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第1部 本

脳&心理&人工知能

脳は世界をどう構築しているのか(毛内拡)

『脳は世界をどう構築しているのか: 24時間、一生、そして未来を読み解く脳科学 (河出新書 101)』2026/5/26
毛内 拡 (著)


(感想)
 朝の目覚めから夜の眠りまでの24時間を追体験し、やがて胎児期から老年期に至るまでの人生の旅を歩み、さらに文明の歴史とともに紡がれてきた脳の歴史をたどる脳科学の本で、主な内容は次の通りです。
はじめに
第1章 一日でわかる! 脳が動く24時間
シーン1 目覚めと覚醒
シーン2 朝食と脳のエネルギー供給
シーン3 通勤・通学中の脳の働き
シーン4 仕事や学習における集中と注意力
シーン5 意思決定と問題解決の脳内プロセス
シーン6 ランチタイムの脳の働きと消化の関係
シーン7 午後のスランプ
シーン8 創造性とリラックスの関係
シーン9 夕方の脳
シーン10 運動と脳の活性化
シーン11 夜のリラックスタイム
シーン12 睡眠中の脳
第2章 脳の一生──成長と変化の旅
ステージ1 胎児期
ステージ2 出生
ステージ3 幼児期
ステージ4 児童期
ステージ5 思春期
ステージ6 青年期
ステージ7 成人期
ステージ8 ストレスと脳の変化
ステージ9 加齢とともに変わる脳
ステージ10 シニア期
ステージ11 脳の老化と可塑性
ステージ12 終末期
第3章 脳の進化──文明の夜明けから現在までの歩み
エイジ1 農耕革命
エイジ2 言語の発展と抽象思考の基盤
エイジ3 文章の誕生と知識の外部記憶装置
エイジ4 都市文明の形成と環境適応
エイジ5 宗教と信仰の役割
エイジ6 古代文明の発展と知識のシステム化
エイジ7 ギリシャ・ローマ時代
エイジ8 中世
エイジ9 ルネサンス
エイジ10 科学革命
エイジ11 啓蒙時代
エイジ12 脳科学の黎明期
第4章 未来の脳科学──限界を超える可能性
ビジョン1 人工意識の創造
ビジョン2 冬眠技術(コールドスリープ)と脳の保護
ビジョン3 テレパシーの現実化
ビジョン4 ロボットと脳の融合
ビジョン5 仮想現実(VR)とメタバースの中の脳
ビジョン6 テーラーメード医療
ビジョン7 脳移植
ビジョン8 分散する脳
ビジョン9 脳と霊的なもの
ビジョン10 脳科学と仏教の融合
ビジョン11 拡張された脳と社会
ビジョン12 脳の無限の可能性
おわりに
   *
「第1章 一日でわかる! 脳が動く24時間」では、目覚めてからの一日の間に脳がどう働いているか、朝に目覚めると何が起きるか、昼に眠くなったり夕方にスランプが起きたりするのは何故かなどが、科学的に解説されていました。
例えば、「シーン5 意思決定と問題解決の脳内プロセス」では……
「あなたの脳が意思決定や問題解決を行うとき、実際には複数の領域が精密な連携を取りながら動いている。まず、前頭前野が目的や優先順位を設定し、意思決定の「司令塔」として機能する。続いて海馬が過去の経験や関連情報を引き出し、それらを照合して選択肢を絞り込んでいく。一方、大脳基底核はあなたがこれまで繰り返してきた行動パターンや、報酬予測にもとづいて、自然に身体が反応するような選択を促す。」
   *
 また「シーン10 運動と脳の活性化」では……
「運動を始めると、脳の中ではさまざまな変化が起き始める。ランニングやウォーキング、ヨガなど種類を問わず身体を動かすことで、セロトニンやドーパミン、エンドルフィンといった神経伝達物質が脳内で分泌される。セロトニンは気分の安定に、ドーパミンは意欲や報酬感に、エンドルフィンは幸福感や鎮痛作用に深く関わっているため、運動後に感じる爽快感や充実感は、まさにこれらの脳内物質が生み出す効果だと言える。(中略)
 また、運動により血流が促進されると、脳にも新鮮な酸素や栄養素が効率よく届けられるようになる。」
   *
 そして「シーン12 睡眠中の脳」では……
「記憶システムとの関連で見ると、ノンレム睡眠(特にN2・N3)は陳述記憶(エピソードや知識)の定着を強め、レム睡眠は情動記憶や手続き記憶(技能)の再処理に寄与するとされる。さらに「シナプス恒常性仮説」によれば、覚醒中に強化されたシナプス結合は睡眠中に、本当に必要なものだけが残る。つまり睡眠は「取捨選択と再構築」の時間であり、忘却と記憶定着のバランスを取る重要な営みなのだ。」
   *
 そして個人的に特に興味津々だったのが、「第2章 脳の一生──成長と変化の旅」。
 例えば「ステージ2 出生」では……
