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第1部 本
工作(紙以外)
鉄道〈超〉技術史 探究読本(富田松雄)
『鉄道〈超〉技術史 探究読本』2025/12/19
富田 松雄 (著)

(感想)
振り子車両、燃料電池車両、防音対策、信号装置、交通系ICカード、自動運転……戦後~平成期における「日本の鉄道を一変させた画期的な技術革新」を分かりやすく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
1章 車両性能を革新した鉄道技術
振り子車両…カーブ通過時の車両の高速化と乗り心地向上を実現
空気バネによる車体傾斜制御…低コストで振り子式に劣らない快適性を確保
2章 快適性を向上させた鉄道技術
可変座席…国鉄が編み出したアイディアが民鉄で花開いた
ユニバーサル車両…多目的室・車椅子スペースの拡大で誰もが快適に過ごせるように
3章 安全性を深化させた鉄道技術
新幹線のATC信号の進化…新幹線開業は信号システムにも革命を起こした
3線軌道用ATC…共用区間の安全確保のために開発された技術
4章 娯楽性を創出した鉄道技術
ジョイフルトレイン…旅行客に「鉄道に乗る楽しみ」を提案した特別仕様車両
展望車の進化…事業者や車種、運行線区により多彩なコンセプトの車両が活躍
5章 利便性に磨きをかけた鉄道技術
自動改札機…数々の難題を飽くなきチャレンジ精神で突破
交通系ICカード…運賃支払いの変革は21世紀とともに始まった
6章 円滑な運行を実現させた鉄道技術
除雪作業の進化…豪雪地帯の鉄道は、雪とどう格闘してきたのか
寝台列車の運用…長くはつづかなかった昼夜兼用車両の栄華
7章 設備の増強に寄与した鉄道技術
荷物輸送事業…見直されつつある貨物列車・荷物列車の利便性
営業車検測…ドクターイエローに代わる新時代の動的設備検測とは
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「1章 車両性能を革新した鉄道技術」から興味津々な記事が満載でした。
最初の項目「振り子車両(カーブ通過時の車両の高速化と乗り心地向上を実現)」では……
「車両が曲線を通過するとき、車両には遠心力により曲線の外側に飛び出そうとする運動が働く。また、車両を支えるレールにはフランジ(レール上を脱輪せずに走行するために、車輪の外周に設けた出っぱり)から発生するレールを押し倒そうとする過大な力が作用し、軌道を破壊する原因にもなる。これが「横圧」と呼ばれるものだ。
遠心力を抑えるには、曲線通過速度を制限するという手段のほかに、「カント」と呼ばれる曲線レールの左右高さに差をつける方法がある。カントは線路の外側レールを内側レールより高い位置に置くことで、遠心力を緩和させるものだ。」
……カーブを安全に回れることと乗り心地を向上させるために、様々な工夫がなされているんですね。そのための最新の技術としては……
・「2020年代に入り、新たな振り子制御として開発されたのが「車上型制御」による方式だ。これは、あらかじめ車両に登録した線路情報をもとに、車両に搭載されている運動を検知するジャイロで実際の走行データを連続して照合して、最適な車体傾斜(振り子動作)を行っている。
また、低周波の左右動揺を抑制し、傾斜速度を考慮した振り子角度の目標値も車上で連続的に計算するため、線形の影響を受けにくい車両となった。振り子の制御はコロやベアリングを用いるものから、即応性に優れた「振り子アクチュエータ」を採用している。」
・「車体傾斜は、制御装置に内臓された加速度センサから得られる左右加速度にもとづいて算出され、傾斜は外軌側の空気ばねの上昇のみで行われている。」
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また蓄電池の利用についても……
「JR各社でのリチウムイオン蓄電池を利用した車両の開発は、2010(平成22)年前後から本格的に始まった。(中略)この車両は、電化区間ではパンタグラフを使用した電車として走行し、蓄電池に充電または回生、非電化区間では蓄電池に充電された電力を走行に充てるシステムを採用している。」
さらに、なんと水素エンジンの開発まで行われているようです。
「水素を燃料電池としてモーターを駆動させる燃料電池鉄道車両の開発とは別に、水素そのものを燃料にする「水素エンジン」の開発も進んでいる。」
また驚いたのが、「環境負荷低減を目指したハイブリッド電気式気動車の登場」の「仙石東北ライン」。
「HB-E300系は観光用車両であったが、2015(平成27)に登場したHB-E210系は一般車両として、東北本線・仙石線を直通する「仙石東北ライン」用の車両として投入された。
仙石東北ラインは交流電化区間の東北本線、直流電化区間の仙石線、松島~高城町間を結ぶ非電化の短絡線から構成されている。列車密度の高い東北本線、そして異なる電化方式の路線は、電車レベルの加速性能をもつハイブリッド電気式気動車にとって格好の活躍の場といえる。」
……なんと直通の路線内で、「交流」「直流」「非電化」に対応しなければならない場所があったんですね……どうして、そんなことに?
