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第1部 本
健康&エクササイズ
AIに看取られる日(奥真也)
『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」 (朝日新書)』2025/9/12
奥 真也 (著)
(感想)
画像診断や創薬など、医療にAI技術が導入される流れは今後ますます加速し、診療や介護、さらには看取りの場面でもAIは欠かせない存在となっていきます。かつて人間医師の聖域とされた「対話」「寄り添い」「見守り」といった領域にまでAIやテクノロジーが入り込んでくるとき、医師に残された役割とは何か。そして患者の命の扱われ方はどう変わるのか。また技術変革は人手不足や医療費膨張などの日本の医療問題を解決へ向かわせるのか……これから直面する変化と課題、そしてその打開策を最新研究から論じている本で、主な内容は次の通りです(なお本書は、『未来の医療年表』の続編だそうです)。
序 章 AIに看取られる日
第1章 なぜ「医療にAI」なのか
第2章 患者のビッグデータが治療を変える
第3章 AIだけじゃない! 2035年の医療技術
第4章 AIは医療費問題を解決するか
第5章 これからの人間医師の役割とは何か
第6章 未来の介護と「寄り添い」
第7章 「死ねない時代」の安楽死・再論
*
『AIに看取られる日』というタイトルだったので、看取りに関する話題が中心なのかと思いましたが、副題の「2035年の「医療と介護」」が示すように、近未来の医療と介護現場がどう変わっていくかを総合的に深く考察している本でした。
序章によると……
「現在、すでにさまざまなAIやDXの部品が介護の現場に導入され始めています。」
……ということで、介護ロボット、見守りセンサー、蓄積されたデータからの高齢者の行動パターンのAI分析、遠隔治療やオンライン診療(海外からでも受診可能)などが行われていて、そのうちAIについては……
「AIが医療をどこまで担うのか。私は「全部」だと思っています。」
……またAIには倫理的な課題もありますが……
・「(前略)AIは介護者である人間の負担を劇的に軽減し、人間がより「人間らしい」ケアに集中できる時間と精神的余裕をもたらす大きな可能性を提供します。AIが人に代わってルーティンワークの大部分を担うことで、人間の介護者は利用者の心の声に耳を傾け、個人的な対話を通じて深い関係性を築くことに、これまでより多くの時間を費やせることはとてもよいことだと思われます。」
・「AIが医師や医療従事者の行う日々の診療業務や事務作業を効率化することができるなら、医師らは本来のケアに集中できるようになり、人手不足の一部を補うことができます。AIが医療データを最適化し、無駄をなくすことで、医療費の抑制にも寄与する可能性を秘めています。しかし、同時にAIの導入は、人間社会に新たな格差、断裂を生み出したり、倫理的な議論を深刻化したりする危険性もはらんでいます。」
……今後はAIをうまく医療分野に取り込んでいくことが大事なのでしょう。
さて現在の医療は「診断ガイドライン」に沿って行われているようですが、もちろんこれはAIによる診断の土台にもなっています。しかもガイドラインにない病気も、むしろAIの方がうまく対応できる可能性もあるようです。
「(前略)AIはビッグデータに紐づいて、患者さんの症状と過去の膨大な診療データを照合し、既知の事例を参照して「可能性のある病気」を候補として挙げられます。患者さんが簡単なQ&A形式で十数問の質問に答えるだけで、考えられる病名のリストを提示できるのです。」
……そして、さらに……
「2020年代に登場した、多くの種類の情報をまとめて扱えるマルチモーダルAI診断システムは、「医療の外部記憶化」をさらに進化させました。マルチモーダルシステムは画像(X線画像、CT、MRIなど)、文字情報(電子カルテ、問診記録、介護記録など)、音声(患者さんの咳、呼吸音、心音、お腹の音など)、数値データ(血液検査データ、バイタルデータなど)といった複数の情報源を統合的に分析します。」
……例えば皮膚がんを診断する場合、AIは皮膚がんの診断だけでなく、「ここの境界の不規則性」や「色素沈着のパターン」など、判断の根拠を視覚的に提示できるので、医師はそれを参照して、より精密で迅速な判断が下せるようにもなるそうです。
ただしAIにも誤診はあるはずで、その場合は誰が責任を負うのか? という問題がありますが、それに関しては、自動車の自動運転での責任の取り方が参考になるだろうとのことでした。例えば2024年にイギリスで成立した「自動運転車法」では……
「同法では、自動運転モードで走行している間、ドライバーはその車の挙動に責任を問われることはなく、事故が起きた場合の補償責任は保険会社、ソフトウェア会社、自動車会社などが共同で、一次的には保険会社が負うことが明確化されました。」(免責もあるようですが……)
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また2035年の医療技術としては、次のものが紹介されていました。
・クリスパー:遺伝子のハサミで難病を治す
・CAR-T療法:がんに向かって突進する免疫細胞(身体の中の反応に応じてCAR-T細胞の働きをオン・オフできる「スマートCAR-T」という新しいタイプもある)
・RNA干渉法:病気のスイッチを切る
・遺伝子を使ったワクチン:ウイルスが入れない身体にする
・アルファ線療法:がんをピンポイントでねらう最終兵器
・バイオプリンティング:3Dプリンターで身体の部品を作る
・デジタルツイン:治療を「仮想の自分」で試す
・がんワクチン:自分の免疫をがん専用兵器に育てる
・長寿遺伝子と老化細胞除去:細胞から若返る
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驚いたのが、AIは医療教育制度を変えてしまうかもしれないということ。
「(前略)臨床現場に立つ医師は、広範囲の専門知識をもとに独自の判断で診療するのではなく、まずAI医師の判断と協業し、AI医師の判断を重視して実行する時代が確実にやってきます。
医師の仕事がそう変わる以上、従来のように6年制の医学部教育と最低2年の研修制度で育成する現行制度は必要ないという議論は成り立ちます。育成型の医学部とは異なる別の教育機関を新設し、3~4年で臨床医を育成できるようになるならば、医師不足が叫ばれる現在の状況とは風景が一変します。」
……研究者をめざす医学生だけが、大学院に進む時代が来るのかもしれません。
医療現場を大きく変える可能性のあるAIですが、すでに現場でも活用されているようで……
「2023年以降、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を活用した医療相談サービスが登場し、2024年から2025年にかけて実用段階へ急速に移行しています。これらのサービスは症状の初期評価、一般的な健康相談、慢性疾患の自己管理支援などを提供し、医療アクセスと医療費の両面でプラスの影響をもたらしています。
実際の医療現場における活用は想定以上に進んでいて、2025年時点で医師の25%が診療中にAIを活用しているという調査結果があります。退院サマリーの作成、鑑別診断リストの作成、患者説明文書の生成などの分野で実用化が進み、AI問診システムの導入により初診患者の問診時間が約65%削減されるなど、具体的な効果が実証されています。」
……25%もの医師が、すでに活用中なんですか!
この後は、未来の介護と看取り、さらには安楽死についての話もありました。
ちなみに「看取り」とは、人生の最終段階において、医師をはじめとする医療従事者が適切な情報提供と説明を行ったうえで、どのような処置を本人が望むかについて決定してもらい、その意思に沿う形で苦痛を取り除いたり、尊厳を守ったりすることだそうです。
AIやIT技術の好きな私としては、自分の看取りはむしろAIに任せたくなるかもなーと思ってしまいました。まだ現実感がないからかもしれませんが、休憩も食事も不要で24時間いつも元気でいられるAIに見守ってもらった方が、気楽なような気がします(笑)。
『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』……10年後、日本の病院がどう変わっているかを予測している本で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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『未来の医療年表』