある理想の国が具現化された存在であることが示唆されていたこと。
 そして、ピーターと子供たちが遊ぶ様子は、「そう、子供の時はそうだったなあ」と懐かしくなるほど、わけのわからないルールがあって、でたらめなこと。リーダーの気まぐれに振り回されたのを思い出しました……(おとなしい子供だったので、もちろん振り回された側でした(笑))。これを書いたときバリーさんは40代でしたが、知人の子供の男の子たちと、公園で妖精ごっこをして遊んでいたそうです(笑)。その経験と少年時代の記憶が、この物語に活かされているのでしょう。
 それから、ダーリング氏には(夫人にも)、子供っぽい面がすごく残っていて、一方、子供のウェンディには大人っぽい部分がかなりあって、大人も子供も実はあまり変わらないように描写されていたこと。特に、ウェンディは完璧なお母さんを演じることが出来て、ほとんど母親と変わらないこと(ちびの弟マイクルなんかは、自分とあまり年が違わないはずの姉を、本当の母親と思いかけていたほどでした)。
 他にも色々なことを考えました。ウェンディは「姉」だったから「みんなのお母さん」になれたのかな(いままでも弟たちの面倒をみてきたでしょうから)。男女の役割が変容しつつある現代に、もし同じ年頃の兄妹のところにピーター・パンが訪れたら、ピーターはどっちをお母さんにしようとするのかな(たぶん妹の方なのだろうけど、実際には、兄の方が妹の面倒をみているので、「お母さんの役割」を演じやすいような……)。
 そして……この物語を読んだとき、空を飛んでみたいとは思ったけど、本当に飛べるとまで思ったかどうかは思い出せませんでした。外国の話だったし……。でも、妖精にはずっと元気でいて欲しいので、「妖精は信じます!」……ねっ☆ティンカ・ベル☆
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 この本を原作としたサブダさんの素敵なしかけ絵本『Peter Pan(ピーター・パン)』に関する記事もごらんください。
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 古典的名作のピーター・パンは何度も映画化、アニメ化、舞台化されています。
 アニメの『ピーター・パン&ピーター・パン2 2-Movie Collection』は、素晴らしいディズニー映画。また『ピーター・パン』は、VFXを駆使した驚きのファンタジー映像を駆使した映画です。以下では、どちらもBlu-rayを紹介します。

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