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第1部 本
文学(絵本・児童文学・小説)
絵本・児童書(日本)
ぼくらのサイテーの夏
『ぼくらのサイテーの夏 (講談社文庫)』2005/2/15
笹生 陽子 (著)
(感想)
小学6年生の少年たちの、ひと夏の物語です☆
友情、家族、社会などを少年の目線から描いた作品で、作者の笹生さんのデビュー作。第30回日本児童文学者協会新人賞と第26回児童文芸新人賞をダブル受賞しています。
主人公の少年は、ちょっと無鉄砲なところのある桃井。夏休み前の1学期の終業式の日、ぼく(桃井)は、スカしたのっぽの栗田に「階段落ち」の勝負で負けてしまいます。負けずぎらいの桃井は思わず逆上してしまい、階段から転げ落ちてケガをしただけでなく、夏休みのプール掃除の罰まで下されてしまうのです。
ところが一緒に罰を受けた友達がプール掃除を嫌がったので、桃井はムキになって「一人でやる」と宣言しました。すると、あの栗田が、「ケガをしている桃井くん一人では大変そうだから」と、一緒にプール掃除をしてくれることになるのです。
……よりによって、あのムカつく栗田と二人きりでプール掃除とは……。
桃井のサイテーの夏は、こうして始まります。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
この冒頭の話やタイトルからも想像できるように、いろいろあって桃井と栗田はとても仲良しになるのですが(汗……いきなりネタばれでゴメンナサイ)、その経過描写がとても素晴らしいです。
たくさんの友達といつもつるんでいる桃井と違って、栗田の方はいつも一匹狼で、小学六年生とは思えないほど落ち着いた少年なのですが、桃井の友達の樺山の調査によると、栗田は、家庭が崩壊したネズミだらけの家に住んでいるようで、いろいろ問題を抱えているようなのです。
でも実は、桃井の家にも問題がありました。一年前までは普通の幸せ家族だったのですが、とびきりの秀才で家族の星だった長男の兄が、合格した有名私立に遠距離通学を始めてから半年で、突然、ひきこもり&家庭内暴力を起こすようになったのです。桃井は友人たちには、そのことを隠していました……。
このように、栗田も桃井も、小学六年生には荷が重いような家庭環境で生きています。でも二人ともへこたれません。いつも兄への劣等感を抱いていた桃井は、家庭内での地位の逆転を感じて、むしろいいこともあるとすら思っています。うーん、健全なプラス思考の少年だねえ、エライ☆
桃井と兄や両親との関係、ムカつく栗田との関係、いつもつるんでいた友人たちとの関係……桃井の周囲は少しずつ変わっていきます。
……すごくイイ話なので、こうして感想を書いているうちに、ついネタばれしそうになってしまいます、が、それは我慢ガマン。ぜひとも自分で読んでみてください。読み終わった後には爽やかな気持ちが残り、ひと夏でぐんと成長した二人から、ちょっぴり元気をもらえると思います。
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笹生さんには、他にも『楽園のつくりかた』、『家元探偵マスノくん』、『世界がぼくを笑っても』、『空色バトン』、『きのう、火星に行った。』などの本があります。
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