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第1部 本

社会

デジタル社会の歩き方(竹田ダニエル)

『デジタル社会の歩き方』2026/8/20
竹田 ダニエル (著)


(感想)
「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞した竹田さんが、気づかないうちに変わってしまったデジタル社会のリアルを読み解いている、「群像」の人気連載エッセイを書籍化した本で、ニュース解説メディア『The HEADLINE』編集長・石田健さんとの特別対談「「正しい情報」を得るにはどうしたら良いのか?」も巻末に収録しています。
「はじめに」には、現在のSNSについて……
「(前略)企業の収益構造や政治的意図がプラットフォームに組み込まれ、その中で市民の発言や行動が誘導され、さらには政治権力によって監視される側面が強まってしまった。
 同時に、「何が本物か」が分かりにくくなっている。ディープフェイクや生成AIの普及によって、情報の信頼性は大幅に揺らいでいる。正しい情報にアクセスすること自体が難しくなり、SNSに触れることが疲労の原因になることから、ニュースを見ないようにしたり、SNSをほとんど使わなくなっている人も増えている。」
 ……と書いてありました。
 そして「1 インターネットで生活はどう変わったのか?」では、「コロナパンデミック」によるロックダウンが私たちの生活を大きく変えてしまったこと、とりわけ若いZ世代の価値観には大きな違いが生まれたという指摘が、とても印象的でした。
 竹田さんは……
「Z世代の価値観を構築する大きな要素に「コロナパンデミックを若い頃に経験している」というものが挙げられるが、まさにロックダウンを成長過程のどのタイミングで経験したのかによって、その後の社交性や他者との関わり方が大幅に変わることを、教育の現場で実感した。」
 ……と語っていて、Z世代を「Z世代1.0(新型コロナパンデミック以前に高校を卒業した世代)」と「Z世代2.0」に分ける考え方を紹介しています。Z世代2.0は……
「一方のZ世代2.0は、TikTokやAIツールが日常に組み込まれ、SNSが当たり前の世界で育った「常に繋がっている」ことが普通の状態であり、オンラインの人格が自己の一部として形成され、アルゴリズムに最初から包まれた状態で社会を理解している。」
 ……Z世代2.0はそれ以前とは価値観が大きく違っているようで、今や、世代の分け方が、社会的な区分というよりも、文化的・経済的なリアリティを反映するマーケティング上のフレームとして機能しつつあると指摘しています。
 またSNSについても、かつては知らない誰かとの間との共感や新しい考えの獲得がSNSの楽しみだったのですが……
「(前略)最近は、投稿してもアルゴリズムに埋もれてしまい、炎上を狙うもの、過剰な反応を誘うものばかりが目立ち、善意で書いた文章が全く意図していない文脈での論争の種になってしまうことが増えた。いかにして「目立てるか」「波風が立つか」「効率的に攻略できるか」ばかりが優先する場になっており、もはや自分にとっては投稿する意味が希薄になってきている。」
   *
 また2026年は「アナログの年」として、編み物や楽器演奏など、アナログな趣味への回帰が起こってきているとも言っています。
アナログへの回帰が魅力的に映るもう一つの理由としては、SNSの「カス化」もあげられるそうです。このSNSの「カス化」については、「2 AIは仕事と教育をどう変えるのか?」でも、生成AIを活用して大量のコンテンツが簡単に作成される状況になったことで……
「SNSでは、AIが生成する、画一的かつ溢れ過ぎて「ゴミ」のような存在になっているコンテンツを「AIスロップ(残飯、汚い泥)」と呼ぶ動きが広がっている。」
 ……そしてショート動画や意味のないミームを延々と見続ける行為「ブレインロット(脳の腐食)」が発生し、「脳が腐ることで更にAIスロップを求め、AIスロップが増えるから脳が更に腐る」というループが完成してしまうという指摘も。
 さらに2025年にOpenAIの画像生成機能で「ジブリ風」が可能になると、イスラエル国防軍が自国兵士の画像をジブリ風に加工するなど、さまざまなジブリ風映像が多数投稿されるようになりましたが、「温かさ」「懐かしさ」「美しさ」のあるジブリのアートスタイルが、暴力的な政治政策が結び付けられることへの恐怖と衝撃もSNS上で高まりました。そしてAIを使用して、著名なアーティストやスタジオのスタイルを模倣したアート作品を制作することについて、さまざまな問題が浮き彫りになりましたが……
「(前略)クリエイティブ産業にAI生成コンテンツが引き起こす事態に対処するための法的枠組みがほとんど存在していないことの問題性と、各国が法律を整備することの必要性を明らかにした。」
 ……確かに。これは本当に法整備が必要な問題だと思います。
またAIチャットボット(AIコンパニオン)についても、それを利用している人は増えていますが……
・「(前略)彼らにとってAIチャットボットは、匿名性と無限の受容を併せ持つ「無条件に自分を受け入れてくれる対話相手」である。しかし、その「無条件」こそが危険をはらんでいる。(中略)ユーザーが望む言葉や感情を鏡のように映し出す仕組みが、ユーザーに「自分を理解してくれている」という錯覚を与え、依存を深めやすい構造になっているのだ。」
・「(前略)テック企業の利益のために「孤独」を餌にされた挙句、今度はAIチャットボットが「孤独を解消してくれる」と謳われているのである。現実の友人よりもAIのほうが「安全」「信頼できる」と感じられる社会というのは、他者との摩擦を回避する傾向が強まっている社会でもある。」
 ……うーん……AIチャットボットは、精神的な問題の治療に役立つ側面も大いにあると考えてはいますが、ここで指摘されている通り、その逆にも働く「諸刃の剣」ですね……。
 そして最後の「おわりに」の次の言葉にも、とても考えさせられました。
「特に問題に感じるのは、「発言」が過剰な意味を持たされることだ。本来、人間の意見や感情は揺れ動くものであり、文脈やタイミングによっても変化する。しかしSNSでは、一つの投稿が切り取られ、極端に単純化され、人格全体の証明に扱われる。しかも現在のプラットフォーム構造は、対話よりも対立の方が拡散されやすい。(中略)
 その結果、「言いたいことを言う」「リアルを見せる」という行為そのものが、以前より遥かに高リスクになった。実際、現在のSNSで積極的に発信を続けられるのは、「誰に何を言われても全く気にならない」「炎上すら注目として楽しめる」タイプのメンタルを持った人に偏りつつある。逆に、誠実に対話しようとする人、相手を傷つけたくないと考える人ほど消耗していく。結果として、良心的な人々がプラットフォームから離れ、さらに悪意と敵対心が濃縮された環境が出来上がっていく。」
 ……私自身も、最近のSNSにはニュース記事が減っている一方で「驚かされるような小ネタ」だけが増えている印象を抱いていて……面白いとは思いますが、眺めていても特に何かのためになるわけでもなく、SNSで得られる有益な情報は減ったのだなと判断して離れ始めていたのですが、私だけではなく、世界的にそういう傾向があるのかもしれません。
『デジタル社会の歩き方』……正直に言うと、このタイトルを見たときには、「インターネット犯罪にまきこまれないための方法」や「偽情報の見分け方」などを教えてくれる本だと期待してしまったのですが、そういうノウハウ的なアドバイスは特になく、主にアメリカのデジタル社会の現状を語っているエッセイ本でした。
 それでも、日本より少し先を行っている(のかもしれない)アメリカのデジタル社会を知ることができて、とても参考になり、また考えさせられることも多かったと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『デジタル社会の歩き方』