ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
脳&心理&人工知能
脳のなかの免疫、免疫のなかの心(ライマン)
『脳のなかの免疫、免疫のなかの心』2026/2/18
モンティ・ライマン (原著), 塩﨑香織 (翻訳), 佐々木拓哉 (解説)

(感想)
「免疫」は従来、単に病原を排除するしくみと捉えられがちでしたし、脳は「血液脳関門」があるせいで、免疫が関わることのできない臓器と見なされてきました。ところが、いまや脳(心)と免疫系の<対話>のルートが発見され、脳が身体の内部を知覚する「内受容感覚」の研究も進んだことで、脳が免疫系と絶えず情報をやりとりして、協働で心身の健康を形作っていることが分かってきました……それを紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
本書を読んでいただく前に
プロローグ
第I部 開かれた心
第1章 二つの系の物語
神経内科学と免疫学がどのように成長し、どのように疎遠になったのか
第2章 壁にあいた抜け穴
見えない解剖学的構造と隠れた生理機能が医学をどう変えつつあるか
第3章 病気シックの感覚センス
心が免疫防御の一部をなすとはどういうことか
第4章 スーパーシステムの物語
心と身体と世界の新しい見方
第5章 微生物に操られる
腸に宿る無数の細菌がいかに選択や気分、行動に影響を及ぼすか
第II部 万物がばらばらになる
第6章 友軍砲火
免疫系がおかしくなったとき
第7章 心が炎症を起こす
炎症と抑うつ状態
第8章 思考が火をつける
心が免疫に影響するしくみ
第9章 無主の地
第10章 戦いの代償
慢性炎症とそれがもたらすもの
第III部 防御のシステムを再構築する
第11章 抗炎症生活
第12章 食べる
第13章 遊ぶ
第14章 好きになる
謝辞
脳-免疫の複雑な関係に向き合う科学(佐々木拓哉)
参考文献
索引
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「プロローグ」には次のように書いてありました。
・「本書では、免疫と心の結びつきの強さを解明している最新の科学を紹介し、そこに異常が生じると何が起こるか、さらに、その知見は心身の健康にどう役立てられるかを探っていく。」
・「(前略)私は本書で次のようなことを主張したい。私たちの心と免疫系は、単にリンクしているのみならず、同じシステムの一部を構成しているとみなすことができる。(中略)免疫系と脳(心)は力を合わせて敵味方を識別し、敵と認めればふさわしい戦いを仕掛ける。(中略)この立場にたてば、免疫系がこうもしばしば思考や感情に影響を及ぼす理由はもちろん、心理的ストレスとトラウマが身体の免疫部隊に打撃を与える理由も説明できる。この防御システムに関する知見は、健康をめぐる私たちの理解に革命をもたらすだけでなく、病気に対する見方や治療法もきっと変えるはずだ。」
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これまで医学では「身体の不調と心の不調は別物」と考えられてきましたが、それはデカルトが唱えた心身二元論の概念の檻にとらわれてきたからだそうです。
ところが脳(神経系)と身体は、双方向に影響し合っていることが分かってきました。
・「(前略)脳は髄膜に存在する免疫細胞の一群に取り囲まれているばかりではなく、それ自体に特殊な免疫細胞がいっぱいに詰まっている。さまざまな研究により、脳は全身の免疫系と連絡を取り合っていることが明白になりつつある。このコミュニケーションの信号は、たくさんの異なるチャネルを介して、双方向に――身体から脳へ、脳から身体へと――伝達される。」
・「(前略)今日、脳が免疫器官であることは明白で、しかもこの言い方は決して言いすぎではない。脳は身体の免疫部隊と複数の連絡線を保ち、頭蓋骨と髄膜に強力な免疫の駐屯地を構え、ミクログリアという独自の特殊傭兵部隊まで抱えている。脳と免疫系とは、リンパ管と血管、そして神経によって一つにつながっている。また、両者は同じ言葉を話している。同じひとつのシステムとさえ言えそうだ。」
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また「第5章 微生物に操られる」では、腸に宿る無数の細菌(マイクロバイオーム)がいかに選択や気分、行動に影響を及ぼすかが詳しく紹介されていました。2022年に発表された2つの研究によると……
「(前略)マイクロバイオームと神経系のコミュニケーションが双方向性のものであることに疑いの余地はない。その研究では、腸内で痛みを感知するニューロンは腸内細菌が産生した分子を検出できるばかりか、周囲に存在する細菌の種類を増減させる分子を産生し、マイクロバイオームを調整できることがわかった。微生物由来の分子は、腸内膜中に存在する内分泌細胞(「腸管内分泌細胞」という)を刺激して、さまざまなホルモンを産生させることもできる。これらのホルモンは迷走神経・脳と相互に作用し、空腹感や何を食べるかの選択を左右する。なお、微生物が産生する分子の中でも短鎖脂肪酸(SCFA)は、脳と直接やりとりすることができる。さらに、腸内微生物には、脳の機能に欠かせない神経伝達・神経調整物質――セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、γ―アミノ酪酸(GABA)など――の前駆体を合成する能力もある。そして言うまでもないが、腸マイクロバイオームと全身の免疫系は親密な関係にあり、そこで生じたさざ波がサイトカインや免疫細胞の形で脳に達するということも考えられる。」
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さらに「第6章 友軍砲火」では、精神病と思われていた病気が、免疫治療で全快できた事例などが紹介されていました。
「(前略)明らかに自己免疫疾患に位置づけられる精神病はまれに見られるが、それらを別にすれば、精神性障害と自己免疫疾患は両方とも、感染症、腸マイクロバイオームのアンバランス、そして遺伝的な感受性がリスク要因として組み合わさり、最終的に慢性炎症が生じたことがベースになっているように思われる。」
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そして嬉しいことに本書では、「第III部 防御のシステムを再構築する」で、心身を健康にするための方法も教えてもらえます。その概要は……
「全般的に見て、免疫系とマイクロバイオームの健康改善は実際のところ心の状態を改善する介入であることが、圧倒的な量のデータによって立証されている。この三つはひとつのシステムを構成しているからだ。意欲や気分を高め、メンタル面の回復力を養う最善の方法は、植物中心の多様な食生活・楽しめる運動習慣・爽快な睡眠を通して、防衛のシステムを徐々に鍛えることである。ここで回復力というと、精神的な領域に属するもの、事実上本人の性格の反映だと考えられがちだが、心理的な回復力(レジリエンス)は免疫系と深い関係がある。」
……この他、マインドフルネスなども紹介されていました。
『脳のなかの免疫、免疫のなかの心』……身体の病気は「病院」に、精神の病気は「精神病院」に行くことが当たり前になっているように、これまで身体の不調と心の不調は別々なものだと考えられてきましたが……考えてみたら、これらは本来、密接に繋がっているもののはずだよなーと、むしろ切り離されてきた方が不思議に思えてきました。
しかも食事・運動・睡眠という一般的な健康生活で腸内細菌を良好に保つことが、身体の健康だけでなく、心の健康にも役立つことを知って、とても嬉しくなりました(すでに実行中なので)。
身体と脳の「免疫系」を学べて勉強になるだけでなく、心身の健康を保つための方法も具体的に教えてもらえる本なので、みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『脳のなかの免疫、免疫のなかの心』