さらに鉄道とバスが融合した感じのDMVについても……
「地方交通線区の営業改善が急務だったJR北海道では、2002(平成14)年度からDMV開発に乗り出した。DMVとは「デュアル・モード・ビークル(Dual Mode Vehicle)」の略で、鉄道の線路と一般道路の両方を走れる乗り物だ。(中略)
JR北海道が開発したDMV車両は、マイクロバスをベースにしたものだ。線路を走行するときは車体に格納した前後各1軸の車輪を展開し、前輪をレールから浮かせるスタイルとなる。
ゴムタイヤの後輪はそのままレールに接地する前1軸、後ろ2軸が鉄道モードの形態で、駆動はゴムタイヤ後輪で、鉄車輪はレールから逸脱しないための誘導(案内)に利用する。専用のMIT(モードインターチェンジ)を利用することにより、モードチェンジも短時間で可能になっている。」
……残念ながら、このDMV、2025年現在の営業路線は安佐海岸鉄道のみだそうです。
「2章 快適性を向上させた鉄道技術」では、騒音対策として……
・「車両が発生させる騒音には車輪とレールの間に発生する「転動音」、パンタグラフのスリ板とトロリ線の摩擦で発生する「摺動音(集電音)」、車体と空気との摩擦で発生する「空力音」を主なものとして挙げることができる。
さらに1990年代後半からは、列車の高速化によって、トンネルに進入したときに発生する「トンネル微気圧波」も車両が原因の騒音として取り上げられるようになった。」
・「速度向上への地上設備側対策として、防音壁の嵩上げやレール削正の適正化などが行われたが、大工事となったのはトンネル緩衝工の設置であった。」
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さらに「6章 円滑な運行を実現させた鉄道技術」では、鉄道の自動運転について……
「技術開発の面では、もっともレベルの高いGoA4(完全自動無人運転)もすでに実用化され、新橋~豊洲間を走行する「ゆりかもめ」や神戸新交通「ポートライナー」「六甲ライナー」などの新交通システムで採用されている。とくに「ポートライナー」は1981(昭和56年)に営業運転を開始しており、すでに44年以上の実績をもっている。」
……などの解説がありました。
『鉄道〈超〉技術史 探究読本』……日本の鉄道技術の解説だけでなく、その歴史的経緯も紹介されています。
新しい車両や路線の開発には巨額の費用がかかるため、旧型の車両も耐用年数まで使い続ける必要があり、日本全国にはさまざまなタイプの車両が今も走っていて、それぞれに対応しなければならないんだなーと……現場の苦労も感じてしまいました……。
日本の鉄道が、さまざまな画期的な技術革新を行ってきたことを知ることができて、とても勉強になりました。ここで紹介した以外にも、ATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)やATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)、運転操縦を支援するモニタリング装置など、さまざまな技術が紹介されています。興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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『鉄道〈超〉技術史 探究読本』