ちょき☆ぱたん お気に入り紹介 (chokipatan.com)
第1部 本
ビジネス・管理&人事
月をめざすチームの働き方(袴田武史)
『月をめざすチームの働き方』2026/5/21
袴田 武史 (著)
(感想)
民間で月面着陸をめざす会社であるispace(アイスペース)のマインドセット、組織づくり、リスク管理、リーダーシップ等を詳しく紹介してくれる本です。
「まえがき」には次のように書いてありました。
「アイスペースの仕事を簡単に説明するなら、最終的なゴールである「人間の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界」の実現に向け、ランダー(月着陸船)やローバー(月面探査車)を開発し、月への高頻度な物質輸送をめざす民間スタートアップ企業、となる。」
……宇宙資源を活用し、地球と月をひとつのエコシステムとすることを目標に活動するispaceは、日・欧・米の3拠点で活動し、社員の約6割が外国籍、国籍は30ヵ国を越えるグローバル企業として、主にペイロードサービス(月への輸送事業)と月面データサービス(データ事業)を事業の中心に据えています。
ispaceは、2023年の「ミッション1」で、当時としては世界初の民間主導の月面着陸に挑戦しました。ところが月面を目前に軟着陸に失敗、ランダーとの通信は途絶えました。
そして2025年、二度目の月面着陸に挑むも、再び失敗。こうして世界中の国から何万人もの人がライブ映像で見守った「ミッション1」と「ミッション2」は、幕を閉じたように見えました……でも、幕は閉じていません。ispaceでは、「ミッション1」「ミッション2」で得たすべてのデータや経験は、今後予定しているミッションに余すことなく生かされます。ispaceの大きな特徴は、複数のミッションを同時並行で走らせ、各ミッションでの成功・失敗を別ミッションに生かすこと……ひとつのミッションが、一面的な結果としては「失敗」だったとしても、「幕は閉じない」のです。
*
そんなispaceの「ビジョン」の一部を紹介すると……
「ispaceは、日本が誇る高品質のモノづくり、また協調的なリーダーシップで世界をリードし、人類の生活を支えていく宇宙規模の生活圏の構築に貢献していきます。地球と月がひとつのエコシステムとなり、地球での生活がより豊かで持続的に発展していく世界を、ともに創りましょう。」
……そしてその組織・働き方の特徴として、「多様性のある人材」を採用しているそうです。次のようにも書いてありました。
「機能するには忍耐が必要だ。短期的には多様性をなくし、同じ価値観や言語の人たちで活動したほうが、効率的で加速できると思うこともある。ただ、自分は多様性によるイノベーションを求め、普通にやっては実現できないことを達成していきたい。」
……また、各自の主体性を引き出すようにもしているようです。
・「(前略)自分で何をするかを導き出してやる場合は、達成すべきレベルも自分自身でイメージし、それに向けて自分でいろいろと工夫できる自由度を得る。その自由度がやる気につながり、達成するために夢中になれる。そういう余白がないと期待以上の成果は出ないのではないかと思う。」
・「(前略)絶えず変化していくなかで、自然発生的に役割分担が起こり、臨機応変に補完できる体制が、この15年の歳月でアイスペースという組織にしみ込んできたのかもしれない。」
・「アイスペースは(中略)一人ひとりがセルフリードし、支え合う働き方、組織になっているのだと思う。」
・「このようなチームの働き方ができるのは、アイスペースの企業文化がベースにある。アイスペースでは、Vision(ビジョン)、Value(バリュー)、Way(ウェイ)を企業文化として明文化している。」
……なおValue(バリュー)には、多様性、リスペクト、インテグリティ(誠実さ)、結果への責任。Way(ウェイ)には、目標を達成するために考えるだけでなく実践的に行動する、周りの人を巻き込みチームの力を最大化する、失敗を恐れずに常に従来のやり方に改善や改革をもたらすことが含まれているそうです。
ispaceは、「宇宙開発という特性上、今はまだ取り組むプロジェクトの成功確率を100パーセントにもっていくのが現実的に困難」な仕事に取り組んでいるので……
「多様な人と働くことの大切さ、資金の重要性、そして絶え間ない状況の変化と、突然起こる予期せぬトラブル。
