ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)

第1部 本

動く&錯視錯覚の本

だまし工芸

柴田 是真

『柴田 是真』2009/11
安村敏信 (著)


(感想)
 柴田是真さんは、幕末から明治にかけて活躍した漆の職人です。それもとんでもない超絶技巧の持ち主で、漆を駆使して高度な工芸品や絵画を創り出しています。
 ところで日本(Japan)を小文字で書くjapanが「漆器」を意味する単語であるということが端的に示しているように、漆器は日本の特産品だと世界で認められていますが、この柴田是真さんの作品を見ると、それも当然のことに思えます。蒔絵の重箱などを手に取ってみれば、それが高度な技法で作成されているものだということが、誰にでも一目で分かります。柴田是真さんの作品は、明治時代にウィーンやパリで開催された万博に数回出品され、当然のように、何度も受賞しています。
 この高度な美術品のいくつかには、超絶技巧に基づいた、だまし絵的な技法も使われています。例えば板橋区立美術館にある『花瓶梅図漆絵』という一見何気なく見える額絵は、その額も紙に描いたもの、紫檀の板に見えるものも実は紫檀塗りという技法、石がはめ込まれているかのように見える部分も漆で描いてあるという、漆絵の最高傑作だそうです。他にも、どう見ても鉄器の茶釜にしか見えない工芸品も実は漆で出来ているとか、その超絶技巧っぷりには、本当にため息が出るばかりです。
 また素晴らしいのはその技巧だけではありません。『芭蕉蒔絵提重』や『烏鷺蒔絵菓子器』などに見られる洗練されたデザイン性、『鬼女図額面』のダイナミックさ、『鯉図屏風』のユーモラスなのびやかさなど、その繊細かつ大胆な作品群は、あらゆる面で驚きや美的喜びを感じさせてくれます。
 この本は柴田是真さんの作品を総合的に収録しているだけでなく、それに駆使された漆工芸技法の丁寧な写真解説もあり、とても参考になる本です。お勧めです☆
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 柴田是真さんの本としては、他に、『東京藝術大学大学美術館所蔵 柴田是真の植物図 (趣)』などがあります。
 また、別の作家の本ですが、『アールヌーヴォーに影響を与えた幕末・明治の金工』、『木目金(もくめがね)の教科書 TEXTBOOK OF MOKUMEGANE』、『別冊緑青 11 自在置物 JIZAI OKIMONO』、『もっと知りたいエミール・ガレ―生涯と作品』、『もっと知りたいルネ・ラリック 生涯と作品』、『In The Garden 中嶋邦夫エマイユジュエリー』なども、素晴らしい工芸作品や技法を知ることができる本です。

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