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第1部 本
脳&心理&人工知能
認知科学をはじめる(本田秀仁)
『認知科学をはじめる: 「人間らしさ」の読み解き方 (y-knot)』2025/11/27
本田 秀仁 (著), 林 勇吾 (著), 宮﨑 美智子 (著)

(感想)
認知科学について、その歴史や主要理論、技術などを、人工知能(AI)と人間の比較も交えて総合的に紹介してくれる入門書です。
第1章によると認知科学とは……
「認知科学は、人間の心の働きを科学的に探究する学問である。注意、記憶、言語、思考、意思決定、問題解決など幅広いテーマを対象とし、人がどのように情報を整理し、行動や判断を行うのかを解明しようとする。」
……というもので、1950年代に心理学界でおきた「認知革命」に影響されているようです。
・「認知革命とは、1950年代に、アメリカの心理学を中心に、行動主義から心的過程(認知)への関心が復権された学問的転換を指す。(中略)従来の行動主義が観察可能な行動を研究の中心に据えていたのに対し、認知革命では行動の背後にある心の働きを理解することが目標となった。(中略)
認知革命が起こった原因の1つに、デジタルコンピュータの登場があった。1940年代後半に開発された初期のデジタルコンピュータは、54年にIBMによって一般向けモデルが発表され、心理学者たちが心の働きを情報処理の観点から理解する手段を考えるようになる契機となった。」
・「認知革命は心の研究における歴史的な転換点であり、その影響は現在も続いている。行動主義が観察可能な行動に焦点を当てていたのに対し、認知科学は「心の働き」を中心に据え、情報処理アプローチを通じて心の内部プロセスを解明しようと試みた。このアプローチは、以降で扱う記憶、注意、問題解決、推論といった高次の認知プロセスを研究対象に含め、心理学をより広範で応用可能な学問分野へと進化させた。さらに、コンピュータ技術の発展に伴い、認知科学という学際的分野も成長し、人工知能や神経科学など多くの分野に大きな影響を与えている。」
……認知科学はIT技術を活用して「心の働き」を解明しようとしているんですね。
そして第2章によると、その方法としては……
「(前略)認知科学における方法論は、行動データの収集と分析、脳活動の計測、モデル構築といった実証的手法に加え、哲学的・言語学的・記述的アプローチを含む多様な方法論をもつ。これらは互いに補完し合いながら、複雑で多面的な心の働きを理解するための総体的な視座を提供している。」
……哲学や言語学なども取り入れているんですね。
第4章では、「知覚」について……
「知覚は感覚情報の意識的な把握である。簡単にいえば、私たちは世界をありのままにとらえているわけではない。感覚器を通じて得た情報のみに頼るのではなく、自らの過去の経験や学習、行為、情動、文脈なども含む幅広い要因との相互作用を通じて、世界を把握する。」
……知覚には、脳の働きが大きく関わっているようです。ここでは認知科学における計算理論の重要性を強調した「マーの視覚計算理論(Marr、1982)」がとても興味深かったので、その一部を紹介します。
「(前略)それまでの視覚研究は、線や図形といった二次元的形態をとらえることを中心に考えていた。それに対して、マーは視覚の目的を、網膜像の二次元情報から実世界の三次元の構造を推測することであると考えた。(中略)二次元情報から三次元情報の推測では、そもそも必要な情報が不足している不良設定問題である。この不良設定問題を計算可能な良設定問題にするために、私たちの視覚情報処理には何らかの拘束条件があり、それが面の知覚にあるとマーは主張した。マーによると、視覚情報処理過程は初期知覚・中間視覚・高次視覚の3段階に分けられる。段階的に情報を統合し、観察者の座標系を変えていくことで、最終的に視点不要な三次元の物体として表現されるという。具体的には(中略)陰影や両眼視差、運動視差、テクスチャ等の複数の手がかりから、外界の構造推定の情報を得て、自分からの視点以外の座標系、すなわち裏から見た面の予測を可能にしている。」
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この後の章でも、人工知能と人間の知能の比較なども通して、人間の「心の働き」に迫る研究がとても興味津々でした。
人間は、情報が不足している場面でも「生き残る」ための迅速な判断を迫られてきたので、直観的な判断を行うことができるという特徴があります。
「(前略)経験豊富な人々は過去の記憶を活用し、現在の状況と似たパターンを見つけ出して有益な情報を選び取ることで、正確な判断を下しているとされる。」
……人間は、認知バイアスの影響で、間違った意思決定を行ってしまうことも多いのですが、経験を積むことで、より良い意思決定へ導いていける確率を高められるのです。
最終章では、そんな人間の直観的な判断と、人工知能(AI)の計算能力を組み合わせることで、より適応的な意思決定が可能になるとして、次のように書いてありました。
・「(前略)今後のAI設計においては、単に性能向上を目指すのではなく、人間とAIの相補的な関係を考慮したシステムが求められる。具体的には、AIが人間の意図や推論過程を理解できるようなモデルの構築、人間がAIの判断過程を理解しやすくするための透明性の向上、不確実性の高い状況に適応できる柔軟なAIの開発、といった点が重要な課題となる。」
・「(前略)AIが「望ましくない」学習を防ぐためには、単なるデータの最適化にとどまらず、人間の倫理観に沿ったフィードバックを組み込むことが求められる。」
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『認知科学をはじめる: 「人間らしさ」の読み解き方』……人間の「心の働き」を、従来の心理学の方法に加え、IT技術や哲学、言語学の知見も取り込んで解明しようとしている「認知科学」について総合的に解説してくれる入門書で、とても参考になりました。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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『認知科学をはじめる』