状況の変化の速さと予期せぬトラブルは、単純に技術開発のみに集中できなくさせる要因だが、他の事業と同様に絶対について回るものであり、だからこそ共にチャレンジする人の大切さ、チャレンジを続けるための資金の重要性が欠かせないものとなる。
そして、一度や二度の失敗で絶対に諦めないこと。宇宙開発という経験値が限られ、未知の部分が大きな仕事において、これは最も重要となる。」
……そのためにispaceは、複数ミッションを並行しているそうです。
「失敗を受け入れ、活かすためにどういう仕組みを作っているかというと、複数ミッションを並行して実行することが基盤になっている。(中略)
ミッション1を実行中に、ミッション2の開発をスタートし、その時点でのミッション1の学びをミッション2に活用し、またその後もミッション1終了までに得られる学びをミッション2に反映し続ける。これを後続のミッションで常に行う。
そうすることで、仮にミッション1が完全に成功しなくても、すぐにミッション2に改善を反映し、検証することができる。」
……これはベンチャー投資家の赤浦さんが、最初にミッション2回分の投資をしてくれたことで始まったようです。
「(前略)赤浦さんとしては、宇宙ミッションはやはり失敗はつきものなので、1回分のみ調達するのはリスクがあり、2回分調達して、仮に1回目が失敗したとしても2回目の挑戦をしている間に次の調達をすることで、会社が継続し続けることが何よりも重要だということを一瞬で見抜いていたのだろう。
技術開発はチャレンジしている限り、どこかで成功するはずであるということだ。」
……これは、宇宙開発のような「成功率が高くない」「未知」の分野での仕事を「継続的に」行っていくための本当に素晴らしい取り組みですね!
ispaceは、「失敗を恐れない」ことも企業文化になっているようです。
・「(前略)結果を見る時は、成功か失敗かの二元論で考えるのではなく、100パーセント成功しなくても80パーセント成功したなら、80パーセントの成功から得られた経験・データをもとに残りの20パーセントを埋めにいくという考え方で、それぞれのミッションと向き合っている。」
・「アイスペースは、各ミッションの「打ち上げ準備」から「月面着陸・探査」までの一連の流れを、10の段階的な目標(マイルストーン)に細分化している。そして、各マイルストーンにそれぞれ具体的な成功の基準(=サクセスクライテリア)を設けている。」
・「アイスペースにはSafty&Product Assuranceという品質保証を担うグループがある。そのグループが中心となり、ミッション毎にLesson Learned(学び)を取りまとめている。エンジニアがミッション中に起こったことで後継ミッションで反映すべきと思うことを品質保証グループに提出し、品質保証グループが一つひとつ整理・検証し、知のデータベースを作っている。」
・「実行して得たものすべてを次に活かし切ることこそが、最大のリスクヘッジであり、成功への近道といえる。」
・「もちろん失敗はしたくないが、失敗を恐れて何もやらなければ、何も起こらない。
私は前に進み続けたい。
成功か失敗かではなく、究極の目的を達成するために、行動したことから何を学び、成功に向けていかに修正できるかだ。まだ成功にたどり着いたと思ってはいないが、成功への道筋を歩み続けているからこそ今がある。」
*
『月をめざすチームの働き方』……宇宙産業という未知の分野での事業を行っている企業の働き方や考え方、さまざまな工夫を教えてくれる本で、とても参考になりました。
ispaceは失敗を恐れないだけでなく、情報公開も心がけているそうです。
「失敗を受け入れ次に活かすサイクルを回すには、関係者の理解が重要である。そのために、できる限り透明性のある情報公開を心掛けている。」
……本当にその通りですね! 宇宙産業だけでなく、新しい分野に進出しようと考えている会社にも参考になる話がたくさんありました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
* * *
なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
Amazon商品リンク
興味のある方は、ここをクリックしてAmazonで実際の商品をご覧ください。(クリックすると商品ページが開くので、Amazonの商品を検索・購入できます。)
『月をめざすチームの働き方』