「出生直後、あなたの脳には毎秒100万を超えるニューロンの新たな接続(シナプス)が形成され始めている。看護師や母親の手があなたの身体を包み、抱き上げられたとき、皮膚の温度受容体が反応し、1秒以内に神経信号が脳へ伝えられる。このとき脳の活動電位の発火率は安静時の約3倍に達し、脳全体のグルコース消費量も10~15%上昇する。これらすべてが、あなたの脳にとって初めての感覚刺激となり、神経回路を一気に動かし始める。」
 また「ステージ3 幼児期」では……
・「幼児期は、脳の可塑性が最も高い時期だ。(中略)生後3歳までに、脳のシナプス密度は成人の約2倍に達し、1秒あたり約150万の新しい接続が形成されている。
 それは単に学習能力が高いというだけではない。「感受期(臨界期)」と呼ばれる特定の発達段階において、脳は外界からの刺激にきわめて敏感になり、特定の機能を効率よく獲得するために一時的に開かれた状態になる。」
・「やがて使われる回路は強化され、使われない回路は静かに削ぎ落されていく。(中略)シナプス密度は2~3歳でピークに達したのち、思春期にかけて約40%が削減される。
 この過程が適切に進むことで、情報処理は洗練され、注意、情動、社会的認知といった機能が最適化される。しかし、この刈り込みのリズムが早すぎたり遅すぎたり、あるいは一部の領域で偏って起こると、神経発達のバランスに影響を及ぼすことがある。」
   *
 さらに児童期、思春期と脳は成長を続け、青年期になると……
・「思春期の嵐を抜けると、あなたの脳では前頭前野を中心とした領域が成熟を迎え始める。論理的に考える力、状況を俯瞰する力、そして衝動を抑え、長期的な視点で計画する力――こうした「実行機能」が飛躍的に発達していく。」
・「この時期、脳の報酬系における活動の焦点が変わる。思春期では他者からの承認(外的報酬)に強く反応していた線条体が、青年期には自己効力感や内的報酬に対してより大きく反応するようになる。」
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 さらに脳が「最適化」されていく成人期を超えて、シニア期になると……
「(前略)ニューロンが年齢とともに減少するのは、確かに自然な生理現象だ。(中略)しかしこれは「失われる」というより、「整理される」現象と考えるべきだ。実際、加齢に伴い神経活動のノイズが約20%減少し、情報伝達の精度が高まることが確認されている。脳は経験を重ねるごとに、不要な経路を手放し、必要な回路だけを丁寧に磨き上げているのである。(中略)
 また、高齢期の脳には若い脳にはない特徴がもう一つある。それは左右の前頭前野がより協調的に働くようになり、情報処理を協調的に補い合うことである。」
 ……そうだったんだ。この時期でも、「社会的交流」と「新しい刺激」を積極的に行うようにすると、脳が活性化するそうです。
 そして「第3章 脳の進化──文明の夜明けから現在までの歩み」では、時代が進むにつれて、私たちの脳がそれに合わせて変化してきたことが書いてありました。
「(前略)文明という外部のしくみが変わるたびに、脳はそれに合わせて神経回路の組み合わせ方を学び直し、より複雑な世界に適応してきた。」
 ……例えば「エイジ4 都市文明の形成と環境適応」では……
「(前略)西洋の都市は「一人で立つ個人」を前提にしたルールを整え、東洋の都市は「関係の網の目」の中で生きる感覚を洗練させていった。」
   *
 そして「エイジ7 ギリシャ・ローマ時代」では……
「西洋の哲学と論理学は、真理と整合性を追求するために「なぜ」と「ゆえに」を鋭く研ぎ澄ませた。東洋の倫理思想は、調和と安定を保つために「なぜ」と「ゆえに」を関係性の中で使いこなすことを求めた。方向性は異なっていても、どちらもあなたの脳に「理由を組み立てる」ことを習慣づけた。」
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『脳は世界をどう構築しているのか: 24時間、一生、そして未来を読み解く脳科学』……私たちの脳が、一日の間どのように働いていて、一生の間どのように成長するのかを教えてくれる本でした。さらに人間の歴史を通じて脳がどのように進化してきたのかや、未来の脳科学まで考察しています。ここで紹介した以外にも、「40歳前後の成人期にも、神経ネットワークの可塑性が一次的に高まる「第二のピーク」がある」とか、「性別を問わず、親になると、脳は再び作り変えられる(育児に関わると前頭前野や視床下部、側坐核の活動が増大し、報酬系と共感ネットワークの結合が強化される)」など、興味深い話題がたくさんありました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『脳は世界をどう構築しているのか』