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第1部 本

脳&心理&人工知能

「心の病」がみえる脳科学講義(加藤忠史)

『「心の病」がみえる脳科学講義~精神疾患・発達障害を持つ人の頭の中で何が起きているのか』2025/11/25
加藤 忠史 (著)


(感想)
 心の病、その正体は「脳」にあった……発達障害、うつ病、双極症、統合失調症、PTSD……脳はどうやって病気をつくりだすのか? 最前線の脳科学を、ライブ感あふれる語りで解き明かす脳科学者の人気講義(朝日カルチャーセンターで行われた連続講義「精神疾患の脳科学」)を書籍化した本で、主な内容は次の通りです。
第1講 精神疾患の脳科学(総論)
第2講 脳科学の基本と発達障害
第3講 精神科診断学と統合失調症
第4講 うつ病にみる精神医学の課題
第5講 双極症からひもとく脳科学の研究戦略
第6講 不安スペクトラムにみる 心理学と脳医科学のアプローチの違い
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 本書は脳の構造や特徴などの基礎知識とともに、最新研究も紹介してくれるので、とても勉強になりました。例えば「第1講 精神疾患の脳科学(総論)」では……
「日本では長らく精神疾患のゲノム研究が遅れていましたが、2010年代以降は状況が改善され、ようやく世界水準の成果が出始めています。
 そんな中で注目されているのが、「ポリジェニック・リスク・スコア」という新たな考え方です。これは、個々の遺伝子の影響が小さくても、何千もの遺伝的要素を統合して「病気のかかりやすさ」を数値化するもので、精神疾患の理解をより定量的に進めるツールとして注目されています。」
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 また国際コンソーシアムのENIGMAや日本のCOCORO(認知ゲノム共同研究機構)では、精神科関連研究機関が協力してデータを持ち寄り、数千人規模の脳画像データを用いた解析を行っているそうです。
 さらに「研究を変えた2つの技術革新」として……
1)生きた脳の奥深くをのぞく――2光子顕微鏡
2)神経細胞を光で操る――オプトジェネティクス
 ……が紹介されていました。このうちオプトジェネティクスは、ウイルスベクターという「遺伝子の運び屋」を使って、対象とする神経回路だけに「チャネルロドプシン」という光感受性タンパク質を発現させるもので、このチャネルロドプシンを発現させた神経細胞に光ファイバーを通して光を当てると、神経細胞を意図的に興奮させたり抑制したりできるそうです! これによって、特定の神経細胞を操作したときに、動物の行動がどのように変化するのかを直接調べられるのだとか。そんなことが出来るようになっているんですね……。
 続く「第2講 脳科学の基本と発達障害」では、脳の構造などの詳しい解説に続いて、うつ病に関係しているかもしれない脳の部位について……
「視床の上のほうおよび内側に「視床上部」という領域もあります。間脳の一部で、松果体・手綱核・視床室傍核の3つから構成され、いずれも日内リズムやストレス反応に関わっています。これらの場所が、特に気分障害などの関係がありそうだということがわかりつつあります。
 その中でも特に注目されているのが手綱核です。手綱核が働くとドパミン神経が抑制され、ドパミンが出にくくなります。うつ病ではこの手綱核が過剰に興奮し、快楽が感じられなくなる状態に結びついているのではないかと考えられていて、今や、うつ病の原因部位として非常に重要視される場所です。」
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 また次の「ヒト細胞アトラス(Human Cell Atlas)」プロジェクトにも、期待がもてそうです。
「(前略)3人の脳から約100か所の組織を採取し、「シングルセルRNAシーケンス」という技術で細胞(死後脳の場合は細胞核)ごとのRNA発現を一つひとつ解析した結果、脳に存在する細胞の種類が初めて包括的に明らかになりました。」
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 さらに脳の病気に薬が効く理由についても……
「(前略)ここで重要なのは、電気信号だったものがシナプスでいったん化学信号に変換され、再び電気信号として次の細胞に伝わるという点です。この変換があるからこそ、外部から薬で脳の働きに影響を与えられるのです。
 実際、向精神薬の多くはシナプスにある受容体や、「トランスポーター」という特定の物質を輸送するタンパク質に作用します。
 シナプスで電気信号が化学信号に変わる、この仕組みが精神疾患の治療にとって大きな手がかりとなっているのです。」
 ……なるほど、そういう仕組みだったんですか。
「第3講 精神科診断学と統合失調症」によると、精神医学の国際的に統一された診断基準としては次の2つがあるそうです。
1)DSM(精神障害の診断・統計マニュアル):アメリカ精神医学会発行
2)ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類):国際保健機関発行
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 患者さんの話を「了解ができないところまで、突き詰めて聞いていく」というのが、精神医学的診察の基本的な考え方で、その「了解できない心的現象」こそが、脳の病変、脳の病的過程を示しているそうです。
 この後は、統合失調症や、うつ病、双極症、不安スペクトラムなどをテーマに、さらに講義が進んでいきます。これらには、「薬物療法」、「心理教育(病気と薬の理解を深め再発予防を支える)」、「認知行動療法(CBT)」、「社会技能訓練(SST)」などの治療が行われているようでした。
『「心の病」がみえる脳科学講義~精神疾患・発達障害を持つ人の頭の中で何が起きているのか』……脳科学の基礎知識から最先端の話題まで幅広く解説してくれる本で、とても参考になりました。iPS細胞、脳オルガノイド、AIなど革新的な技術に関する解説もあります。「精神疾患を持つ人の頭の中で何が起きているのか」については、最新科学でかなり詳細に分かりつつあるようで、今後の治療がより良くなっていくことに期待したいと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『「心の病」がみえる脳科学講義』